ハイラックス 【1978,1979,1980,1981,1982,1983】

アメリカンフィーリング満載の快適ピックアップ

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商用車が牽引したトヨタのブランドイメージ

 日本車は1960年代後半から、世界最大の自動車マーケットだったアメリカで高い信頼を得ることで力強く躍進する。その躍進を支えたのは乗用車だけではない。商用車も同様だった。いやトヨタを例にとれば商用車がブランドイメージの基礎を構築した。トヨタは1957年にクラウンとランドクルーザーの2モデルで、アメリカ市場への本格挑戦を開始する。しかし当時のクラウンは高速性能が決定的に欠如していた。ユーザーからクレームが続出。結局アメリカに適した商品が開発できるまで販売休止に追い込まれる。一方、ランドクルーザーは持ち前のタフさで輸出当初から高い人気を獲得。アメリカ市場に深く浸透した。トヨタが走りの性能を磨いたアローラインのコロナをひっさげて1964年にアメリカの乗用車市場に復帰するまで、アメリカでのトヨタといえば、ランドクルーザー。ランドクルーザーの抜群の信頼性が、アメリカにおけるトヨタのブランドイメージの基礎となったのだ。

アメリカで愛され定着した小型ピックアップ

 今回の主役であるハイラックスは、ランドクルーザーのタフさを継承した小型ピックアップとして日本以上にアメリカで愛された傑作である。1968年の初代モデルからアメリカに“トヨタ・トラック”の名称で輸出され、使い勝手のよさと優れた信頼性で好評を得る。ちなみにモータリーゼーションが成熟したアメリカでは、ハイラックスのようなピックアップは単なる商用車ではない。ちょうど日本における軽自動車のような、気軽で便利なパーソナルカーとして認知されている。1人1台が基本で、しかも広大な大地を持つアメリカ。荷台に気軽に荷物が載せられ、どこでも走れ、しかも細かいことに気を遣う必要がないピックアップは伝統的に愛されている。複数所有が当たり前だから、2〜3名しか乗れなくても別に不便はない。ピックアップは、クルマというより開拓時代から親しみのある“馬”と同様の位置づけなのだ。

 GM/フォード/クライスラーのビッグ3からは多くのピックアップがリリースされ、どれもが高い人気を収めていた。しかしビッグ3のラインアップには欠点があった。コンパクトサイズのピックアップがなかったのである。いくら広大なアメリカでも、コンパクトサイズを求めるニーズは小さくなかった。そんなニーズにハイラックス(そして日産のダットサン・トラック)はぴったりの存在だった。ハイラックスは1972年に2代目、1978年には3代目へと進化するが、代を重ねるほどアメリカ市場に浸透し販売を伸ばした。そして日本市場にもアメリカで培った経験を生かしたモデルをフィードバックするようになる。

アメリカンな快適キャビンを採用!

 1980年9月に日本仕様のラインアップに加わったロングボディのスーパーデラックスは、まさにその好例だった。ロングホイールベース化によって広々とした荷台を実現しただけでなく、アメリカ仕様と共通のキャビンの採用で、居住性を磨き上げていたのだ。ロングボディ・スーパーデラックスのボディサイズは全長4690mm×全幅1610mm×全高1560mmと、既存のデラックスやスタンダードと同じだった。しかしデラックスやスタンダードよりも90mm拡大したロングキャビンを採用する。このロングキャビンは大柄なユーザーの多いアメリカ仕様と共通のもので、メーカーでは“カリフォルニアサイズの余裕”と表現していた。ピックアップの場合、シート後方にスペースの余裕がないためシートの前後調節はできても、シートバックの角度調節が出来ないのが一般的。しかしロングボディ・スーパーデラックスは、3段階の角度調節を可能にしていた。フルリクライニングとまではいかないが、ゆったりとしたドライビングポジションを採ることが可能だったのだ。ちなみに荷室サイズは長さ2185mm×幅1430mm。デラックスやスタンダードの長さ2250mm×幅1430mmと比較すると65mmほど短くなっていたが、それでもキャビンの90mm拡大を考えると十分に納得できるサイズだった。

 ビッグキャビンだけでなくスーパーデラックスは、木目調のインテリアトリム、クオーツ時計、ウレタン製3本スポークステアリング、ファブリックシートなどを標準で備え、エアコンや高級オーディオシステムをオプション設定するなど、上質な感覚でまとめられていた。エンジンは排気量1587ccの直4ガソリン(80ps/5200rpm)と、2168ccの直4ディーゼル(72ps/4200rpm)の2タイプ。当時のアメリカ輸出仕様は2.2リッターのガソリンユニットを搭載していたから、日本仕様のパフォーマンスはやや見劣りしたが、それでも全身から溢れるアメリカンテーストは格別。ハイラックス・ロングボディー・スーパーデラックスは、当時、リアルなアメリカが味わえる日本車の最右翼だった。

もうひとつの個性!ワイルドな4WD

 3代目ハイラックスのキャッチコピーは“日本生まれのアメリカ育ち”。その印象をロングボディ・スーパーデラックスとともにイメージづけたのが、1979年12月にラインアップに加わった4WD仕様だった。4WDと言うとランドクルーザーなどのジープ型が一般的だったなかで、ピックアップをベースとした初めての本格的な4WDだった。ぐっと張り出した前後オーバーフェンダー、200mm高くなった車高、そして大径タイヤが織りなすワイルドなルックスは魅力に溢れ、走りも排気量1968ccの直4ガソリン(98ps/5300rpm)の採用で逞しかった。

 ハイラックス4WDはアメリカの権威あるオフロード専門誌で3つもの「4WD・オブ・ザ・イヤー」を獲得する。とくにスポーティなSRパッケージ仕様は、アメリカ西海岸の若者のアクティブなライフスタイルを象徴するクルマとして高い人気を集めた。後にRVとして一世を風靡するハイラックス・サーフは、このハイラックス4WDのワゴン版である。