レパード 【1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992】

スペシャルティな個性漂う日産版上級クーペ

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ソアラがライバルの2ドアクーペ

 日産レパードは、1986年2月にフルモデルチェンジを受けて第2世代となった。レパード(Leopard)の車名は、「豹」を意味する英語だ。
 第2世代目となったレパードは、高級パーソナルクーペという、ライバルであるトヨタ ソアラと同じセグメントに属することを明確にするために、4ドアハードトップ仕様をカタログから落とし、2ドアクーペのみのシリーズ展開となった。これには、同じセグメントに属するモデルとなるローレルやスカイラインとの競合を避けたことも大きく影響している。さらに、シャシーコンポーネンツはスカイライン系と共用することで、開発や生産コストの大幅な削減を図った。

 開発コンセプトは「アダルト・インテリジェンス」。大人が乗るにふさわしい雰囲気を持ったパーソナルクーペとなっていた。(
 スタイリングは角が取れてソフトでバランスに優れたスタイリングとなっていた。初代BMW6シリーズにも似た、伸びやかなクーペスタイルは美しい。ホイールベースは2615㎜となっており、これは7thスカイライン系に等しい。全長は4680㎜、全幅1690㎜、全高1370㎜で、初代のトヨタ ソアラ(MZ11型)よりも数値的にはわずかかに大きくなっているが、実際的にはほぼ同じサイズと言っていい。日本車としては大柄なクーペだが、全幅が小型車規格内に収まっていることが時代を反映している。

デビュー時の最強ユニットは3リッター NA

 ラインアップは下位からXJ、XJ-Ⅱ、XS、XS-Ⅱ、アルティマの5グレードで、搭載されるエンジンの仕様や装備の違いなどで差別化を図っていた。フロントに縦置きされて後輪を駆動するエンジンは、全車種V型6気筒のVG型で、トップグレードのアルティマには排気量2960㏄DOHC24バルブ(VG30DE型、出力185ps/6000rpm)を組み合わせる。以下、XSおよびXS-Ⅱには排気量1998㏄のV型6気筒SOHCにターボチャージャー装備(VG20ET型、出力155ps/5600rpm)が、XJおよびXJ-Ⅱには排気量1998㏄のV型6気筒SOHC自然吸気仕様(VG20E型、出力115ps/6000rpm)が搭載された。

 エンジンには、日産の独自開発による電子制御によるNICS(ニッサン インダクション コントロール システム)をはじめ、NDIS(ニッサン ダイレクト イグニッション システム)、NVCS(ニッサン バルブタイミング コントロール システム)、さらにシリンダー1個ごとの燃焼状況をノックセンサーで検出し、常に最適なタイミングで点火する気筒別燃焼制御システムなども組み込んである。まさしく電子制御の塊のようなエンジンだった。トランスミッションはフロアシフトの4速オートマチックとXJ/XJ-Ⅱにのみ組み合わせられる5速マニュアルの2種があった。

アルティマにはABSを装備

 サスペンションは前がマクファーソンストラット、後ろがセミトレーリングアームとなっており、アルティマ仕様のモデルには、フロントサスペンションのショックアブソーバーに超音波を使ったセンシングシステムで路面の状況を捉え、瞬間的にショックアブソーバーの減衰力を変えることのできるスーパーソニックサスペンション機構が組み込まれていた。また、XSおよびXS-Ⅱには、ドライバーが手動でショックアブソーバーの減衰力を3段階に切り替えることができる3ウェイアジャスタブルショックアブソーバーが装備された。

 ブレーキはアルティマが4輪ベンチレーテッドディスクとなり、他のモデルは前のみがベンチレーテッドディスク、後はソリッドディスクとなって、いずれもサーボ機構を備える。アルティマには4WAS(4Wheel Anti Skid)と名付けられた今日で言うABSが標準装備となっていた。

全グレードにデジタルメーター採用

 第2世代のレパードが、ほとんど同一のセグメントにあり、直接的なライバルとなるトヨタ ソアラとの違いを明確にすべく、設計とスタイリングデザインに特別の意を用いたのは間違いない。たとえば、イメージカラーは「ハイソカー」と呼ばれる上級スペシャルティの定番である白色を避けて、日本古来の藍色にも通じる深い紺色とし、フロント部分のスタイルを流行の斜めに断ち落としたようなスラント型とせず、横長のラジエターグリルを中心に矩形のヘッドライトを持つ直立型にしている。どちらかと言えば、空力的には不利なスタイリングであるが、これでも空気抵抗係数Cd=0.32という優れた値を実現していた。ボディ表面のフラッシュサーフェス(平滑)化やフロントウィンドウやサイドウィンドウに三次曲面ガラスを採用するなど、徹底した空気抵抗の減少を図った効果である。

 インテリアのデザインもきわめて個性的なもので、最上級のアルティマ系を含めて全車種にデジタル表示のメーター類が使われ、ステアリングのボスにはオーディオやクルーズコントロールのスイッチが備わっている。価格は最上級のアルティマの383万7000円を筆頭に、XJの232万1000円までとなっていた。トップグレードで比較すれば、ソアラよりは数段安価ではあったが、販売の出遅れなどが影響し、販売面ではついにソアラを追い抜くことはできなかった。後のマイナーチェンジでは、3Lモデルをターボ化するなどパフォーマンス面の強化を図った。走りの面では日産らしく完成度の高いモデルだった。

ドラマ『あぶない刑事』で、人気を獲得

 舘ひろしと柴田恭平が主役となって様々な悪と立ち向かう、人気TVドラマとなった『あぶない刑事(デカ)』。このシリーズは、続編となる『もっとあぶない刑事』や、映画版などが生み出され、「あぶデカ」という愛称で呼ばれる大ヒット作になった。その劇中には、数多くの名車が登場しているが、なかでも主役級の活躍を果たしたのが、このF31型レパードだった。ドラマのスタートは1986年10月で、F31型レパードのデビューから8カ月後。ゴールドのボデカラーの初期型レパードが活躍した。第2世代のレパードは、残念ながら販売成績面では、さほど好調といえなかったが、「あぶデカ」の影響で、熱狂的なファンを生み出した。