サンバー・トライ 【1982,1983,1984,1985,1986,1987,1988,1989,1990】

RV色を鮮明にしたトライ・シリーズの誕生

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4代目のバンは“トライ”の愛称をプラス

 1982年にデビューした4代目サンバーは、ゆったりとした居住性と優れたパフォーマンスを追求した“ゆとりのサンバー”だった。4代目からバンには「サンバー・トライ」という愛称が与えられ、RVワゴンとしても満足できる仕様が設定された。一方、従来どおりの「サンバー」を名乗るトラックには、ハイルーフ仕様が登場する。

 サンバー・トライは、本来の荷物を積むという基本機能を追求するとともに、新種のRVとして多用途性を追求した。カタログには「遊びのフルボックス、ライフスタイルが180度回転した。」というキャッチコピーが踊り、アクティブなカーライフのパートナーとして最適であることをアピールした。サンバー・トライは、標準ルーフとハイルーフの2種のボディタイプ、2WD(RR)と4WDという駆動方式で多彩なバリエーションを誇ったが、なかでもRV色を鮮明にしたのがサンルーフを装備したハイルーフの4WD仕様だった。

大型サンルーフは4段階に開閉可能

 全長3195×全幅1395×全高1900mmのコンパクトなボディは、白塗りのスタイルドホイールや、フロントバンパーのガードバー、そして“4WD”の大型デカールなどでスタイリッシュなイメージを訴求。サンルーフは開口幅655×長625mmの大型サイズを持ち、4段階に開閉が可能。フルオープン時は前席だけでなく後席でも爽快なオープンエア・クルージングが楽しめた。

 クラストップのガラスエリアとカーブドグラスを採用したインテリアはレッド基調のポップな仕上がり。シートは前後ともに居住性を重視したファブリック仕様で、前席は大型サイズのリクライニング機構付きハイバック形状が標準装備。後席は足元スペースがゆったりとしており、クラス初の後席専用ヒーターも装備していた。

 もちろん後席は折り畳み出来、格納時のラゲッジ床面最大長は1900mmに達した。通常時のラゲッジはホイールハウスの出っ張りがないフルフラット形状に仕上げられ、後席下部のフロアを立てると低床カーゴ・モードが作りだせた。サンバー・トライの荷室は、荷物を積むためにたけでなく、アウトドアでの“遊びのベース基地”としても最適な作りだった。車中泊も可能なミニミニキャンパーだったのである。

雪道&オフロード対応4WD機構を採用

 メカニズムは骨太だった。リアに搭載したパワーユニットは排気量544ccの水冷2気筒OHC。最高出力29ps/5500rpm、最大トルク4.4kg・m/3500rpmの実用域を重視したパワー特性を誇り、4速トランスミッションを介して駆動力を後輪、もしくは4輪に伝えた。RR→4WDの切り替えはトランスミッション横のレバーで行い、走行中でも操作可能だった。ちなみに4WDセレクト時には通常の1速よりも低いエクストラローが選べ、深い雪や急斜面の登坂時などで威力を発揮した。最低地上高は本格SUV並みの225mmとたっぷり確保しており、フロアを守るアンダーガードを標準装備するなどオフロードの対応能力も高かった。

 4WD車の足回りは前後ともにセミトレーリングアームとトーションバースプリングの組み合わせ。クラス唯一の4輪独立システムと、入念なサスペンションチューニングにより、しっかりとした走りを身につけていた。2WD車とシステム自体は共通だったが、12inの大径タイヤを装着するなど、一段と逞しい味付けが採用された。

 サンバー・トライのハイルーフ4WD仕様は、広く使い勝手に優れた室内空間と、したたかな走行性能が融合したマルチモデルだった。車両区分上は4ナンバーの商業車だったが、機能的にはRVワゴンと言えた。限られたパワーにより加速はミニマムで、高速走行も得意ではなかったが、日常シーンでの使いやすさは抜群。ちょっとしたオフロードでも信頼できる相棒だった。開発の重点目標を速さの追求から、使いやすさへシフトすると、クルマはフレンドリーな存在になる。サンバー・トライはその好例だった。