GLクラス 【2006,2007,2008,2009,2010,2011,2012】

BIGサイズのメルセデスブランド最上級SUV

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新世代ラグジュアリーSUVの企画立案

 1990年代終盤から2000年代初頭にかけての自動車業界は、グローバル規模での自動車メーカーの合従連衡が進展した時代だった。その先陣を切ったのが、世界屈指のプレミアムカーメーカーであるダイムラー・ベンツだ。1998年にアメリカンBIG3の一角であるクライスラーと事業および資本提携の契約を結び、社名をダイムラー・クライスラーに変更する。また、開発体制において両ブランドの基本コンポーネントや使用パーツの共用化を積極的に推し進める方針を打ち出した。

 新しいアライアンスの活用策として、ダイムラー部門はメルセデス・ベンツのラインアップ拡充を進める。その一環として立案したのが、アメリカ市場の売れ筋モデルでありクライスラーの得意分野でもあるフルサイズSUV(スポーツユーティリティビークル)だった。メルセデスは既存モデルにGクラスという大型SUVがあったが、もともとGクラスはオフロード志向が強い設計で造られており、クロスオーバー型のライバル車に比べてオンロードでの快適性が劣っていた。もっと乗用車指向のSUVが求められたのだ。またGクラスの生産は、オーストリアのグラーツに居を構えるシュタイア・ダイムラー・プフ(現マグナ・主シュタイア)社が担当していたため、生産規模の拡大やクライスラー車とのパーツの共用化は困難が予想された。さらに、ダイムラーとしては米国アラバマ州にあるタスカルーサ工場(1995年設立)の活性化を図りたいという事情もあった。市場ニーズや開発・生産体制を考慮したダイムラーは、最終的に新しいフルサイズSUVの製作を決断する。

メカニズム全般に先進技術を積極導入

 コードネームX164として企画されたフルサイズの新ラグジュアリーSUVは、次期型ジープ・グランドチェロキー(WK。2005年モデルとしてデビュー)などと基本的に共通のダイムラー・クライスラーのSUV用新世代プラットフォームをベースに専用セッティングが施される。ホイールベースは3列式シートの設定を意図して3075mmとロング化した。ボディは、全体の約54%に高張力鋼板を使用した軽量高剛性の専用モノコックで構成。同時に、様々な方向からのクラッシュに備える衝撃吸収構造を採用した。

 サスペンションはフロントに鍛造アルミニウム製アッパーアームの位置を高くしたうえでガス封入式モノチューブダンパーと組み合わせるコイルスプリングのストロークを長くしたダブルウィッシュボーン式を、リアにモノチューブダンパーとコイルスプリングを分けて前後方向に配したスタビライザー付の4リンク式をセット。上級仕様には電子制御のエアスプリングとセルフレベリング機構、ADS(アダプティブダンピングシステム)を内蔵したAIRマティックサスペンションを組み込む。制動機構は前後ベンチレーテッドディスクブレーキで、専用セッティングのオフロードABSやBAS(ブレーキアシストシステム)、ヒルスタートアシストなどを装備した。

4種の新世代パワーユニットを搭載

 パワートレーンについては、コモンレール式ディーゼルターボユニットのOM642DE30LA型2987cc・V6DOHC(224ps)、コモンレール式ディーゼルバイターボユニットのOM629DE40LA型3996cc・V8DOHC(306ps)、バリアブルバルブタイミング機構や吸気管内可変フラップ、電子制御式共鳴吸気マニホールドなどを組み込んだガソリンユニットのM273KE46型4663cc・V8DOHC(340ps)、M273KE55型5461cc・V8DOHC(387ps)といった新世代エンジンを搭載する。

 トランスミッションには電子制御7速ATの7G-TRONICを採用し、室内のスイッチ操作で通常走行に適したSモードやマニュアル操作が行えるMモードの選択をできるようにした。また、操作機構としてP/R/N/Dのポジション切り替えとシフトアップ/ダウンの操作をステアリングを握ったままで、しかも指先で簡単かつスムーズに行える新開発のDIRECT SELECTを導入する。駆動機構にはエンジントルクを前50:後50の比率で配分する電子制御センターデフ式フルタイム4WDの4MATICをセット。さらに、ABSやASR(アクセレレーションスキッドコントロール)の機能を統合制御する専用セッティングの4ESP(4エレクトロニックスタビリティプログラム)を装備した。

