シルビア 【1999,2000,2001,2002】

5ナンバーに回帰した7代目FRスポーツ

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開発テーマは「軽快コンパクトなスポーティクーペ」

 5代目となるS13型系の大ヒットによって、スペシャルティカー市場のトップ・ブランドに位置づけられるようになったシルビア。しかし、1993年10月に全面改良した第6世代のS14型系では、3ナンバー化したボディや大人しいスタイリングが不評を買い、市場シェアは落ち込んでしまった。

 次期型シルビアは、もっとスポーティなクルマに仕立てる必要がある−−。そう判断した日産の開発陣は、7代目となるシルビアの開発コンセプトを「見て、乗って、走って、エモーションを感じる“軽快コンパクトなスポーティクーペ”」とする。具体的には、1)スピード感あふれる彫刻的なフォルム 2)スポーツマインドをかき立てる個性的な室内空間 3)4気筒FR(フロントエンジン・リアドライブ)スポーツならではの軽快で俊敏な走り、といった内容の実現を目指した。

造形は鍛え上げたアスリートをイメージ

 スタイリングに関しては、「鍛え上げたアスリートのような、低く、引き締まったシェイプドボディ」の構築をテーマとする。ボディ前部は低くスラントした前進感のあるフードとシャープな造形の薄型ヘッドランプ、フードとの一体感を持たせたうえで大型エアインテークを設けたエアロバンパーなどで精悍なマスクを演出。サイドビューではウエッジを利かせた2本のキャラクターラインや強く張り出させたリアフェンダーによって、踏ん張り感と彫刻的なソリッド感を持たせた。リア回りは、流れるような前傾ラインに仕立てたリアピラーとフェンダーからトランクに回り込むようにした面構成でシャープなイメージを創出する。ボディサイズは全長4445mm×全幅1695mm×全高1285mm。従来型よりも短く、低くなり、全幅も5ナンバー枠に収めた。

 インテリアは、ソフト感を持たせたアッパー部とハードで金属感のあるロア部を組み合わせた個性的なインパネや円形の5連ベンチレーショングリル、大型の回転計を中心にレイアウトしたシルバー文字盤のコンビメーター、各所に配したチタン調パネルなどによって、スポーティ感あふれるコクピットを創出する。また、ドライバー側のフロントピラーに配置したターボブースト計および油圧計や専用表地を備えたバケットシートなど、装備面でもスポーツマインドを増幅させた。

 搭載エンジンは、大容量フューエルインジェクターの採用やターボチャージャーの高効率化などを図ったSR20DET型1998cc直4DOHC16Vターボと排気抵抗の低減等を実施したSR20DE型1998cc直4DOHC16Vの2機種をラインアップする。SR20DET型には、新開発の6速MTも組み合わせた。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式と基本的に従来型と同様だが、取り付け部の剛性アップやジオメトリーの見直しなどを行い、軽快で応答遅れのないシャシーを実現する。また、16インチタイヤ装着車用に補強バーを組み込んだうえでエクステンションフロアの板厚をアップさせた“スポーツチューンドボディ”も設定した。

キャッチフレーズは「ドライブしよう」

 第7世代となるシルビアは、S15の型式を付けて1999年1月に市場デビューを果たす。車種展開はSR20DET型エンジンを積む“spec-R”とSR20DE型エンジンを採用する“spec-S”の2系統を用意。2タイプともにリアスポイラーなどの外装パーツを標準装備した“エアロ”グレードが設定された。

 内外装とメカニズムのすべての項目でスポーティ性を強調したS15型系シルビア。そのキャラクターから「スポーツカーって、こんなに楽しかったのか」「スポーツカーって、新しい世界が広がっていくんだ」「ドライブしよう」というキャッチを冠し、RV(レクリエーショナル・ビークル)に流れたユーザーを呼び戻そうとする。これに応えたのが、走り好きのユーザー層。5代目ほどの販売台数の伸びは記録できなかったものの、S15型系の走りの良さと精悍なスタイリングは、走り好きから高く評価された。

 日産の開発陣は、デビュー後もS15型系シルビアの魅力度アップに鋭意、努めていく。
 1999年10月には、歴代シルビアのもうひとつの特徴である“ファッション性”を重視したグレードが設定される。“bパッケージ”と称するブルーをイメージカラーに据えた同車は、ライトブルーイッシュシルバーと呼ぶ専用外装色やブルーのスエード調クロス地内装、クローム色アルミホイールなどが装備された。またこのとき、spec-Sをベースにオーテックジャパンがチューンアップを施した“オーテックバージョン”もラインアップに加わる。

 2000年5月になると、国産車初の電動バリアブル・メタルオープンルーフを採用したシルビア“ヴァリエッタ”が発表される(発売は同年7月)。開発を手がけたのは、オーテックジャパンと高田工業。またシート表地には、帝人と川島織物が共同で生み出した“モルフォトーンクロス”が組み込まれた。
 ユニークで魅力あふれるモデルが次々と追加されていったS15型系シルビア。しかし、2002年になると平成12年排出ガス規制への対応にコストが見合わないことから、生産中止が決定される。そして同年8月、ついにシルビアは新車カタログから消えることとなったのである。