スプリンターLB 【1976,1977,1978,1979】

多彩なユーザーニーズに対応した多用途スペシャルティ

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トヨタ独自のTTC-L機構でクリーンな排出ガスを実現

 1970年代半ばのトヨタは、排出ガス規制への対応と、モータリーゼーションの成熟に伴うユーザーニーズの多様化に追われていた。1976年1月にスプリンターに加わったリフトバックは、その時代環境を象徴するモデルである。

 スプリンター・リフトバックのアピールポイントは2点に集約できた。ひとつは、トヨタ独自の希薄燃焼方式「TTC-L」によって、当時世界で最も厳しかった昭和51年排出ガス規制をクリアーしたことである。TTC-Lは、均質な希薄混合気(空燃比16〜18)を安定して燃焼させることにより、エンジン自体で排出ガスの浄化を図ったシステムだった。具体的には燃焼室内に「乱流生成ポット(TGP)」を設け、TGP入口付近に配置した着火性、耐久性を向上させた2極接地式点火プラグで混合気流に着火させることで、希薄混合気を急速燃焼させる構造となっていた。TTC-Lは、TGP内の燃焼によって生じる強い火災噴流により燃焼速度が速いため、NOxを制御しながらも燃焼効率が高く、燃費、性能に優れていた。同時に触媒や、排気ガス再循環システムなどの後処理装置が不要なため、信頼性が高く、コスト面でも従来ユニット搭載車と同等の価格を実現する。

 スプリンター・リフトバック用のTTC-L方式パワーユニットは、排気量1588ccの12T型・直列4気筒OHVで85ps/5400rpm、12.5kg・m/3400rpmの出力/トルクをマークした。排気ガス未対策ユニットと比較すると、明確にパワーダウンしていたが、それ以上に昭和51年排出ガス規制にクリアーする素晴らしい環境性能を得たことが魅力だった。組み合わせるトランスミッションは、5 速と4速のマニュアルミッション。燃費はそれぞれ18km/L、17.5km/L(ともに定地走行値)である。ちなみに、このTTC-Lユニットは、スプリンターだけでなく兄弟車のカローラにも搭載された。

スポーツワゴンの多用途性を誇った新ボディ

 もうひとつの注目ポイント、それは新たなボディタイプ、すなわちリフトバックである。リフトバックは、クーペのボディ後半部分のリファインで誕生したユニークなボディタイプだった。大型リアゲートを組み合わせることでスタイリッシュなスタイリングと、実用性を両立させたからである。

 トヨタは、兄貴分のセリカにもリフトバックを設定していたが、セリカ・リフトバックはファストバックスタイルとリアゲートの組み合わせ。実用性はそこそこのレベルにとどまっていた。それに対しスプリンター・リフトバックは、ルーフをリアエンドまでストレートに仕上げたことで、ルーミーで実用的なキャビン&ラゲッジスペースを実現する。ルーフのストレート化でヘッドルームは増え、クーペでは+2スペースに過ぎなかったリアシートは、大人でも無理なく座れるようになった。しかも後席シートバックを畳むとワゴンに匹敵するフリースペースが生まれたのである。嵩張る荷物も難なく積み込めるのはリフトバックの大きな魅力だった。スプリンター・リフトバックは、クーペのスポーティな味わいはそのままに、ユーティリティに磨きをかけた時代を先取りしたマルチモデルといえた。

リフトバックを使いこなすための工夫満載!

 リアのフリースペースを生かすため、スプリンター・リフトバックには数々の工夫を凝らしていた。その代表例が分割可倒式リアシートと、パーセルストラップだった。上級仕様に標準装備された分割可倒式リアシートは、2分割でシートバックを前倒しできるアイデアである。一体可倒タイプと違い3名+大荷物に対応できる便利な機構だった。現在では一般的なアイテムだが、1976年当時は先進装備だった。

 一方パーセルストラップは、ラゲッジに積んだ荷物を固定するためのストラップ。スキーや、壊れやすい物を運ぶときに安心感を高める配慮である。この他にも運転席からリアゲートのロック解除が出来るバックドアオープナーや、デッキルームランプ、ラゲッジルームを目隠しするパーセルカバーなど、トヨタらしいユーザーサイドに立った装備を満載していた。スプリンター・リフトバックはスタイリッシュでユーティリティに優れているだけでなく、使い勝手も一級品。そこが人気の秘密だった。

新たなライフスタイルに対応したニューカマー

 1970年代半ばは、余暇時間の増大によりユーザーの行動半径が広がり、遊びの大型化が加速した時代だった。単なるドライブではなく、スキューバダイビングやキャンプなど、クルマにぎっしりと遊び道具を積み込んでフィールドに出掛けるアクティブなユーザーが珍しくなくなっていた。スプリンター・リフトバックは、そうした新しいニーズに対応したクルマの代表だった。

 ボディサイズは全長4100×全幅1600×全高1320mm。ホイールベースは2370mmとクーペと共通で、彫りの深いヘッドランプを採用したフロントマスク回りもクーペそのまま。室内のインパネ形状もクーペとオーバーラップする。リフトバックの個性は、ボディ後半部に集約されていた。

 デビュー当初のグレード構成は、デラックス、XL、ST、GSの4グレード構成で、パワーユニットは前述のTTC-Lシステムを採用したクリーンな1.6ℓの12T型(85ps)と、ベーシックな触媒方式を用いた昭和50年排出ガス規制適合の1.2ℓの3K-U型(64ps)の2種から選べた。駆動方式は全車がオーソドックスなFRだった。