エクストレイル 【2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013】

“TOUGH GEAR”を標榜した2代目本格SUV

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息の長い定番ブランドに育てるために−−

 2000年11月に発売された日産製SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)のX-TRAIL(エクストレイル)は、それまで上級指向が主流を占めていた日本のSUVマーケットに一石を投じた。「200万円の“使える4駆”」をセールスポイントに据え、オフロード性能重視のキャラクターとリーズナブルな価格設定で勝負した点が、ユーザーから熱い支持を受けたのである。その結果、SUVマーケットで4年連続の販売台数第1位という栄誉を獲得した。

 エクストレイルの車両コンセプトは市場で高く評価された。だから次期型は、初代のブランドイメージを大切に育んで発展させ、息の長い定番モデルに昇華させるべきだ−−そう判断した日産の開発陣は、次期型の開発テーマを「アウトドアスポーツを最大限満喫するための“TOUGH GEAR”」とする。具体的には、初代以上に4WD機構に磨きをかけ、またラゲッジやユーティリティ性能を向上させることに主眼を置いた。

“使い倒せる”内外装の構築

 スタイリングに関しては、ひと目でわかるエクストレイルらしさと優れた悪路走破性を予感させる外装の構築を目指す。全体のフォルムは、直線基調のボクシーなラインとボリューム感のあるボディ下部で構成。その上で、強靭なイメージのバンパーや立体的な造形の大型ヘッドランプおよびリアランプ、アルファベットの“X”をモチーフにしたDピラーグラフィック、力強くスクエアな前後フェンダー、機能的でボディとの一体感があるハイパールーフレールなどを採用した。

 インテリアは初代で築いた機能性をさらに向上させ、同時に広さや質感を引き上げることがメインテーマとなる。インパネは空間の広さを強調するよう、パネルからトリムにつながる伸びやかなラインで構築。さらに、インパネ/ドアトリム/アームレストにソフトパッドを配して質感をアップさせる。居住空間自体は、従来型に比べてヘッドルームで6mm、ニールームで24mmほど拡大。また、サイドシル地上高を下げて前後席ともに乗降性を高めた。

 ラゲッジルームの使い勝手向上も訴求ポイント。リアサスペンションのレイアウト変更によってホイールハウスの張り出しを少なくした結果、荷室容量はクラス最大級の603L(VDA)を確保する。その上で、ウオッシャブルラゲッジボードと引き出し式アンダートレイ、後席ダブルホールディング機構、アームレストスルー機構を設定した。さらに、セルクロス表地の防水シートや防水加工フロア&ルーフ、ポップアップステアリング、後席エアコン吹き出し口、保温保冷機構付き前後席用カップホルダー、増設した各部収納ボックス、ボディ塗装面のスクラッチシールドなど、アウトドアの使用に便利な機能も豊富に備えた。

高評価を得ている動力性能に先進機能を融合

 アウトドアへの移動を担う搭載エンジンは、MR20DE型1997cc直4DOHC(137ps/20.4kg・m)とQR25DE型2488cc直4DOHC(170ps/23.5kg・m)の2機種を用意する。組み合わせるミッションは6速MTとエクストロニックCVT(QR25DE型は6速マニュアルモード付き)の2タイプ。CVTについては、ASC(アダプティブシフトコントロール)機能によりドライバーの運転スタイルや走行環境に応じて最適の動力性能と燃費が得られるように変速タイミングをセットアップした。

 駆動機構については、進化版の4WD機構である“オールモード4×4-i”へと発展させる。このシステムは、4WD用コンピュータがVDC(ビークルダイナミクスコントロール)に含まれるステアリングの操舵量を検知する舵角センサー/車両の旋回情報を判断するヨーレートセンサー/Gセンサーからの情報を瞬時に分析。ドライバーが意図するコーナリングラインを予測しながら、実際の走りを理想に近づけるよう、自動的にきめ細かい前後トルク配分を行う仕組みだ。従来型に比べて、より確実なトラクションと滑らかな旋回性を実現した。4WDのAUTOモード(前100:後0〜同50:50)とLOCKモード(VDCのON状態)の切り替えは、インパネのロータリースイッチで行える。また、ヒルディセントコントロールやヒルスタートアシスト、車速感応式電動パワーステアリングなどの先進機構も装備した。

