カローラ・レビン 【1987,1988,1989,1990,1991】
FFの常識を超えた走りを実現! 92型レビン
カローラのクーペモデル、レビンは1987年にFFとなった。駆動方式は後輪駆動から前輪駆動へと変更され、大きなターニングポイントを迎えた。車両型式はAE92型。特徴は、駆動方式とともに強化されたエンジンラインアップだった。
自然吸気(NA)仕様では、4A-GE型1587cc直列4気筒DOHC16Vがトップユニットで、最高出力120ps/6600rpm、最大トルク14.5kg-m/5200rpmをマークした。改良を施された進化版4A-GE型は、中低速トルクをアップするために、バルブタイミングを変更。同時に吸排気系をリファインした。従来と最高出力スペックに変化はないが、トルクは1kg-mアップを達成していた。そのほかNA系には2つの1.5リッターユニットをラインアップ。どちらもハイメカツインカムで、EFIを採用する5A-FE型1498cc直列4気筒DOHC16Vが最高出力94ps/6000rpm、最大トルク13.1kg-m/4400rpm。キャブレター仕様となる5A-F型は同じく1498cc直列4気筒DOHC16Vで85ps/6000rpm、12.5kg-m/3600rpmとなっていた。
エンジンのハイライトは、スーパーチャージャーユニットの投入だった。MR2(AW11型)にも搭載された4A-GZE型エンジン。145ps/6400rpmの最高出力と、19.0kg-m/4400rpmの最大トルクを発揮した。NAの4A-GE型に比べて最高出力で25ps、最大トルクで4.5kg-mのアップを誇るユニットだ。低回転から十分なトルクと優れたレスポンスを発生。7500rpmのレッドゾーンまで滑らかに一気に吹き上がった。またそのエンジンサウンドも魅力にあふれ、非常にポテンシャルの高いスポーツユニットであった。ちなみに、GT-Zグレードでは、エンジンの真上に装着したスーパーチャージャーのために、ボンネットにパワーバルジを設置。これが外観の大きな識別点となっていた。
スタイリングは、2ドアクーペのみ。ロー&ワイドのボディにコンパクトなキャビンを組み合わせたデザインは、軽快さとともに、ソアラを彷彿させる上質さにも満ちていた。ボディサイズは、全長4245mm×全幅1665mm×全高1300mm(GT-Zは全幅1680mm)。旧型となるAE86型の前期型(全長4180mm×全幅1625mm×全高1335)と比較すると、全長は65mm延長し、全幅は40mm拡大した一方、全高が35mm低くなり、スポーティーなフォルムを身に付けていたことが分かる。
インテリアではクーペ専用のインパネが目を引く。セダンや、ハッチバックモデルであるFXでは、大きなクラスターを持つインパネ形状が採用されたが、クーペではクラスター部分をコンパクトにデザインし、左右にハザードやフォグランプのスイッチをレイアウト。スポーティーな走りに対応したシートも新デザインで、上級モデルの運転席は6ウェイ調整式となっていた。
トランスミッションは、GT-Zは強化版の5速MTのみ。そのほかのグレードには、5速MTと4速ATをラインアップした(ロアグレードは3速AT)。サスペンションは、4輪ストラット。トヨタが持つFFモデルに対するサスペンションの最新ノウハウを詰め込まれ、走りの完成度の高さも大いに注目を集めた。
ボディ剛性アップも大きな話題。AE92型ではコンピューターによる構造解析を活用。骨格構造や部材の断面形状の見直しのほか、ダッシュパネルやフロアパネルなどのパネル類の面形状の最適化を実施した。また、サスペンション取り付けにサブフレームを用いたうえ、骨格部材やエンジンフード、ドアには高張力鋼板を採用する。軽量化を図りながらも、ボディの曲げ剛性は旧型より60%向上し、ねじり剛性は50%アップとなった。また、制振や遮音の面でもメリットを生んだ。高いボディ剛性によって、90系カローラ&スプリンターでは走りの基本性能、静粛性、剛性感がアップ。AE92型レビンの優れた足回りのポテンシャルは、ボディ剛性の向上によってもたらされたものだった。
AE92型レビンは、スポーティーなクーペデザイン、上質なインテリア、完成度の高い足回り、そして優れたポテンシャルを誇るパワーユニットの搭載で、新たな国産FFライトウエイトスポーツの魅力を明示する。80年代の名車のひとつとして数えられるモデルである。