ホンダデザイン7 【1989,1990,1991】

上級乗用車とスポーツモデルのデザイン革新

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定番モデル、アコードの上級化

 ハイテクを満載した華やかなニューモデルがユーザーから持て囃された1980年代終盤の日本の自動車市場。この状況下で本田技研工業は、同社の中核車であるアコードとアッパーミドル車のアコード・インスパイア/ビガーの全面改良を1989年9月に実施する。

 主力車種となるアコードに関しては、“ワールドカー”にふさわしい先進性とホンダならではの走りの爽快感をテーマに掲げて開発される。4ドアセダンに絞ったボディのサイズは従来比で全長を115mm、全高を35mm、ホイールベースを120mm延長して広い居住空間を確保。さらに、フロントウィンドウ下端を従来型より150mm前進させて乗員の広角視界と開放感を生み出す“前進ビッグキャビン”を構築した。スタイリングについては存在感豊かなマッシブラウンド・フォルムを基調に、精悍なフロントマスクや個性的なリアビュー、伸びやかなサイドラインなどでオリジナリティを主張。新設定車種のアスコットでは、フロントグリルやリアコンビネーションランプ、エンブレムなどでアコードとの差異化を図ると同時に、ウィンドウグラフィックを6ライトとすることで開放的なムードを演出した。

5気筒のFFスペシャルティ誕生

 アッパーミドル車のアコード・インスパイア/ビガーは、車両レイアウトとして世界初の縦置き5気筒エンジン・FFミッドシップを採用する。フロント車軸後方にエンジンを配置して理想的な前後重量配分を実現するFFミッドシップ−−これを成し遂げるために開発陣は、パワートレインのコンパクト化やエンジン搭載の傾斜化(35度)、ホイールベースの拡大(2805mm)、サスペンションの見直しなどを行う。エンジン自体は、5連アルミシリンダーブロックや一次偶力バランサーなどを組み込むG20A型1996cc直列5気筒OHC20Vを新開発した。スタイリングについては「感性と美意識を優先させた“八等身フォルム”」の実現を主要テーマとする。ボディタイプは市場で人気の4ドアハードトップに絞り、ロング&マッシブノーズとショートデッキ、各部のフラッシュサーフェス化、グリップタイプのドアノブなどを採用して個性的なエクステリアを構築した。インテリアは「オーセンティック&パーソナルな空間設定」を課題に、各部をアレンジする。インパネおよびドアライニングは上品でラウンディッシュな一体感のある造形で演出。さらに、北米産マドローナの玉杢や西アフリカ産ゼブラの柾目といった本木目パネルを贅沢に盛り込んだ。

軽乗用車初の2シーターミッドシップオープンの登場

 1991年5月になると、軽自動車初の本格的な2シーターミッドシップスポーツとなる「ビート」が市場デビューを果たす。動力源には「ハイパワーはもちろん、どこまでもドライバーの気持ちに直結した小気味よいレスポンス」を追求した新開発の“660 MTREC 12VALVE”エンジンを搭載。ベースとなったのは既存のE07A型656cc直列3気筒OHC12Vで、ここにホンダF1テクノロジーを応用した多連スロットルと2つの燃料噴射制御マップ切り換え方式によるハイレスポンス・エンジンコントロールシステムの“MTREC”を組み込んだ。

 スタイリングについては固まり感のあるコンパクトなオープンボディを基本に、ミッドシップの証しであるサイドの大型エアインテークや手動開閉のソフトトップ、低くワイド感あふれるフロントノーズなどで個性を主張する。一方のインテリアでは、ドライバー中心のキャビンレイアウトにモーターサイクルを思わせる3眼メーター、ゼブラパターン表地のバケットシートなどを装備した。ビートは当時アドバイザー契約を結んでいたイタリアのピニンファリーナとの関係が取りざたされるが、基本的にはホンダオリジナルデザインのようだ。

大胆なスポーツクーペスタイルに変身した4代目プレリュード

 本田技研工業はスペシャルティカーの分野でも車両デザインの刷新を画策し、1991年9月には4代目となるプレリュードを発売する。
 先進的なクーペスタイルを纏った4代目のボディサイズは全長4440×全幅1765×全高1290mm、ホイールベース2550mmと従来よりワイド&ローフォルム化。この基本骨格をベースに、ツインリフレクターヘッドランプや大型リアコンビネーションランプなどを装着してスポーティ感を際立たせる。同時に、ボディ全体のフラッシュサーフェス化を徹底し、豊かで高品位なフォルムを実現した。内包するメカニズムについては、F22B型2156cc直4DOHC16V・VTEC/H22A型2156cc直4DOHC16Vエンジン、電子制御電動式4輪操舵システム(ハイパー4WS)、新ジオメトリーの4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションといった新開発の機構を豊富に盛り込んだ。

 内装は、「非日常感を演出する、前席2人のための未来感あふれるインテリア」をテーマにデザインを手がける。“新感覚”を謳うインパネは、サイドまで回り込むラップラウンド形状とワイドに広がるバイザーレスタイプのメーターパネルによって機能性の向上や見た目の美しさを実現。バケットタイプのフロントシートの助手席側には、リクライニングと連動してシートバック上半分が起き上がり、自然なくつろぎ姿勢が保てる“中折れ機構”を組み込んだ。ほかにも、チルトアップ機能付きアウタースライドサンルーフや高品位オーディオシステムといった快適アイテムも装備。乗員が五感全体でドライブを楽しめるインテリア空間に仕立てていた。