IS F 【2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013】

運転の楽しさを追求したプレミアムスポーツセダン

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レクサスのこだわりを凝縮した“F ”

 トヨタの高級車販売チャンネルの「レクサス」(LEXUS)は、2005年8月より日本での営業を開始した。“高級の本質の追求”を基本理念に掲げる高級車ブランドは、完成度の高いラグジュアリーカー群を用意する一方で、“運転する楽しさ”を徹底的に追求したプレミアムスポーツも企画する。いわばBMWのM、メルセデス・ベンツのAMG、アウディのRSに匹敵する高性能モデルを設定したのだ。

 シリーズ名を“F”とした高性能版レクサスは、「基本性能を徹底的に鍛え込むとともに、走りの新技術を備えることにより、LEXUSの新しいパフォーマンスを提案する」と宣言。そして2007年10月にはインテリジェントスポーツセダンのISをベースに専用スポーツアイテムを満載した「IS F」を発表し、12月より販売を開始した。

専用エンジンの2UR-GSEユニットを搭載

 IS Fの動力源には、ヤマハ発動機と共同開発した“2UR-GSE”の型式を付けた4968cc・V8DOHC32VデュアルVVT-iEのD-4Sエンジン(筒内直接噴射とポート噴射を併用)が積み込まれる。主な特徴は、伸び感/レスポンス/サウンド/スポーツ走行への対応の4点。

 伸び感に関しては、高流量吸気ポートの新開発を筆頭に、吸気チタンバルブの採用やカムジャーナルのボアセンター配置、専用デュアルエアインテークシステムおよびデュアルタイプエグゾーストマニホールドの組み込みなどを実施。最高出力の向上および回転数とリニアに上昇するトルク特性を作り込み、伸び感のあるエンジン特性に仕立てる。レスポンスについては流体解析によって吸気系形状の適正化を図ることで、最もコンパクトな容積比を実現。スロットルを閉じたときの吸気管の圧力応答時間を1UR-FSE型比で約30%短縮させた。サウンドに関しては、加速とともに3段階に変化するエグゾーストノートを演出。スポーツ走行への対応については、左右バンクの各ヘッドよりオイルを強制的に回収するスカベンジポンプを新設した。肝心のパワー&トルクは、423ps/51.5kg・mを達成する。また、環境性能については平成17年基準排出ガス75%低減レベルや4l 車並の燃費性能を実現した。

トランスミッションは専用セッティングの8速AT

 トランスミッションには、新開発の8-Speed Sport Direct Shiftを採用する。滑らかな変速のDポジションに加え、Mポジションにおける発進時の1速はトルクコンバータを介してスムースかつ力強い加速を確保。2速から8速はエンジンとトランスミッションを直結状態とすることでダイレクトなレスポンスを実現した。また、シフトダウン時のエンジン回転数を同期させるブリッピングコントロールも導入。一方で懸架機構は、IS用をベースにレース用データローガによる解析と動的テストによる徹底したチューニングによって最高レベルの路面追従性を実現。シューズには専用19インチ鍛造アルミホイールと前225/40R19 89Y後255/35R19 92Yサイズの専用タイヤを組み合わせた。

 内外装については、スポーツマインドを存分に刺激するアレンジを施す。エクステリアではエンジンフードやフロントのグリルおよびフェンダー、前後バンパー、サイドマッドガード、ボディフルアンダーカバー、リアスポイラーといったパーツを専用デザイン。走りのパフォーマンスと機能をダイナミックかつシンプルに表現する。インテリアはハイコントラストをテーマとし、白と黒を基調にアクセントブルーを絶妙に配置。センターコンソールとドアアームレストには専用加飾を加え、300km/h表示の速度計を採用する。また、シートにはホールド性を高めた専用4座スポーツタイプを装備した。

年次改良によってスポーツ性を向上

 LEXUSブランドのプレミアムスポーツセダンの中心に据えられたIS Fは、年次改良で着実な進化を図っていく。まず2008年9月のマイナーチェンジでは、センタークラスターを意匠変更するとともに、加飾部をブラックメタリックに変更。2009年3月には、内装色をテラコッタ&ブラックのコンビネーションで仕立てるなどした50台限定の特別仕様車「Blazing Terracotta Interior」を発売する。同年8月には一部改良を施し、トルセンLSDの標準装備化やステアリングホイールの意匠変更などを敢行した。

 IS Fの進化は、2010年代に入っても精力的に続けられる。2010年8月には、より軽快な走りを目指したサスセッティングやメーターデザインの刷新、ステアリングへのSportモードスイッチの設定を実施。2011年8月には、操縦性および走行安定性を高める目的で新ダンパーの採用およびコイルスプリングチューニングの最適化などを行う。2013年5月にはベース車のISが全面改良するが、IS Fだけは従来のまま継続して販売され、同年9月にはカーボン製リアスポイラーの新採用やフロントフォグランプのLED化、全席ヘッドレストへのFロゴのエンボス加工などの一部改良を実施した。そしてデビューから約6年半が経過した2014年5月、ついに販売を終了。2代目ISをベースとするIS Fが登場しなかったことから、1代限りのモデルとなったのである。