館長日記03 SUBARUインプレッサ・スポーツSTIスポーツ 【2021】

気持ちのいいハンドリング性能。これはいいぞ!

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名車文化研究所の館長は、もちろん無類のクルマ好き。
得意なのは「ちょっと古いクルマ」だけではありません。最新モデルも興味シンシン。現在でも自動車専門誌「CAR and DRIVER」の編集委員としてバリバリ取材をこなしています。
その日常を「館長日記」としてご紹介します。今日は玄人好みのSUBARUです。
名車文化研究所・館長 横田宏近/写真 小久保昭彦
STIの職人技が生きる新グレードに試乗

 今回は,最近乗ったクルマの印象を書いてみたいと思います。インプレッサにドライバーを刺激するニューグレードが登場しました。先日のマイナーチェンジでデビューしたSTIスポーツです。STIスポーツは、SUBARU(以下スバル)の走りをモータースポーツ分野で追求してきたSTIのエンジニアが手掛けたスペシャルモデル。“意のままのハンドリング”を目指してチューニングした専用サスペンションの持ち主です。5ドアHBに設定され、駆動方式はFFと4WDの2種。試乗車はFFです。そういえばスバルのFF車に乗るのは久しぶり。スバルといえば4WDですからね。とはいえ、スバルは国産FF車の先駆でもあります。ちなみに車重はFFが1350kg、4WDは1400kg。FFは50kg軽量です。

 STIスポーツのパワートレーンは、ベースモデルと共通です。2ℓの自然吸気・水平対向4気筒(154ps/196Nm)と7速マニュアルモード付きCVTの組み合わせ。このユニットは格別スポーティとはいえませんが、滑らかな回転フィールと十分なパワー、そして良好な燃費で好感を持っています。つまりバランスがいい心臓です。

 足回りは前述のように専用チューン。インプレッサは2019年秋の改良モデルからSTIとの共同開発体制を構築して、既にステアリングの応答性アップを実現しています。スバルは将来的にSTIをメルセデスのAMG、BMWのMのようなイメージに引き上げたいようです。今回のSTIスポーツもその戦略の一貫、足回りを徹底リファインして、理想のハンドリングを目指しています。

絶品の足回り。ナチュラルなハンドリングを堪能

 STIスポーツはフロントに新開発減衰力可変ダンパー(SHOWA製)を採用。リアダンパーも専用セッティングとし、応答性とコントロール性を引き上げています。足回りは、開発者が「反応を1/100秒単位で磨き上げた」と説明する逸品です。
 その素晴らしさは、走り始めてすぐに実感できました。とにかくステアリングの操舵フィールが滑らかなんです。しかも4輪がしっかりと路面を捉えている感触が伝わってきます。交差点を曲がるだけでも、ノーマルとは明らかに違いが分かるほどの完成度でした。インプレッサは、元々ハンドリングに優れたクルマですが、STIスポーツはさらにその上をいっています。走るほどに“意のまま”という開発キーワードが実感できました。

 ハンドリングはシャープやクイックではなく、“ナチュラル”という表現が適切。まさにドライバーのイメージ通りのフットワークを披露します。しかも乗り心地がいいのです。まるで路面の舗装状態が改善されたかのようなフラットで滑らかな乗り味は印象的なほどでした。

この走りはVWゴルフを抜いた! 自信を持って薦めます!

 いままでこのクラスの走りの基準はVWゴルフでした。でもそれは過去の話。STIスポーツの完成度はゴルフをはっきりと上回っています。スポーティさを求めるユーザーにも、長距離ドライブで疲れないクルマを探しているユーザーにもぴったりの選択肢だと思います。

 STIスポーツは、ダークトーンのエクステリアや、機能性を重視したインテリア、高い完成度を誇る安全・運転支援システム(アイサイト)など、走り以外の魅力も満載しています。ちょっと地味な印象はありますが、インプレッサの新たなイメージリーダーといえるでしょう。
 インプレッサは、かつてWRC(世界ラリー選手権)の勇者でしたが、最近はすっかりおとなしくなりました。このSTIスポーツも決して速さを誇るクルマではありません。でも、走りの楽しさ、質の高さは超一級です。ちょっぴり垢抜けない内外装も、かつてのスバルのようで魅力的に映ります。表現は古いですが「違いの分かる人」のためのスポーティカー。最近、こんなにクルマはめっきり少なくなりました、いいクルマです。