トヨタECO3 【1997,1998,1999,2000,2001】

1997年から本格的に押し進められた環境プロジェクトの内容

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ハイブリッド車の市販化と設定車種の拡大

 CO2の大量排出による地球温暖化が世界的にクローズアップされた1990年代。その対応策としてトヨタ自動車は、“トータルクリーン”を基本理念に掲げた「TOYOTA ECO-PROJECT」を策定し、1997年から本格的に展開する。クルマの動力源としては、ハイブリッドやCNG、電気、燃料電池といった多彩なユニットの研究・開発を積極的に推し進めた。

 内燃機関のガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車=HV(Hybrid Vehicle)については、1997年10月に「プリウス」を送り出す。世界初の量産ハイブリッド車であるプリウスは、高膨張比サイクルの1NZ-FXE型1496cc直4DOHCエンジン(58ps/10.4kg・m)に交流同期電動機モーター(30.0kW/31.1kg・m)、そしてニッケル水素バッテリーを組み合わせた“THS”(トヨタ・ハイブリッド・システム)の動力源を備え、10・15モード走行燃費で28.0km/Lという従来の同クラスのガソリン車に比べて約2倍の燃費を実現した。

 2001年6月になると、量産ミニバンでは世界初となるハイブリッドモデルの「エスティマ・ハイブリッド」を発売する。動力装置については専用の高膨張比サイクル2AZ-FXE型2362cc直4DOHCエンジン(131ps/19.4kg・m)+1EM型交流同期電動機(13.0kW/11.2kg・m)+Super CVTで前輪を駆動する“THS-C”(トヨタ・ハイブリッド・システムCVT)を、さらに1FM型交流同期電動機(18.0kW/11.0kg・m)で後輪を駆動し、かつエネルギー回生も行う電気式4WDシステムのE-Fourを採用。また、動力用主電池にはニッケル水素バッテリーを搭載した。

 2001年8月には高級セダンのクラウン・ロイヤルサルーンにハイブリッド仕様を設定する。組み込まれた新機構は“THS-M”(トヨタ・ハイブリッド・システム・マイルド)と称するマイルドハイブリッド・システムだ。THS-Mは筒内直接噴射(D-4)2JZ-FSE型2997cc直6DOHCエンジン(200ps/30.0kg・m)+1GM型交流同期電動機(3.0kW/5.7kg・m)+電動オイルポンプ付きスーパーインテリジェント5速ATで動力装置を構成し、モーター機能はアイドリングストップからの再発進と走行アシストのみに限定。通常走行はエンジンをメインに使用した。

 さらにトヨタは、バスの分野でもハイブリッドモデルを開発する。1997年8月に登場した「コースター・ハイブリッドEV」だ。いわゆるシリーズハイブリッド方式を採用したコースターは、発電専用として5E-FE型1496cc直4DOHC16Vエンジン(49ps/11.3kg・m)を搭載。このエンジンを常時回転させて発電を行い、バッテリーに電力を蓄えつつ、電動モーター(70.0kW/405N・m)によってクルマを駆動させる仕組みである。ベースのディーゼルエンジン車に比べて排出ガスが大幅にクリーンになり、かつ純粋な電気自動車よりも長い距離を走行できることが同車の大きな特長だった。

商用モデルではCNG車を拡大展開

 乗用車とバスにHVを設定する一方、トヨタは商用モデルにおいて燃料に圧縮天然ガス=CNG(Compressed Natural Gas)を活用するモデルを2000年代初頭に入って積極的にリリースした。

 トラックのカテゴリーでは、ダイナ/トヨエースの2/3トン積車にCNGモデルを設定する。動力源は15B型系ユニットをベースとする15B-FNE型4104cc直4OHVで、パワー&トルクは120ps/31.6kg・mを発生。一充填走行距離は標準キャブで約300kmを実現した。次に小型バンクラスにおいて、6代目カローラ・バンのCNG仕様が登場する。動力源は5E型系の1496cc直4DOHCユニットをベースとし、パワー&トルクは76ps/11.5kg・mを発揮。一充填走行距離は10・15モード走行で245kmを達成した。
 CNG車の2モデルは、ともに七都県市指定の超低公害車とLEV-6の認定を取得。クリーンな商用車として脚光を浴びた。

電気自動車と燃料電池車の開発

 トヨタは近未来のエコカーとして、電気自動車=EV(Electric Vehicle)と燃料電池車=FCHV(Fuel Cell Hybrid Vehicle)の開発も進めた。
 電気自動車では1997年に「RAV4L Ⅴ EV」と「e-com」を発表する。RAV4L Ⅴ EVはライト級SUVのRAV4L Ⅴをベースに、交流同期モーター(50.0kW/190N・m)やシール型のニッケル水素バッテリー、回生ブレーキシステムなどを採用。一充填当たりの走行距離は10・15モード走行で200km以上を実現した。一方のe-comは2人乗りのミニEVコミューターで、電動機には交流同期モーター(18.5kW/76N・m)、蓄電池にはニッケル水素バッテリーを搭載する。一充填当たりの走行距離は10・15モード走行で100kmに達した。また、e-comでは情報通信技術のITSを活用した共同利用システムの「Crayon」も提案。1999年から愛知県の豊田市や刈谷市などで実証実験が行われた。

 燃料電池車に関しては、1996年発表のFCEV、1997年発表のFCEV2、2001年発表のFCHV-3などを経て、2001年6月には改良版のFCHV-4が国土交通大臣認定を取得して公道テストを開始する。そして同年10月にはFCHV-5へと進化。翌2002年12月になって市販版の「FCHV」を限定販売した。トヨタFCスタック(固体高分子形、90kW)と称する燃料電池に交流同期モーター(90.0kW/260N・m)、高圧水素タンク(最高充填圧力35MPa)、ニッケル水素バッテリーを備えたFCHVは、最高速度で155km/hを発揮。一充填での航続距離は330kmに達した。