キャラバン 【2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011,2012】

“新世紀ビジネススタイル”を標榜した第4世代

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21世紀にふさわしい商用ワンボックスカーの開発

 1999年にルノーとのグローバルな提携関係を構築した日産自動車。同社は「リバイバルプラン」と呼ぶ改革案に基づきドラスティックな組織改革やコストカット、系列関係の打ち切り、販売網の整理などを矢継ぎ早に実施していった。その最中にあって開発現場では、新型モデルの企画作りに邁進していた。

 日産自動車のキャブオーバー型ワンボックスカーの中心ブランド、「キャラバン」の次期型については、開発コンセプトに「ユーザーが“儲け”を確信し、運転者が“使いやすさ”を実感できる“安心”の先進1BOXビジネスパートナー」と据える。具体的には、ワークユースにおける経済性および機能性の充実はもちろんのこと、ドライバーの快適性と居住性を高め、高い衝突安全性を備えた21世紀にふさわしいキャブオーバーモデルに仕立てることを決定した。

“新世紀ビジネススタイル”を謳って市場デビュー

 第4世代となる新型キャラバンはE25の型式をつけて2001年4月に発表、翌5月に発売される。キャッチフレーズは“新世紀ビジネススタイル”。車種展開はロングボディ・標準ルーフの低床/平床のバン、スーパーロングボディ・標準ルーフの低床およびハイルーフの低床/平床のバン、スーパーロングボディ・ハイルーフのマイクロバス(12人乗り)で基本ラインを構成した。

 4代目キャラバンの基本骨格には、車体前部にクラッシャブルゾーンを設けたうえで、剛性と耐久性を向上させた新設計のモノコックボディを採用する。ボディタイプはホイールベース2415mmのロングボディ・標準ルーフと同2715mmのスーパーロングボディ・標準ルーフ/ハイルーフを用意。ロングボディは全長を4ナンバー規格に収まる4690㎜(スーパーロングボディは4990mm)に抑え、最小回転半径は小型乗用車並みの4.9m(同5.4m)とした。また、全モデルでルーフやサイドに継ぎ目のない車体構造を採用して質感を高め、同時に曲げおよびねじり剛性のアップや防錆性能の向上を図る。頻繁に開け閉めするドアやリアゲートの耐久性も引き上げた。

懸架機構はフロントサスに操縦安定性と路面追従性の向上を図ったダブルウィッシュボーン式を、リアサスに高荷重と乗り心地を高度にバランスさせたリーフリジッド式をセットする。操舵機構にはエンジン回転数感応式パワーステアリングを組み込んだラック&ピニオン式を採用。制動機構は前ベンチレーテッドディスク式、後リーディングトレーリング式で構成し、ABSを標準またはオプションで設定した。

 前席下に搭載するエンジンは、直噴化や噴射系の改良を図った新開発ZD30DD型2953cc直列4気筒DOHC16Vディーゼル(MT105ps/21.3kg・m、AT105ps/23.0kg・m)と軽量ピストンを採用した改良版のKA24DE型2388cc直列4気筒DOHC16V(140ps/20.6kg・m)/KA20DE型1998cc直列4気筒DOHC16V(120ps/17.4kg・m)という2機種のガソリンユニットを採用する。トランスミッションは、フロア式の5速MTとコラム式のフルレンジ電子制御4速AT(E-AT)の選択が可能。駆動システムにはリア駆動の2WDとパートタイム4WDを設定した。

デザインは斬新さと高い質感を追求

 車両デザインは、斬新で質感の高いエクステリアを構築する。具体的には、安心感と力強さを表現したノーズ部やサイドキック形状で仕立てたバンパーサイド、スクエアで積載性の高さを感じさせるフォルム、すっきりとした面でアレンジしたリアセクションなどでスタイリングを構成。ドアタイプは4ドアのほかに5ドアをラインアップした。

 インテリアは、使いやすいオフィスのような空間を目指して開発。センタークラスターに操作機能を集中配置したインパネや大きな文字のユニバーサルデザインを取り入れたメーター、上面がテーブル形状のマルチセンターコンソール、豊富に用意した収納スペース、長時間座っても疲れにくい前席エルゴノミックシートなどで快適かつ機能的な居住空間を創出する。また、安全装備として運転席SRSエアバッグを標準またはオプションで、助手席SRSエアバッグをオプションで用意した。乗車定員は3人乗り、3/6人乗り、3/6/8人乗り、3/6/9人乗り、2人乗り、2/5人乗り、2/5/7人乗り、3/3/3/3人の12人乗り(マイクロバス)を設定。肝心の荷室は低床と平床を用意し、荷室長はロングボディで2800mm、スーパーロングボディで3100mmを確保していた。

