ホンダデザイン12 【1996,1997,1998,1999,2000,2001,2002】

独自の造形で魅了した新世代スポーツモデル群

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“ライト&シャドウ”デザインを採用した新スペシャルティ

 1990年代後半から2000年代初頭にかけての本田技研工業は斬新なクリエイティブムーバーを相次いで発表する一方、ホンダのアイデンティティといえるスポーツモデルの開発も精力的に行っていった。

 まず1996年11月には、最先端テクノロジーを結集した第5世代のプレリュードを市場に放つ。“COUPE,the ULTIMATE”を謳った新世代スペシャルティは、エクステリアデザインのテーマに“ライト&シャドウ”を掲げ、光と影のコントラストを強調した個性的なフォルムを創出。具体的には、大光量フリーフォームリフレクターヘッドライトを配したスポーティなフロントマスクに光によって表情を変えるエッジを際立たせたクールなサイドビュー、バンパーとの連続感を持たせたうえで張りのある面構成としたリアセクションでスタイリングを構築した。

 インテリアは、ブラックで統一した機能性と上質さを融合させた新しいデザインテイストを採用し、従来以上のパーソナル感を演出する。また、ジャストフィットパッケージのコンセプトのもと、高い実用性とコンパクトなボディ、そしてドライビングに集中できるコクピット空間を実現した。

空力性能と機能美を徹底追求したオープンスポーツ

 1999年4月になると、「S2000」の車名を冠したオープンスポーツが市場デビューを果たす。ホンダの“エス”モデルとしてはS800Mが1970年にカタログから外れて以来、実に28年9カ月ぶりの復活だった。

 S2000は“走る楽しさ”と“操る喜び”を具現化しつつ、同時に環境への配慮と高い安全性を開発テーマに据える。基本レイアウトはフロントエンジン・リアドライブ方式の2シーターオープンボディで構成。また、優れたハンドリング性能や人車一体感を実現するためにエンジン(F20C型)を前輪車軸後方に配置して車体前後重量配分を50:50に設定した。オープンボディに関しては、中央部に位置するフロアトンネルをメインフレームの一部として活用し、フロアトンネルを前後のサイドメンバーと同じ高さで水平につなぐX字型の新構造“ハイXボーンフレーム”を採用する。これにより、完全ストレート化させたサイドメンバーからフロアトンネル、サイドシル、フロアフレームまでつながる三つ又分担構造を形成し、クローズドボディと同レベルの高剛性と衝突安全性を実現した。

 エクステリアは空力特性を重視して抵抗や揚力を低減したうえで、リアルスポーツカーらしい機能美を追求。ウエッジシェイプを基本に、スピード感のあるキャラクターラインや抑揚のあるフェンダー、プロジェクタータイプのディスチャージヘッドライト、ダックテール形状のリアビューなどを採用する。インテリアについては機能とエキサイトメントを両立させるデザインのあり方を模索して設計。フォーミュラマシンをイメージさせるデジタルメーターや操作感に重きを置いた小径ステアリングホイール、形状やウレタン硬度分布などをきめ細かくアレンジしたスポーツシートなどを装備した。

空力性能を最優先したパーソナルHVモデル

 1999年9月にはパーソナルハイブリッドカーと称した「インサイト」を発表する(発売は同年11月)。ホンダIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)と名づけたハイブリッドシステムはいわゆるパラレル式で、動力源はエンジンとトランスミッションの間に薄型DCブラシレスモーターを配置するというレイアウトで構成。エンジンにはリーンバーンVTEC技術を大幅に進化させたECA型995cc直3OHC12Vユニットを採用し、モーターアシスト機構には薄型DCブラシレスモーター/Ni-MHバッテリー/PCU(パワー・コントロール・ユニット)を、モーター自体にはロストワックス製法ローターを用いたMF2型144V交流同期電動機をセットした。

 エクステリアは、新骨格アルミボディをベースに基本形状を設計した2ドアハッチバックのスポーティなスタイリングを採用する。徹底的な空力処理を実施し、空気抵抗係数(Cd値)は量産車最高レベルの0.25を達成した。インテリアについては、ドライバーが操作しやすい集中一体型のインパネにIMAシステムの作動状況や燃費状態などが容易に認識できる高機能デジタルマルチメーターをセット。シートにはホールド性に優れるツートンカラーの新タイプを採用した。

スーパースポーツ、NSXの進化

 2001年12月にはスーパースポーツのNSXのマイナーチェンジを実施する。最大のトピックは“スマート&スポーツ”をコンセプトに据えたエクステリアの刷新だった。ヘッドライト形状はリトラクタブル式から固定式に変更、同時にプロジェクタータイプのディスチャージヘッドライトを装備した。また、新造形のフロントバンパーやリアバンパースカート、ドアガーニッシュなどを採用することでよりシャープで力強い外観に仕立てるとともに、空力性能の引き上げも実現した。

 2002年5月になると、ピュアスポーツモデルのNSX-Rを発売する。エクステリアにはエアアウトレットダクト付カーボンボンネットフードやフィン付フロントアンダーカバー、リアディフューザー、カーボンリアスポイラーなどを新装備。公道モデルとしては稀有なマイナスリフトの空力性能を達成していた。