シビック 【2005,2006,2007,2008,2009,2010】

先進性と普遍性を備えた革新の8代目モデル

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8代目は3ナンバーボディを纏って登場

 ホンダがシビックという小型車を初めて登場させたのは、1972年7月だった。日本版のフォルクスワーゲン(国民車)となるべく、「市民の」とか「都市の」などの意味を持つCIVICを車名としていた。シビックはその後もホンダの独自開発による、革命的な排気ガス浄化システムであるCVCCの実用化やツーリングカーレースでの活躍などによって大きな人気を獲得、自動車メーカーとしては後発となったホンダを枝代表する国際的な存在となった。

 初代のシビックから数えて33年を経た2005年9月、シビックはフルモデルチェンジされて第8世代となった。大きな変化は、ボディサイズが3ナンバーサイズへと拡大されたことである。ディメンションはホイールベース2700㎜、全長4540㎜×全幅1750㎜×全高1440㎜となっている。これは、アメリカ仕様のシビックとボディを共通化した結果だった。またベーシックモデルのフィットの誕生によりシビックのグレードアップが必要となったことも大きい。基本的なシャシー(フロアユニット)をアメリカで生産するシビックと共通化することで生産性の向上を図り、さらに、駆動系のバリエーションにホンダのお家芸のひとつとなったハイブリッドシステム(IMA=Integrated Motor Assist)を採用したことが話題だった。エンジンは2種類でハイブリッドシステムを持たない標準仕様は1.8リッター、ハイブリッド仕様では1.3リッターエンジンが組み合わされている。

ハイブリッドは1.3リッター+モーターの組み合わせ

 搭載されるエンジンは、標準仕様となる排気量1799㏄の直列4気筒SOHC16V(R18A型、出力140ps/6300rpm)、およびハイブリッドシステム搭載モデル用の排気量1339㏄の直列4気筒SOHC(LDA型、出力95ps/6000rpm)があり、ハイブリッド仕様では出力20ps/2000rpmのMF5型電気モーターを組み合わせる。この電気モーターは、ホンダが独自に開発したブラシレスモーターで、エンジンとトランスミッションの間に置かれている。トランスミッションは標準仕様が5速オートマチック、ハイブリッド仕様がCVTとなっており、マニュアルトランスミッションは標準仕様の一部グレードに5速型が設定されている。駆動方式はフロント横置きエンジンによる前2輪駆動で、4輪駆動仕様は設定されなかった。

 サスペンションは両仕様とも共通で、前がストラット/コイルスプリング、後ろがダブルウィッシュボーン/コイルスプリングである。ブレーキは、前が両仕様ともベンチレーテッドディスクだが、後輪は標準仕様がディスクであるのに対して、ハイブリッド仕様ではリーディングトレーリング型のドラムとなる。ただし、VSA(スタビリティ コントロール システム)を装備した仕様ではディスクとなる。標準装備されるタイヤは、1.8リッターエンジンを搭載する標準仕様が205/55R16、燃費を重視するハイブリッド仕様では195/65R15となる。

 2006年4月にゆとりの2.0L DOHC16V i-VTECエンジン(K20A型)を搭載した2.0GLグレードがラインアップに加えられた。2リッターNAのレギュラーガソリン仕様ながら、最高出力155ps/6000rpm、最大トルク19.2kg-m/4500rpmを発揮。パドルシフトを装備したSマチック(5速AT)やVSA(車両挙動安定化制御システム)も装備した最上級モデルだった。

造形は先進モノフォルム

 基本的なスタイリングは、ノッチバックの4ドアセダンだが、客室部分を大きく前進させ、前後ウィンドウの傾斜を寝かせてあるため、ノッチがなくなって先進的なモノフォルムの感覚が強くなっている。インテリアでは前後席のスペースは十分で、3ナンバーサイズへの拡大は大きな効果があったと言える。特に、後席のレッグスペースは十分以上となった。

 インスツルメンツパネルのデザインは、まさに新世代。2010年にデビューするCR-Zのそれに似た立体形状で、マルチプレックスメーターと呼ばれる形式を採用した。これは、速度計とエンジン回転計を完全に別体とした仕様で、速度表示はドライバー正面の上側クラスター内部に表示するデジタル式。一方のエンジン回転計は、円形メーターによるアナログ表示式とし下側クラスター内に配置した。ドライビング中、情報確認のためにドライバーの視線の動きを大きくしないための配慮であった。

各マーケットに最適な仕様を用意

 日本国内市場では、ミニバン的な多用途性と価格の安さから、ひとクラス下のフィットシリーズが大ヒットとなり、シビックの存在感は薄れてしまったかのような印象があったのだが、ヨーロッパや北アメリカなどの海外市場では、シビックの評価は高かった。その理由は多々あるのだが、例えば、ヨーロッパ市場向けには、日本市場には存在しない3/5ドアハッチバックが売られており(3ドアはタイプR EUROが限定販売で国内でも登場)、アメリカ市場向けには2ドアクーペがあるといった具合。それぞれのバリエーションモデルには、相当数の需要があったわけで、数多いバリエーションモデルの生産性を高めるために、英国スウィンドンやアメリカのオハイオなど海外生産工場から多くのシビックが送り出された。

 また、ホンダがシェア拡大に力を入れているブラジルやアルゼンチンなどの南米市場では、様々な基準のエタノール燃料が主流となるため、ガソリンを混入したエタノール含有ガソリン(E20=20%のエタノール混入)から含水エタノール(E100=100%エタノール)に至る燃料が使用できるフレックスフューエル対応の可能なエンジンを搭載したモデルを生産している。これは、エンジンルーム内に始動時に使うガソリンのタンクを設置していた。

 日本ではデビューから1年半後の2007年3月、ピュアスポーツモデル、タイプRが発売される。タイプRは専用フード&フロントフェンダー、ダーククロームメッキのフロントグリルバー、大開口フロントバンパー、大型リアスポイラーを装着。エンジンは2リッターDOHC16V i-VTECエンジン(K20A型)を搭載。225ps/8000rpm、21.9kg-m/6100rpmをマークした。

時代をリードする革新的なモデル

 シビックというモデルが、1972年7月にデビューして以来、ホンダの看板車種であったばかりでなく、常にクルマを取り巻く社会をリードする役割を果たしていたことは間違いない。1970年にアメリカの大気汚染対策として制定されたマスキー法は、厳しさの点ではそれまでの自動車用エンジンの息の根を止めてしまうかに見えた。だが、ホンダが独自に開発したCVCC(Compound Vortex Controlled Combustion System =複合渦流調速燃焼機構)は、マスキー法を見事にクリアし、ガソリンエンジンの未来を切り開いたのだった。また、実用的なモデルの販売では、1997年12月に発売されたトヨタ プリウスに遅れは取ったが、1999年9月にはシビック ハイブリッドと同じIMA(integrated motor assist)方式を持った初代インサイトを発表、ハイブリッド車のマーケットを席巻するという具合に、常に自動車技術の最先端を走り続けている。

 日本の新しい国民車を目指して1972年7月に発売された小型車シビックでは1967年3月に発売された軽自動車のホンダN360に始まる、横置きエンジンによる前輪駆動方式を国産小型車の技術的スタンダードとして定着させ、以後2010年に国内市場でのシビックの生産を中止するまで、ホンダの中核的なモデルとして君臨した。歴史的なモデルである。