存在感あふれるスタイリングと豪華なキャビンを融合

 エクステリアに関しては、メルセデスらしいプレミアム感とフルサイズならではの力強さを融合させた独自のSUVルックを創出する。フロントマスクは2本のルーバーを配した大型グリルに楕円型のフォグランプ、バンパー下にビルトインしたアンダーガードプロテクション、メッシュ形状のエアインテークなどによって逞しさに満ちた存在感を表現した。サイドビューはロングホイールベースと豪快なラインを描いて伸びるルーフ形状、豊かにエッジを際立たせた前後フェンダーなどによってダイナミックなシルエットを演出。ボディサイズは全長5100×全幅1955×全高1840mmに設定。また、最低地上高は最大で307mm、アプローチアングルは33度、渡河深度は最大で600mmと、ハードなオフロードドライブに対応するスペックを実現した。

 インテリアは、メルセデス流の高機能性と上質な演出が存分に盛り込まれる。計器やスイッチ類が整然と並んだインパネには、レザーやウッドといった高級素材を豊富に導入。上級仕様のステアリングには、ウッド&レザーのコンビ巻きにアルミスポークをあしらったマルチファンクションタイプを採用した。シート配列は2/3/2名乗車の3列式を採用。ルーフエンドを伸ばすとともにリアピラーおよびゲート部を鋭角的に設定して、3列目の実用的な頭上空間を確保する。また、2列目には6対4分割ダブルホールディング機能を、3列目には左右独立の床下収納機能(上級仕様は電動収納式)を導入。ラゲッジルームは最大で2300L(VDA方式)の積載容量を達成した。

「GLクラス」のネーミングを冠してデビュー

 メルセデスの新世代ラグジュアリーSUVは「GLクラス」の車名を冠して2006年1月開催のNAIAS(北米国際自動車ショー)でワールドプレミアを飾り、間もなく市販に移される。車種展開はOM642DE30LA型エンジン搭載のGL320CDI、OM629DE40LA型エンジン搭載のGL420CDI、M273KE46型エンジン搭載のGL450、M273KE55型エンジン搭載のGL500で構成し、生産は米国のタスカルーサ工場が担当した。

 日本市場には2006年10月に導入を開始。ラインアップされたのは本国仕様のGL500だった。ただし日本仕様のネーミングはエンジン排気量に合わせてGL550を名乗った。

安全・快適性の向上などを狙った改良を実施

 2007年にクライスラーとの提携を解消した新生ダイムラーは、他のメルセデス車と同様、GLクラスの改良を鋭意行っていく。2009年には改良版のOM642DE30LA型2987cc・V6DOHCディーゼルターボエンジンを搭載するGL350 BlueTECやGL350CDI BlueEFFICIENCY(GL320CDIは廃止)、改良版のOM629DE40LA型ディーゼルバイターボエンジンを採用するGL450CDI(GL420CDIは廃止)を新設定。また、内外装の一部仕様変更やアダプティブブレーキライトの追加を実施した。

 2010年になると、内外装のリファインや安全性の向上をメインメニューとした改良を敢行する。エクステリアでは前後バンパーおよびアンダーガードの大型化やLEDタイプのドライビングライト&リアコンビネーションランプの採用などを実施。インテリアではアンビエントライト(間接照明)の設定やオーディオシステムのバージョンアップなどを行う。安全面では、SRSニーエアバッグやインテリジェントライトシステムなどを新たに装備した。

 グローバルな市場でラグジュアリーSUVのベンチマークに据えられたGLクラスは、20万台以上を販売した後の2012年9月に大幅改良(2013年モデル)が行われ、第2世代となるX166系に移行する。さらに、2015年11月に実施したマイナーチェンジを機に車名を「GLS」に刷新。フラッグシップSUVとしてのキャラクターにいっそうの磨きをかけたのである。