スカイラインGTS 【1993,1994,1995,1996,1997,1998】

サイズ拡大で欠点を潰した熟成の9代目

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走りに振りすぎた8代目の反省

 1993年8月に登場した9代目スカイラインは、いわば“反省のスカイライン”だった。先代で本来のスポーツモデルへの回帰を目指した8代目は、卓越した走りで高い評価を受けた。しかしボディサイズのシェイプアップがもたらしたコンパクト設計やタイトな室内空間が、歴代スカイラインを乗り継いできたファンには不評だった。ライバルのトヨタのマークIIなどと比較すると車格的に下に見え、室内も明らかに狭かったからだ。

 販売成績にもその影響が見られたのだ。別格のGT-Rこそ予想を大幅に上回る販売台数を記録したが、主役のGTSシリーズは、7代目の販売台数を上回ることができなかった。商業的には8代目は失敗作だったのである。

ボディサイズの大幅拡大が生みだしたゆとり

 9代目は、8代目の優れた走りを堅持しながら、上級スポーティカーとしてのキャラクターを磨き込み、室内空間を拡大する。具体的には、ボディサイズを大幅に大型化した。全長は140mm(クーペは110mm)長くなり、ホイールベースは105mm延長。全幅、全高もそれぞれ25mm、20mm(クーペは10mm)サイズアップしたのだ。

 スカイラインは堂々の3ナンバーサイズに進化したのである。ボディのサイズアップは主に後席スペースの拡大に充てられた。9代目スカイラインの室内には、もはやタイトな印象はなかった。マークIIに匹敵する豊かな室内スペースは9代目の新しさを実感させるポイントだった。

 ボディサイズ拡大で増大した車重に対応する意味もあって、エンジンラインアップも見直しが図られた。直列6気筒ユニットを積む点では従来と同様だが、主役が排気量2498ccのRB25DE型とそのターボ版のRB25DET型に変更されたのだ。RB25DE型のパワースペックは190ps/6400rpm(タイプSは200ps/6400rpm)、23.5kg・m/4800rpm。RB25DET型は250ps/6400rpm(AT245ps/6400rpm)、30.0kg・m/4800rpm(AT28.0kg・m/4800rpm)でそれぞれクラス最強レベルを誇った。従来からの130ps/5600rpm、17.5kg・m/4400rpmを発揮する1998ccのRB20E型もベーシックモデルとして残ったが、主役はあくまで2498ccユニットだった。ボディサイズが3ナンバーサイズに拡大していたので、もはや2リッターにこだわる必要がなかったのである。ちなみにトランスミッションはオートマチックが4速と5速の2種で、マニュアルミッションは5速のみ。5速オートマチックはRB25DE型ユニットに組み合わされた。

9代目が実現した“大人のグランドツーリング”

 走りは素晴らしかった。ホイールベースは大幅に延長されたが、先代で刷新された4輪マルチリンク式のサスペンション等のシャシー回りはそのまま継承。一部グレードに設定された4WS機構のスーパーHICASには横G応動制御をプラスしさらにハイレベルなフットワークを実現していた。ポテンシャルを高めたパワーユニットもあって、9代目の走りはグランドツーリングカーとして一段と成熟していた。急峻なワインディングロードでこそ拡大したボディの影響で切れ味がマイルドになっていたが、中・高速コーナーが連続するオープンロードや、高速道路のスタビリティには目を瞠るものがあった。9代目は大人のスカイラインとして大きく進化していた。

 9代目はクーペとセダンでイメージを変えていたのも特徴だった。ボディ一体型のリアスポイラーを組み込んだクーペは従来以上にスポーティな印象を強調。リアエンドはボディ色を生かしたシンプルな仕上げを採用する。一方のセダンはサッシュレス式ドアから骨太な印象のプレス式ドアとし、リアエンドも全面ガーニッシュを配したエレガントな印象としたのだ。走りを感じさせるクーペに対して、ジェントルで落ち着いたセダン。9代目スカイラインはボディタイプで個性を明確にすることで、多様なユーザーニーズに応える戦略だった。

 先代の不満ポイントを丁寧にリファインした9代目スカイラインは完成度の高いモデルと言えた。しかし多くのユーザーニーズに応えることはマイルド化も意味した。8代目が持っていた強烈な走りへの意思はもはや感じられなかった。高い実力の持ち主だったが、そのポテンシャルが実感しにくいクルマでもあったのだ。スカイラインにとって再び迷いの時代のはじまりだった。

独自の路線を歩み始めたサラブレッドのGT-R

 8代目のR32型で復活を遂げたGT-Rは、ベースになったGTSシリーズとは別の進化を遂げる。GTSシリーズが1993年8月に移行しR33型に進化した後もモデルチェンジせずR32型を継続生産。1994年2月にはグループAレースの4連覇を記念したVスペックIIをラインアップに加える。VスペックIIは45偏平の17inタイヤ&BBSホイールと、ブレンボ製ブレーキを装着したスペシャル版だった。

 GT-RがR33型に切り替わったのは1995年1月。東京オートサロンをデビューの場に選び、大幅に向上したボディ剛性とブレーキ性能をアピールする。RB26DETT型(280ps)とアテーサE-TSシステムという基本メカニズムはそのままながら、熟成の場に選んだドイツ・ニュルブルクリンクサーキットのラップタイムは7分59秒をマーク。R33型は先代より21秒も速くなったことを表現するため、当時の広告では“マイナス21秒ロマン”と大きくフィーチャーした。