プリウス 【1997,1998,1999,2000,2001,2002,2003】

21世紀に間に合った!世界初の量産ハイブリッド

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世界に先駆けた未来のエコカー

 1997年12月、トヨタは世界初となる量産型のHV(Hybrid System=ハイブリッドシステム)を搭載したプリウスを発売した。車名であるプリウス(Prius)とは、物事の先に立つことを意味するラテン語だと言う。先進性を示すネーミングである。

 トヨタは、未来に確実に訪れる石油を中心とする化石燃料の枯渇と、地球温暖化に対処可能な、究極的なクリーンかつ劇的な省エネルギー車の開発を急いでいた。1990年代末の時代、トヨタは、アメリカのGMを抜いて、自動車生産世界トップとなることが確実視されていた。年間で数百万台におよぶ自動車生産を考える時に、クリーン化と省エネルギーは避けて通れない命題のひとつとなる。

 トヨタは燃料電池やガスタービン、水素燃料などあらゆる可能性を探りながら、最も大きな可能性を持ったシステムとしてハイブリッドシステムに辿りつく。一挙に電気自動車方式へと飛ばなかったのは、トヨタの確実性を是とする企業体質でもあったはず。初代のハイブリッド車であるプリウスが、デビュー当初から他の追随を許さない完成度の高さを持っていたことは、そうしたトヨタ的なクルマ造りの根幹でもあった。

内燃機関とモーターの有機的統合

 ハイブリッドシステムの開発は困難を極めた。それは、今までのように内燃機関をクリーン化と省エネルギーへ向かって、リファイン&開発するのではなく、全く新しい電気システムを取り込まなければならなかったからである。多くの自動車技術者にとって、電気システムは全く未知の領域であり、ほとんどは白紙の状態から開発を始めなければならなかったと言う。

 さらに、開発を困難にしたのは、単に内燃機関と電気モーターを中心とするシステムを併設するだけではなく、有機的なカップリングを完成させ、全体をひとつのシステムにしなければならなかったことにあった。鉄路を走る電車のように、動力エネルギーは架線から取り入れ、電車自体には電気モーターと制御機器があれば事足りるわけではなく、電気エネルギーをクルマ本体の中で生み出し、その電気エネルギーで電気モーターを効率良く回して走らなければならないのだ。高効率な自己完結型のクルマとしての完成度が求められたのである。

 プリウスは、トヨタの新型車としては珍しく、他のモデルとは一切の共通点を持たない、全くの新開発モデルとして開発が進められたが、それも当然であったことがよく分かる。従来の自動車技術でプリウスに使えるものはほとんどなかったのだ。

1995年にプロトタイプをお披露目

 先進性を意味するプリウスの名を持つモデルが初めて我々の前に姿を現したのは、1995年11月に開催された第31回東京モーターショーに於いて展示された「次世代乗用車のあるべき姿を可能な限り具体化」したと謳ったコンセプトカーである。エンジンと電気モーターを併せ持ち、走行状況に応じてコンピューターが総合的に制御するもので、基本的には後の市販型プリウスと同じ方向性のものであった。

 異なるのは、電気モーターのみの走行はできず、電気モーターはエンジンの補助的な役割となっていたことである。ハイブリッドシステムそのものは目新しいものではなく、1930年代からあるものだが、それを実用的な小型車に導入し、飛躍的な燃費の向上を実現した点が新しい発想であった。モーターショーからおよそ2年後の1997年10月に市販型プリウスが発表され、同年12月から市販が開始された。

世界の注目を集めた先進メカニズム

 初代のプリウスは、5人乗り4ドアセダンで、全体のスタイルについてはショーモデルに近いものである。市販車のスタイリングデザインはアメリカのカリフォルニア州にあるトヨタのデザインセンター、CALTYによるもの。従来の内燃機関のみの乗用車からは隔絶した未来的なスタイリングが特徴となっていた。空気抵抗の減少による経済走行を実現するための細部に渡るデザインは、きわめて新鮮な感覚にあふれていた。

 全長4275㎜、全幅1695㎜、全高1460㎜、ホイールベース2550㎜のサイズは、カローラにほぼ等しいものだが、ホイールベースが長いこともあり、室内スペースはマークⅡクラスに迫るものとなった。空気抵抗係数Cd=0.30と4ドアセダンとしては優秀な値を持っていた。燃料消費率は初期モデルでは10~15モードで28.0㎞/Lであった。これでも通常の1.5Lクラスの4ドアセダンが18.5㎞/L(トヨタ スプリンター)程度だったのだから、十分にハイブリッドシステムの効果はあった。

 搭載されるエンジンはプリウスのために新しく開発されたアトキンソンサイクル方式の排気量1496㏄の直列4気筒DOHC(1NZ-FXE型、出力58ps/4000rpm)で、これに交流同期電動機(出力30.0Kw/940~2000rpm)を組み合わせており、総合的なトルクはエンジンが10.4㎏-m/4000rpm、同期電動機は31.1㎏-m/0~940rpmを発揮することで、最大40.5㎏-mにも達した。バッテリーはニッケル水素型でリアシートの背後、トランクとの境部分に置かれていた。トランスミッションは電気制御の無段変速機で、パワー伝達効率の良さを狙ったものとなっている。サスペンションは前がストラット/コイルスプリング、後がトーションビーム/コイルスプリングと常識的なものだ。ブレーキは前がディスク、後がドラムでサーボ機構を持つ。

たちまちトヨタを代表する車種に

 インテリアも十分に未来的で、大型のセンターメーターを備え、中央部には5.8インチのマルチインフォメーションディスプレイがセットされ、オーディオや快適装備の表示に加えて、エンジンから電気モーター、バッテリーの状態やエネルギーの流れを表示することができた。車両価格はスタンダード仕様が215万円、ナビゲーションシステムを組み込んだナビエディションが227万円となっていた。

 クルマのサイズなどから考えると割高感は否めなかったが、世界初のハイブリッドシステム搭載車ということで、折からの地球温暖化防止指向の盛り上がりなどもあって、注文に生産が追い付かない状況が続いた。特にアメリカでは、エコ指向のステイタスとしての存在がクローズアップされ、ハリウッドスターや政府高官たちが好んで購入するなど、社会の注目を集めることになった。2000年5月までに3万7000台の販売を記録している。

マイチェンなどで燃費性能をさらに追求

 プリウスはデビューから2年半が経過した2000年5月にマイナーチェンジを受けた。エンジンを72psにパワーアップし、同時にモーターの出力を33kWにアップ。システムの高効率化なども行い、10・15モード走行時燃費を28.0km/Lから29.0km/Lに引き上げた。その他の変更点は、バンパーなどのデザインを変更。また、それまでモノグレードだったが、このときから「S」と「G」の2グレード構成になった。

 2001年8月には一部改良を実施。ヨーロッパ向けにチューンされたサスペンションやリアスタビライザー、リアディスクブレーキ、リアスポイラー&スパッツなどがセットされたユーロパッケージをオプションで設定した。翌年の2002年8月には再び一部改良を実施し、制動時のエネルギー回収量をさらに増加させ、10・15モード燃費31.0km/Lを達成した。