89トヨタ・ランドクルーザー80vs87日産サファリ 【1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998】

豪華で快適なRVに発展したフラッグシップ4WD対決

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4WDユーザーの上級志向の流れ

 現在ではクルマのひとつのカテゴリーとして、すっかり定着した感のあるSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)。かつてはその特性からクロスカントリー4WD、略して“クロカン・ヨンク”と呼ばれた。SUVの設定は、1970年代から流行の兆しを見せていたアウトドアレジャー・ブームに端を発する。大自然のふところに出かけるための足として最適のクルマ−−荷物がたくさん積めて、しかもその積み下ろしが楽で、さらに未舗装路でも余裕で走れる新種のモデルを、多くのユーザーが求めはじめていたのである。この市場動向を敏感に察知したのが、日産自動車とトヨタ自動車工業だった。日産は1980年6月にサファリを、トヨタは同年8月にランドクルーザー60を発売。いずれのモデルも、4WD車本来の機動性をさらに高めながら、安全性、居住性、経済性を兼ね備えた“多目的乗貨両用車”に仕立てられていた。

 いわゆるレクリエーショナル・ビークル(RV)を志向したクロカン・ヨンクは、1980年代半ばに入ると人気が急上昇し、市場で“4WD(ヨンク)ブーム”が巻き起こる。このカテゴリーで旗艦モデルに位置していたランクル60とサファリも必然的にスポットライトを浴び、同時にさらなる上級な演出や快適な走りが市場から求められるようになった。

“THE KING OF ADVENTURE”を謳った2代目サファリ

 旗艦4WDに対するユーザーの新たな要請に対し、最初に回答策を打ち出したのは日産だった。1987年11月にサファリをフルモデルチェンジし、“THE KING OF ADVENTURE”と称する第2世代を市場に放ったのだ。

 型式をY60と称した2代目サファリは、メカ関連の多くを新設計としていた。まずフレームは、サイドメンバーの断面拡大やクロスメンバー結合部へのレインフォースの設定などを行って剛性を大幅アップ。サスペンションはフロントにリーディングアームの3リンク式コイルスプリングを、リアに5リンク式コイルスプリングをセットする。搭載エンジンは渦流室容積比の増大や分配型燃料噴射ポンプの採用などを実施した改良版のTD42型4169cc直6OHVディーゼル(125ps/27.8kg・m)で、シンクロ径を拡大した5速MTのトランスミッションに、入力軸と出力軸を直結してエネルギーロスを少なくしたストレートスルータイプのトランスファー(パートタイム4WD)を組み合わせた。ボディタイプはホイールベース2970mmのエクストラバンのハイルーフと標準ルーフ、同2400mmのハードトップという計3タイプを設定する。内外装のデザインは従来型よりも乗用車ライクに仕立て、装備類も一層の充実を図った。

 2代目サファリは矢継ぎ早にラインアップの拡充を行っていく。まず1988年9月には、シリーズ初の4速ATモデルを設定。1991年2月には3ナンバーワゴン(エクストラハイルーフ/エクストラ標準ルーフが7名乗り、ハードトップが5名乗り)を追加する。さらに同年10月には、ワゴンにTB42E型4169cc直6OHVガソリンエンジン(175ps/32.6kg・m)を搭載した。

“4WDの頂点”と称したランドクルーザー80

 一方のトヨタは1989年10月にランドクルーザー60をフルモデルチェンジし、“4WDの頂点”を謳う80系へと切り替える。ボディタイプはホイールベース2850mmのワゴン(乗車定員8名)とバンをラインアップした。
 ランドクルーザー80のメカで最も注目を集めたのは、その駆動機構だった。従来のパートタイム4WDに加えて、センターデフ付フルタイム4WDを新規設定したのだ。“新4WD時代”と称した同システムは、信頼性の高いべべルギア方式のセンターデフや電動モーター式アクチュエータを組み込んだデフロック機構を装備し、路面状況を問わない高い走破性を実現する。同時に、懸架機構もオン/オフ両方での走行性能を重視。フロントにはリーディングアーム式コイルスプリングを、リアには4リンク式/コイルスプリングを採用し、上級仕様には2ステージショックアブソーバーもセットした。搭載エンジンはワゴンに3F-E型3955cc直6OHVガソリン(155ps/29.5kg・m)を、バンに新開発の1HD-T型4163cc直6OHCディーゼルターボ(165ps/37.0kg・m)と1HZ型4163cc直6OHCディーゼル(135ps/28.5kg・m)を設定。トランスミッションは3F-E型に4速ATを、1HD-T型と1HZ型には5速MTと4速ATを組み合わせた。
 メカニズムの大幅刷新に加えて、内外装の高級化も積極的に図ったランドクルーザー80は、着実に進化の歩みを続ける。まず1992年8月には、ガソリンエンジンを新開発の1FZ-FE型4476cc直6DOHC(215ps/38.0kg・m)へと換装。1995年1月になるとマイナーチェンジを実施し、1HD-FT型4163cc直6OHCディーゼルターボ(170ps/38.7kg・m)の採用や内外装デザインの一部変更などを行った。
 レジャーユースに重きを置く上級4WD車へと変貌を遂げていったランドクルーザー80とサファリ。その路線は日本のみならず世界市場でも高く評価され、やがて高級SUVの代表格に成長していったのである。