アンフィニMS-9 【1991,1992,1993,1994】

センティアをベースにしたアンフィニの旗艦サルーン

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アンフィニ・ブランドの旗艦を企画

 1980年代終盤から1990年代初頭にかけて、マツダは5チャンネル体制の販売網を構築する。そのなかで、上級ディーラーに位置づけられたのがアンフィニ店系列だった。

 フランス語で“無限”を意味するアンフィニ・ブランドは、そのフラッグシップモデルを設定するにあたり、ベース車として高級サルーンのマツダ・センティア(1991年5月デビュー)を選択する。また、主要コンポーネントはほぼそのまま流用する旨を決定した。開発および発売までの期間短縮やコスト削減などを鑑みたうえで、最適と思われる方策をとったのだ。

4タイプの車種展開で市場デビュー

 1991年10月になって、マツダはアンフィニ・ブランドの旗艦モデルとなる「MS-9」を発表し、翌11月より発売する。ボディタイプはベース車のセンティアと同様、サッシュレス4ドアのピラードハードトップセダンの1種。グレード展開は上位から30TypeⅠ/30TypeⅡ/25TypeⅠ/25TypeⅡという計4タイプで構成し、車両価格はセンティアの同仕様グレードと比べて数万円高く設定していた。ちなみに、車名のMSはMegalo Spirits(=大いなる思い)の略で、ここにブランド内での車格を示す9を組み合わせていた。

 MS-9はセンティアと同様、その車両デザインで市場から注目を集める。2850mmのロングホイールベースにショートオーバーハングというディメンション、エンジンをフロントアクスルより後方に搭載するFRフロントミッドシップにガソリンタンクをリアミッドシップに配置するレイアウト、アルミ製フロントフードをはじめとする綿密な軽量化施策などにより、スポーツカーに匹敵する前後重量配分(52:48)と低重心を実現。また、滑らかな曲面が連続するカーブコンシャスのフォルムによって、Cd値(空気抵抗係数)0.32というハイレベルのエアロダイナミクスを成し遂げた。さらに、車速感応型4WSの採用やボディ前後コーナー部の絞り込みにより、最小回転半径は小型車クラス並みの4.9mを達成する。MS-9独自のアレンジとしては、内部をブラックアウト化したフロントグリルや専用デザインのアルミホイール、外板色、エンブレムなどを盛り込んだ。

ドライバー中心の室内空間。エンジンはV6

 インテリアについては、ドライバーオリエンテッドな空間の創出に重点を置く。インパネはメーターの視認性やスイッチ類の操作性を考慮したうえで3次元の曲面デザインで構成。最上位グレードには楡の天然杢を使ったセンターコンソール部ウッドパネルや最高級の牛革を用いたステアリング/シフトノブ/ルーフアシストグリップを装備する。

 フロントシートには第4、5腰椎を適切に支持して最適な乗車姿勢を保持するバケットタイプを採用。シート地は最上級グレードにレザー(オーストリアのシュミットフェルドバッハ製)を、そのほかのグレードにはモールファブリックを使用する。装備類の充実も特長で、新しい換気システムのソーラーベンチレーションや高密度サウンドを提供するスーパープレミアムミュージックシステム、衝突時のドライバーの安全性を高める運転席エアバッグシステム、メモリー機能付きのハンズフリーテレフォンといった豪華アイテムを設定した。

 搭載エンジンは30系グレードにJE-ZE型2954cc・V6DOHC24V(200ps/27.7kg・m)を、25系グレードにJ5-DE型2494cc・V6DOHC24V(160ps/21.5kg・m)を採用する。組み合わせるトランスミッションは、スリップロックアップ制御機構を備えた電子制御式4速ATの1機種。また、懸架機構には4輪マルチリンクを、制動機構には4輪ベンチレーテッドディスクをセットし、先進メカとして車速感応型4WSや4輪ABSなどを組み込んでいた。

センティアのマイナーチェンジ時に統合

 月販目標をセンティアより少ない2000台に設定して発売を開始したMS-9。しかし、販売成績は伸び悩んだ。センティアとの差異化が少なく、独立車種としてのイメージが薄かった、車名が浸透しなかった、RV人気に高級セダンが圧倒された−−要因は色々とあげられた。

 苦しい状況のなか、それでも開発陣は創意工夫を凝らしてMS-9を市場にアピールしていく。まず1992年10月には、アンフィニ店開業1周年を記念した特別仕様車を発売。翌1993年6月には一部改良を実施し、新グレードとして30TypeJ/25TypeⅢ/25TypeSEを設定した。一方で、この頃になるとバブル景気の崩壊によるマツダの経営悪化が顕在化し、首脳陣はその対応策の一環として拡大しすぎた車種ラインアップの整理を決断する。真っ先に選択した車種は販売が低調だったMS-9で、1994年1月実施のセンティアのマイナーチェンジを機に、同車と統合する形で生産を中止したのである。

太陽光を活用したソーラーベンチレーション

 MS-9はアンフィニ・ブランドのフラッグシップモデルだけに上級アイテムを豊富に装備していたが、なかでも注目を集めたのが新しい換気システムの“ソーラーベンチレーション”だった。
 最上級グレードの30TypeⅡにセットオプションで設定されたソーラーベンチレーションは、サンルーフ部に内蔵した太陽電池で専用換気ファンを駆動させ、駐車中での室温上昇を抑制。また、この換気ファンは走行中の室内の強制換気にも活用され、タバコの煙などを速やかに車外に排出して常にクリーンなキャビン空間を作り出す。さらに、ファンが停止状態にある場合は、太陽電池が生み出す電気エネルギーを自動的に車載バッテリーへ充電する機能も備えていた。