 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式を採用する。ジオメトリーはエクストレイルのキャラクターに合わせて最適化。また、ダンパーには欧州ザックス社製のハイスピードダンピングコントロールタイプを組み込んだ。ブレーキは前後ともにベンチレーテッドディスク式で、制動性能を高める電子制御動力配分システム(EBD)も採用する。タイヤは全仕様にオールシーズンタイプを装着した。

キャッチフレーズは“ノーリミット”

 第2世代のエクストレイルは、まず2007年3月開催のジュネーブショーに出展され、5カ月ほどが経過した同年8月に日本での販売を開始する。T31の型式を付けた新型エクストレイルは、オールモード4×4-i/MR20DE型エンジン(137ps)の20Sと20X、オールモード4×4-i/QR25DE型エンジン(170ps)の25Sと25X、2WD/MR20DE型エンジン(137ps)の20Sと20Xという計6グレード構成でスタートした。

 T31型系エクストレイルで最初に脚光を浴びたのは、その広告展開だった。“ノーリミット”というコピーとともに、プロスノーボーダーのトラビス・ライスさんが雪山を疾走するシーンは、まさにエクストレイルの使い方を象徴する内容。また、第2弾ではプロサーファーの大野修聖さんがアマゾン川の逆流で豪快な波乗りを披露し、オフロードを快走するエクストレイルとともに大注目を集めた。
 初代モデルと同様、高い人気を獲得した2代目エクストレイルは、その勢いを維持しようと、デビュー後も着実にラインアップの拡大や機能面での改良を図っていく。

 まず2008年9月には、クリーンディーゼルエンジンのM9R型1995cc直4DOHC・電子制御コモンレール式直噴ディーゼル(173ps/36.7kg・m)を採用した“20GT”を発売。M9R型には1600barコモンレールシステムのほか、ダブルスワールポートや可変ノズルターボ、EGRクーラー、ディーゼル・パティキュレート・フィルター(DPF)、リーンNOxトラップ触媒(LNT)などを装備し、排出ガスのクリーン化(日本のポスト新長期規制に適合)を図る。同時に、ピエゾ式インジェクターやバランサーシャフト等の装着によって騒音・振動の低減も達成した。市場に放たれたエクストレイル20GTは、299万9850円というシリーズ中の高価格帯に位置するにもかかわらず、受注状況は絶好調。発売から20日足らずで、1077台(月販目標は100台)を記録した。

オーテックジャパンが製作した“高級上質”なエクストレイル

 力強さやタフさを内外装で強調した2代目のT31型系エクストレイル。一方、「大人のための高級上質なオンロードSUV」を標榜するモデルも設定された。関連会社のオーテックジャパンが手掛けたエクストレイル“アクシス”である。

 ベース車となったのは20S(4WD/2WD)と25S(4WD)。ここにエクステリアでは専用デザインのフロントバンパー/フロントグリル/ハロゲンフォグランプ/カラードサイドシルプロテクター/カラードバックドア/カラードリアバンパー/17インチアルミホイールなどが、インテリアではやはり専用タイプの本革シート/本革巻き3本スポークステアリング&シフトノブ/フィニッシャー/インストモール/フロア素材(起毛タイプ)などが組み込まれる。また、専用ボディ色としてシャンパンシルバー・メタリック、専用内装色としてベージュカラーを設定した。

 オーテックジャパンのT31型系エクストレイルに対するこだわりは、さらに続く。2008年11月になると、専用チューニングの足回りやマフラー(フジツボ技研製)などを装備した“アクシス・パフォーマンススペック”を追加。同時に、内外装をドレスアップした新仕様の“ドライビングギア”もリリースする。2009年12月にはベース車の一部変更に合わせてアクシス・シリーズとドライビングギアともにマイナーチェンジを敢行し、完成度をより高めた。