乗用モデルの「シルクロード」が約8年ぶりに復活

 スタイリッシュで使いやすく、しかも安全性が大きく向上した4代目キャラバンは、デビュー後も着実に車種ラインアップの増強や緻密な改良などを図っていく。まず2001年11月には、市場からの要望が強かった「10人乗りコーチ」を設定。搭載エンジンには良-低排出ガス車(G-LEV)認定のKA24DEガソリンユニットを採用する。また、バンには優-低排出ガス車(E-LEV)認定のKA20DEユニットを用意。さらに、関連会社のオーテックジャパンが手がける10人乗りコーチの特装車、「ジャンボタクシー」と「幼児通園専用車」をリリースした。
 2002年9月になると、2WDのATモデルにZD30DDTi型2953cc直列4気筒DOHC16V直噴ディーゼルインタークーラーターボエンジン(121ps/27.0kg・m)搭載車を新設定する。同エンジンの4WDはオーテックジャパン扱いで用意。合わせて、運転席SRSエアバッグの全車標準化など安全装備の充実化も実施した。

 2003年5月にはマイナーチェンジを敢行し、内外装デザインの一部変更や装備類の見直し、ZD30DDTiエンジンへの5速MTの追加、そして乗用モデルの8人乗りコーチ「シルクロード」の設定などを行う。約8年ぶりに復活したレジャー志向のシルクロードは、汚れや水濡れを簡単に拭き取れるカブロンシートや撥水ラゲッジフロア、利便性の高いリモートコントロールエントリーシステムにオートクロージャー、多彩なアレンジが可能な左右独立分割スライド+脱着対座機能付セカンドシートおよびチップアップ機能付サードシートなどを設定。搭載エンジンにはKA24DEユニットを採用し、サスペンションには専用セッティングを施していた。さらに同年10月になると、オーテックジャパン扱いのCNG(圧縮天然ガス)車が登場する。動力源はKA20DEエンジンをベースとし、燃料供給装置にはマルポイントインジェクション方式を採用。ガス燃料タンクは小径化したうえで、すべて床下にレイアウトした。

 2004年8月には一部改良を行い、ディーゼルエンジンをZD30DDTi型ユニットに1本化するとともに出力を130psヘとアップ。同時に新短期規制にも適合させる。また、上級グレードのバンGXは内外装デザインを刷新し、5ドア車を追加設定した。

2000年代後半に入っても精力的に改良を実施

 歴代モデルと同様、日産製キャブオーバー型ワンボックスカーの定番モデルに成長した4代目キャラバンは、2000年代後半になっても鋭意リファインを行っていく。2005年12月にはマイナーチェンジを実施し、内外装のデザイン変更や装備類のバージョンアップで魅力度を向上。2007年8月には一部改良を敢行し、ガソリンエンジンはVTC(バリアブルタイミングコントロール)などを組み込んだQR25DE型2488cc直列4気筒DOHC16V(147ps/21.7kg・m)/QR20DE型1998cc直列4気筒DOHC16V(130ps/18.1kg・m)に換装。同時に、ガソリン車のATは5速化(5E-ATx)される。ディーゼルエンジンのZD30DDTiはコモンレール化およびDPFの追加を実施。また、インパネの意匠変更やスーパーDXグレードの設定なども行った。

 2009年1月には、グレード体系の見直し(特別仕様車として2007年11月に発売した「スーパーGX」の標準グレード化)や外装のデザイン変更、安全装備の拡充などをメニューとした仕様向上を実施する。さらに、同年12月には特別仕様車の「DX V-Limited」を発表(発売は2010年1月)した。

約11年に渡るロングセラーモデルに成長

 2010年8月にも仕様向上を行い、DXグレードに組み込むセカンドシートの機構の見直し(6尺合板が積載可能)やセンターパネルの質感向上、QR20DEエンジン搭載車の環境対応車普及促進税制への適合などを実施する。そして同年12月には、ポスト新長期規制に対応したZD30DDTiディーゼルエンジン車の設定や特別仕様車の「DX V Limited Ⅱ」の発売などを敢行した。
 2012年6月になると、第5世代となるキャラバンが「NV350キャラバン」(E26型)の車名で市場デビューを果たす。これに伴い、4代目キャラバンは販売を終了。約11年に渡る車歴に幕を閉じたのである。

 ちなみに オーテックジャパンはライダーなどのほかにも、キャラバンをベースにした魅力的な特装車を設定していた。その代表格が、「“ちょっとドライブ”から“本格オートキャンプ”まで」をコンセプトに据えて2002年2月にリリースしたキャンパー仕様のキャラバン「フィールドベースX」だ。ベース車はスーパーロングボディ・ハイルーフで、ZD30DDエンジン搭載の2WD/4WDとKA24DEエンジン搭載の2WDを用意。さらに、同年9月にはZD30DDTiエンジン搭載の2WD/4WDを追加する。専用装備としては、ベッド兼用セカンドリクライニングシート(対座機構付き)/ベッド兼用サードシート/折りたたみ式ベッド/ルームランプ(後席天井部大型、バックドア上方部)/木目調リアフロア/カーテン(フロント間仕切、サイド、リア)/脱着式テーブル/ギャレー(シンク、給・排水タンク20l、カセットコンロ)/調理台などを採用。さらに、専用オプションとしてサイドオーニング/プライバシーテント/脱着式網戸(スライドサイドウィンドウ)/フロアカーペット/100V外部電源入力コンセント・車内AC100Vコンセント&DC12Vコンバータ/冷・温蔵庫(13l)/後席蛍光灯・高級タイプ/三角ジャッキ/消火器を設定していた。