ランドクルーザー・プラド 【2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009】

上質感を高めたタフなワールドSUV

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ライトデューティーモデル、プラドの誕生

 世界で最も信頼できるSUVとして高い評価を受ける国際ブランド、トヨタ・ランドクルーザーには3つのシリーズがある。本流は1951年に警察予備隊(現自衛隊)の制式車両を目指して開発されたトヨタ・ジープを源流とするヘビーデューティーモデル。もうひとつが1967年デビューの50系をルーツとする大型ワゴンモデル。そして最後が1985年にヘビーデユーティー系70の派生車種として登場した乗用車指向のプラドである。

 プラドは、ランドクルーザー本来のタフさを守った上で、日常ユースに適した快適性と走破性を備えた、いわゆるライトデューティーモデル。三菱パジェロなど新たなライバルの台頭に対応してデビューした。メインマーケットは日本とともに欧州。オフロードでの走破性と高速走行時の安定性や乗り心地を重視した設計が特徴だ。使い勝手に優れたミディアムクラスのボディサイズと相まってファーストカーとしてランドクルーザーを使うユーザーに好適な存在といえる。

 プラドは1985年の登場以来、ユーザーの強い支持を受け発展する。当初はヘビーデューティーモデルと基本ボディを共有し、エンジンや足回りを改良したモデルだったが、1996年の2代目から独自のボディを採用。完全な独立シリーズに発展する。今回紹介する2002年10月に登場した通称120系は、プラドとしては3代目のモデルだ。

欧州デザインスタジオが手がけたクリーンな造形

 120系のボディタイプは5ドアと3ドアの2種。スタイリングはトヨタの欧州デザインスタジオ「ED2」が手がけた。クリーンなラインで構成されたフォルムは、オフロードモデルらしい力強い印象を放っている。ボディサイズは5ドアが全長4715mm、全幅1875mm、全高1855mm(TZ)。3ドアは全長4370mm、全幅1875mm、全高1870mm。ボディサイズの違いは主にホイールベースの差から生じたもので、3ドアのそれは5ドア比で335mm短い。

 ボディ構造はともに強靭なラダーフレームを備えた伝統の形式。足回りはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアがトレーリングリンク式。オフロード走行に対応する十分なサスペンションストロークと、オンロードで必要なロール剛性をバランスさせたセッティングの持ち主だ。上級モデルには車高調節が可能なリア電子制御エアサスペンションや、走行状況に応じて16段階にダンパー減衰力を調節するTEMS機構を組み込んでいた。

 パワーユニットは3種。ガソリン仕様が排気量3378ccのV6DOHC24V(185ps)と2693ccの直4DOHC16V(150ps)、ディーゼル仕様は2982ccの直4DOHC16Vターボ(170ps)。このうちディーゼル仕様は「自動車NOx・PM法」に基づく排出ガス規制の関係で、首都圏などでは登録が出来ない規制対象車だった。トランスミッションは全車が副変速機付き電子制御タイプの4速AT。駆動方式はフルタイム4WDである。乗車定員は5ドアが3列シート仕様の7名と、2列シート仕様の5名の2タイプ。3ドアは2列シート仕様の5名のみだった。

魅力は上質感。快適性としたたかな走りが融合

 2代目プラドの魅力は、各部がぐっと上質感を増した点にあった。全車クリーンエアフィルター付きオートエアコン、オプティトロンメーター、ワンタッチ機構付きパワーウィンドー、キーレスエントリー、プライバシーガラスなどの快適アイテムを標準装備。5ドアの最上級グレードではシートが本革にグレードアップされ、ステアリングも本木目とレザーのコンビ仕様が標準だった。室内の質感は上級サルーンと同等の雰囲気だった。

 実際の走りも上質で、とくにV6ガソリン仕様の走行フィールは滑らかそのもの。静粛性もハイレベルに仕上げられており、長距離クルージングが最も快適なクルマの1台だった。それでいてオフロードや雪道では、ランドクルーザーの名にふさわしい逞しい走りが味わえた。プラドはランドクルーザー内の位置づけではライトデューティーモデルだったが、少なくとも道と名のつくところならどこに足を踏み入れても走り切るしたたかさを備えた本格派といえた。最低地上高は220mm。たっぷりとしたクリアランスは伊達ではなかった。

ランクルのこだわり、上級グレードにアクティブTRCを標準装備

 ランドクルーザー一族の開発目標は “どこでも走れるSUV”。それはプラドも共通だった。開発陣のこだわりは上級グレードに標準装備したアクティブTRC機構に現れていた。アクティブTRCは、不整地やぬかるんだ路面など、デフロック機構が必要となる走行状況をコンピューターが検知すると、エンジン出力や各輪のブレーキを独立制御することで、安定した発進・加速をサポートするメカニズム。ドライバーがマニュアル操作でデフロック操作をしなくても、自動的にそれと同等の効果が得られるのが特徴だった。アクティブTRCには、急な坂道を想定し降坂時の車速を5km/hに自動的に保つDAC制御と、ヒルスタートアシスト機構も組み込まれていた。

 3代目プラドは、トヨタ車ならではのホスタピリティと、抜群の耐久性。そしてランドクルーザー伝統の走破性を兼備した世界有数のマルチユースモデルだった。3代目プラドはデビュー後、エンジンラインアップの改良を中心に幾度かのリファインを受け完成度を高めていく。長く乗るほど、しかもシビアな走行条件でのるほど魅力が際立つ名車だった。