オースター5ドアHB 【1980,1981,1982】

スポーティーな個性を携えたRV的5ドアモデル

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チェリー店向け販売車種の5ドア版

 1980年4月、日産オースターシリーズに5ドアハッチバック1800GT-Eが加えられた。オースター・シリーズは、グレードアップしたブルーバードとベーシックモデルであるサニーの中間車種として設定されたバイオレットシリーズの第2世代へのモデルチェンジと時を同じくして誕生した新しいモデルであった。車名となったオースター(Auster)とは、南の風を意味する英語だ。

 1970年代末から1980年代初めにかけての時代、日本の自動車メーカーは販売台数の増加を狙って、全国規模での販売チャンネルの拡大に躍起となっていた。単一のモデルを数多く販売する手法は、一般ユーザーからはあまり受け入れられなかったこともあり、販売チャンネルを整備し、内容的には同一の車種の車名や内外装のアクセサリー、エンブレム、オーナメントなどをわずかに変えたモデルを販売チャンネル専用モデルとして売り出したのである。

 こうした販売手法は、バッジエンジニアリングといわれるもので、英国やアメリカでは古くから行われていたものだ。オースターは、スタンザとともにバイオレットのバッジエンジニアリングとして生み出されたモデルであり、日産のチェリー店系列の専売車種となっていた。ちなみに、スタンザはサニー店系列、バイオレットは日産店系列の専売モデルであった。

トップグレードは115psを発揮

 オースターは、第2世代のバイオレットとメカニズム部分を共用していた。異なるのは、ラジエターグリル周りとテールライト周りのデザインおよび内装程度。生産効率を上げることでコストダウンを図っていた。車の性格としては、スポーティー指向の若者向けのモデルと位置付けられた。ボディバリエーションは、デビュー当初は4ドアセダンとマルチクーペと呼ばれる、2ドアハッチバックの2車種のみとなっていた。価格的にもバイオレットやスタンザとほぼ同じレベルにあった。

 搭載されたエンジンは、デビュー当初では排気量1397㏄の直列4気筒OHVと、1595㏄の直列4気筒SOHC、同じく1595㏄の直列4気筒SOHCの電子制御燃料噴射装置付きの計3種類だったが、1979年6月のマイナーチェンジ以降は1.4リッター版が中止され、新しく排気量1770㏄の直列4気筒SOHCに電子制御燃料噴射装置付き(Z18E型、出力115ps/6000rpm)およびキャブレター仕様(Z18型、105ps/6000rpm)を加えた。駆動方式はフロント縦置きエンジンによる後2輪駆動で4輪駆動仕様は設定されていない。

 トランスミッションは4速/5速の2種のマニュアルと3速オートマチック。サスペンションは前がストラット/コイルスプリング、後ろは4リンクリジッド/コイルスプリングの組み合わせ。ブレーキは前がディスク、後はドラムとなる。この辺りはバイオレットやスタンザと大きく変わるところはなかった。

5ドアはステーションワゴン風

 1980年4月からは、ステーションワゴンに匹敵するマルチなユーチリティ要素を盛りこんだ5ドアハッチバックを追加設定した。これは、トヨタ カローラ5ドアやマツダ ファミリア5ドアハッチバック、ホンダ クイントなど、1.5リッタークラスのセダンをベースとしたハッチバック車を直接のライバルとするモデルで、排気量の大きな1.8リッターエンジンを組み合わせることで、オースターの車格はそれらより上に置かれていた。

5ドアの最上級グレードの1800GT-Eには、サンルーフを標準装備していた。このサンルーフはスチール製の脱着式。必要に応じて簡単に取り外しが可能で、チルトアップもできる2ウェイタイプとなっていた。しかもオプションで、ガラスサンルーフを用意。こちらも脱着とチルトの2ウェイタイプで、ルーフの内張りと同素材のブラインドも装備された。スチール製とガラス製のサンルーフは両方を同時に注文することも可能で、その日の気分で使い分けることもできた。開放感に対して、こだわりを持ったクルマだった。