スターレット 【1996,1997,1998,1999】

走りと安全性をハイレベルに仕上げたラストモデル

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


5代目はグランツァとリフレの2シリーズ構成

 1973年4月にパブリカの上級バージョンとして誕生(当初の車名はパブリカ・スターレット)し、1978年にスターレットの単独ネームとなったトヨタの末っ子は、コンパクトサイズを生かした使い勝手の良さと、キビキビした走りをセールスポイントに世代を重ねる。1995年12月に発表された5代目はその集大成ともいえる充実のモデルだった。

 5代目のラインアップは、スポーティ仕様の「グランツァ(GLANZA)」と、カジュアル指向の「リフレ(Reflet)」の2シリーズ。グランツァはマルチリフレクターヘッドランプ、LEDハイマウントランプ付きルーフスポイラー、エアロ形状前後バンパー、ホワイト仕様メーター、スポーツシートを標準装備。VとSの2グレード構成で、Vは排気量1331ccから135ps/6400rpm、16.0kg・m/4800rpmの出力/トルクを発揮する直4DOHC16Vターボを搭載。Sは1331ccの自然吸気直4DOHC16Vとなり85ps/5500rpm、12.0kg・m/4400rpmをマークした。ちなみにV用のターボユニットは2段階の過給圧が選べ、LOモード選択時は115ps/6400rpm、14.5kg・m/4800rpmのパワースペックとなった。トランスミッションはV/Sともに5速マニュアルと、4速ATの2種。V用のATはこのクラスでは珍しい電子制御タイプだった。ボディタイプは3ドアHB、駆動方式はFFである。

 カジュアルなリフレは、シンプルな内外装を持ち、上級仕様から順にX/f/標準の3グレード構成。エンジンは排気量1331ccの自然吸気直4DOHC16Vガソリンと、1453ccの直4OHC8Vディーゼルを用意した。パワースペックはガソリンが85ps/5500rpm、12.0kg・m/4400rpm、ディーゼルは55ps/5200rpm、9.1kg・m/3000rpmである。トランスミッションはマニュアル仕様が4速と5速の2種。ATは3速と4速タイプをグレードに応じて設定。ボディ形状は3ドアと5ドアHBから選べ、駆動方式はFFと4WDをラインアップしていた。

大きく進化した乗員を守る安全性

 5代目で大きく進化したのが安全性だった。全車に衝撃吸収安全ボディと、ABS、エアバッグ(当初は運転席のみ、1997年4月に助手席側を追加)を標準装備し、事故を未然に防ぐ強力なブレーキ性能と、不幸にして事故に遭遇した際にパッセンジャーを守る体制に万全を期していた。

 前ストラット式、後トレーリングツイストビーム式(4WDはトレーリング車軸式)のサスペンション、切れ味シャープなステアリング機構を持つスターレットはフットワークに優れ、タウンユースはもちろん、ハイウェイやワインディングロードでもドライバーの意のままのハンドリングが楽しめた。その意味で潜在的に安全性の高いクルマと言えた。5代目は優れた走りの要素に、信頼性を増したABS付きブレーキと、パッセンジャーの身を守る頑丈なボディ&エアバッグを追加したのである。スターレットの安心度はぐっと高まった。全長3790×全幅1625×全高1400mm(グランツァ)のコンパクトサイズながら、安心感はマークⅡなどの上級モデルと同等。安全性の面でスターレットはクラスレスの価値を持ったコンパクトカーだった。

圧倒的な加速力!クラスレスの速さを披露

 クラスレスという面では、グランツァVグレードの速さも圧倒的だった。なにしろ920kg(MT)の軽量ボディと、135psのハイパワーの組み合わせである。パワーウェイトレシオは本格スポーツモデルに匹敵する僅か6.81kg/ps。パフォーマンスは1.6リッタークラスを凌ぎ、2リッタークラスとほぼ同等。とくにシャープな加速性能は目を見張るものがあった。グランツァVには専用チューンドサスペンション、ビスカスカップリング式LSD(MT)、4輪ディスクブレーキが標準装備され、レカロ製バケットシート、リアトライアングルパフォーマンスロッドがオプション設定されていた。それらのアイテムは飾りではなく卓越した走りを支えるのに必要なアイテムだった。グランツァVの痛快な走りは歴代スターレットの頂点と呼ぶに相応しいレベルに達していた。

 スターレットは1999年1月に実質的後継車となるヴィッツのデビューを見届け、1999年夏にトヨタのラインアップから消える。使い勝手の良さと優れた走りという美点は、ヴィッツにきちんと伝承された。ベーシックカーながらユーザーに大きな満足を与えたスターレットは、トヨタの良心が結実した名車の1台だった。