ミニカ 【1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011】

全車に希薄燃焼エンジンを採用した8代目

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


新規格に則して軽自動車シリーズを全面改良

 日本特有のコンパクトカーのカテゴリーである軽自動車は、1998年10月になると衝突安全性の向上を図るため規格改定が実施される。エンジン排気量の660ccは従来と同様ながら、ボディサイズが全長3300×全幅1400×全高2000mmから同3400×1480×2000mmへと拡大されたのだ。また、高速道路における軽自動車の最高速度が80km/hから100km/hに引き上げられることも検討される(2000年10月に実施)。これらの改定は、軽自動車とリッターカークラスの小型車との差をさらに縮めることになり、結果的に維持費がより安い軽自動車の注目度がいっそう高まることとなった。

 こうした状況に対し、ハイトワゴンのトッポ、SUVモデルのパジェロミニ、商用トラック&バンのミニキャブ、そしてベーシックモデルのミニカという軽自動車を取り揃えていた三菱自動車工業は、意欲的に新規格モデルへの移行を推し進める。目指したのは、安全性の向上と環境への優しさの徹底追求。安全性では、独自の衝突安全強化ボディである“RISE”の採用を筆頭に、高めのアイポイントや広いガラスエリアによる優れた視界の確保、SRSエアバッグやブレーキアシスト付ABSの設定などを実施する。一方で環境性能の面では、新リーンバーンMVVエンジンの搭載や使用部材の省資源およびリサイクル性の引き上げなどを行った。

欧州テイストのスタイルでお洒落感覚を訴求

 1998年10月に発売した新規格の8代目ミニカ(H42A/47A/42V/47V型系)に関しては、「気軽に使えるベーシックセダン」を商品のコンセプトに据える。通勤や買い物といった用途に気安く使用できる、経済性と実用性を両立させた新世代のベーシック軽に仕立てたのだ。ボディタイプは3ドア/5ドアハッチバックの2タイプに絞り、いずれもホイールベースは従来比+60mmの2340mmに設定。同時に、ボディサイズと前後トレッドを拡大する。車種展開はセダンと称する乗用車と商用車のバンを用意し、グレードは上位からセダンのPj/Pg/Pf、バンのCf/Ce/Ce(E仕様)をラインアップした。

 パッケージングについては、ホイールベースの延長とともに全高を1510mmと高めに設定し、さらにリアゲートを直角に近い角度とすることで余裕のある居住空間を創出する。スタイリングは曲面のなかに直線的なラインを巧みに融合し、同時に広いガラスエリアを設けることで、小粋で知的なイメージのヨーロピアンスタイルを構築した。室内デザインに関しては、機能性と視認性を重視しながら各部をアレンジ。また、クリーンエアフィルター付エアコンの装備や抗菌処理ステアリングホイール&シフトノブの設定などを実施して快適性をアップさせた。

 搭載エンジンは既存の3G8型系をベースに、MVV(Mitsubishi Vertical Vortex)などを組み込んだ“新リーンバーンMVV”3G83型657cc直列3気筒OHC12Vユニットを採用する。新リーンバーンMVVエンジンは、直噴ガソリンエンジンのGDIで培った縦渦層状吸気などの混合気形成・燃焼制御技術を応用することで、極めてシンプルな構成ながら安定した希薄燃焼を実現。特別な付加装置を必要としないコストパフォーマンスに優れた新世代の軽自動車用エンジンに仕立てた。パワー&トルクは50ps/6500rpm、6.3kg・m/4000rpmを発生。低中速トルクも従来比で最大17%ほど引き上げる。組み合わせるトランスミッションには5速MTと3速ATを用意し、駆動機構には2WD(FF)のほかに軽量コンパクトなHCU式フルタイム4WDを設定した。10・15モード走行燃費は23.0km/L(3ドア・2WD・5速MT車)を達成する。

積極的な改良とラインアップ拡充で魅力を持続

 発売から1週間ほどで約3100台の受注を記録するなど(月販目標は5000台)、好調なスタートを切った8代目ミニカ。開発現場ではベーシック軽の魅力をさらに高めようと、車種ラインアップの増強やメカニズムの改良を鋭意企画していった。
 1999年1月には、ネオレトロ調スタイルを採用した「タウンビー」をリリースする。外装では異形縦型4灯式のヘッドライトやメッキ枠を配したメッシュフロントグリルで個性を強調。内装にはチェック柄のシート表地や木目調のセンターパネルといった専用アイテムを装備した。さらに同年10月には、内外装の一部変更や上級グレードのATの4速化を実施。2000年11月にはマイナーチェンジを行う。
 1999年12月には、ミニカをベースとした新開発の環境対応車を50台限定で自治体・公益企業を対象に発売する。車名は「ピスタチオ」(H44A型)。優しく、淡い緑色で殻のカラカラとした音感を持つ地中海産ナッツ=Pistachioが、環境や自然、クリーンなイメージに適合していることから命名された。ピスタチオの最大のトピックは、GDI-ASGと称する低コストな低燃費技術を採用した点にあった。搭載エンジンは専用チューニングを施した4A31型1094cc直列4気筒DOHC16V・GDIエンジン(74ps/10.2kg・m)。ポイントは新しい制御技術のASG(オートマチック・ストップ&ゴー)。トランスミッションには5速MTをセット。車両停止時のアイドルストップ状態からの再起動は、クラッチペダルを踏み込むだけで行えた。また、インパネにはエコノミー&エコロジー運転中に点灯するGDI ECOランプとASGの作動中に点灯するASGランプを組み込む。10・15モード走行燃費は当時の同クラス最高の30km/Lを達成。ボディ色にはシトロンイエロー&ロアールグリーンのツートンカラーを採用し、車両価格は95万9000円に設定していた。

 その後もミニカは内外装のリファインや緻密な環境対策などを図っていった。しかし残念ながら販売は低調に推移する。軽自動車市場の人気モデルは、ハイトワゴン系に移っていたのだ。最終的に三菱自工は、2007年6月にセダン、2011年6月にバンの販売を中止。8代約49年をもってミニカ史に幕を下ろしたのである。