日産デザイン11 【1989,1990,1991,1992,1993】

曲面デザインを採用した1990年代初頭の乗用車群

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“新しい高級車の基準”を標榜したインフィニティQ45

 「1990年代には技術の世界一を目指す」という“901運動”を展開していた日産自動車は、車両デザインの刷新も意欲的に行っていく。そのシンボリックなモデルは、1989年10月に発表された。“Japan Original”を謳うインフィニティQ45(G50型系)だった。

 インフィニティQ45は、高級車では定番のメッキグリルを廃し、その代わりに七宝焼きの専用オーナメントを装着するという独自のフロントマスクを提案する。サイドビューは2880mmのロングホイールベースを活かした流麗なラインで構成。さらに、ダイカスト製のドアハンドルやアルミ材のサイドウィンドウモールを組み込み、本物感と重厚感を演出した。リア部はコンビネーションランプ&ガーニッシュを幅広のU字型にアレンジし、1990年代に向けた斬新さを強調する。また開発陣はボディカラーにも凝り、塗料に含まれるカーボングラファイトの作用で光源や見る角度の変化に応じて色味が変わる“トワイライトカラー”を採用した。

 内装デザインは“人とクルマの一体感”の追求を主要テーマに据える。インパネとサイド、さらにリア回りの造形は、乗員を優しく包みこむような柔らかな曲線基調で構成。また、ドアの開閉およびキーの抜き差しに応じて運転席とステアリングホイールが自動的に動き、乗降性を向上させるオートドライビングポジションシステムの先進機構も組み込む。各部のアレンジにもこだわり、インパネには漆を塗ったうえでチタン粉を吹きつけ、さらに金粉を蒔絵のように散りばめる“KOKON”(ココン)仕様を設定。シート地には上質な素材のレザーとウールモケットを採用した。

曲面フォルムで構成された9代目ブルーバード

 1991年9月になると、中核車のブルーバードが9代目(U13型系)に切り替わる。ボディタイプは4ドアセダンと4ドアハードトップの2種類をラインアップし、セダンのSSS系が“クラスを超えた存在感”、ハードトップのARX系が“新しいシック”を謳っていた。

 スタイリングについては、2ボディともに曲面フォルムを基調に構成する。そのうえで、セダンはメッシュグリルを配したフロントマスクにブラックアウトしたセンターピラー、緩やかな下降線を描くリアボディで独特の存在感を、ハードトップは横桟のメッキグリルに流れるようなウィンドウグラフィック、角度をつけたリアピラー、精悍な印象のリアビューなどでハイグレードな香りを創出した。キャビンはホイールベースの延長(従来型比+70mm)やヘッドルームの拡大により、ゆとりのある室内空間を実現。また、セダンは明るいツートンの内装色を、ハードトップはロースウッドタイプのインストフィニッシャーを採用し、それぞれの上質感を強調していた。

高級パーソナルセダンの新たな形を創造したJ.フェリー

 1992年6月には高級パーソナルカーのレパードが第3世代(Y32型系)へと移行する。これを機に、車名には「J.フェリー」のサブネームがついた。
 基本ボディを従来の2ドアクーペから4ドアセダンへと一新したレパード・J.フェリーは、米国NDI(日産デザイン・インターナショナル)が中心となって車両デザインを手がける。優美さを強調したエクステリアは、曲面基調のラウンディッシュなフォルムで構成。そのうえで、楕円+横桟のメッキグリルやサイドを丸く絞った前後バンパー、伸びやかなサイドライン、下方へと緩やかに下がるリアビュー、センターガーニッシュと一体造形としたリアコンビネーションランプなどを採用して上品かつエレガントなムードを創出した。

 インテリアは、外観と同イメージのラウンディッシュなインパネや多くのパワー機構を取り入れた前席によって上質で快適なキャビンルームを演出する。また、ポルトローナフラウ社製高級レザーシートやオゾンセーフフルオートエアコン、マルチリモートエントリーシステム、電子制御アクティブサウンドシステムなど、豪華な装備を豊富に取りそろえていた。

伝統のスポーティモデルの刷新

 1993年になると、伝統のスポーティモデルが相次いで3ナンバーボディに移行する。8月デビューの9代目スカイライン(R33型系)と10月デビューの6代目シルビア(S14型)だ。
 「卓越した走りの本流グランドツーリングカー」を標榜する9代目スカイラインは、快適な室内空間“コンフォータブルパッケージ”や前後重量配分最適化“ハイトラクションレイアウト”を柱として車両デザインを創出する。基本スタイルはセダンとクーペともにラウンディッシュな面を多用して構成。C.S.RヘッドランプやGTオートスポイラーといった先進アイテムも積極的に盛り込む。従来型の欠点とされた後席のスペース不足に関しても改善していた。

 一方の6代目シルビアは、「意のままの楽しい走りとセンスの良さを徹底追求したスタイリッシュスポーツクーペ」の創出を掲げて開発。外装に関しては、水平基調の流れるようなホリゾンタルストリームシェイプを基本に、均整のとれたエレガントでスポーティなフォルムを構築。ボディ幅は1730mmにまで拡大した。