180SX 【1989】

DOHCターボ搭載ハッチバッククーペ

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一世を風靡したS13型シルビアから
遅れること10カ月。DOHCターボのみという
スポーティなFRスポーツが登場した。
リトラクタブルヘッドライトを持つ180SX(RS13型)。
従来のS110型およびS12型に設定した
ハッチバック仕様の後継モデルだった。
市場はスポーティモデルに熱い視線

 1980年代後半、オイル・ショックに続いて起こった省エネルギーや安全対策に、世界中の自動車メーカーは忙殺されることになる。それとは別に、クルマは個人的な移動空間として、特に若い人たちを中心にスポーティモデルが人気を集めていた。日本車の海外ラリーやサーキットレースでの活躍がそれに拍車を掛けることになった。オープンモデルが実用上の制約を受ける日本では、2ドアクーペやハッチバックがパーソナルカーとしてもてはやされていたのである。

そのころ、市場第二位のメーカーであった日産は、トヨタのセリカ、ホンダのプレリュードなどに対抗するモデルとして、1989年3月に180SXと呼ばれるスポーティクーペを売り出した。180SXはシルビアの派生モデルで、スカイラインほど存在は重くなく、誰もが気軽にスポーティドライブを楽しめ、しかも実用性も兼ね備えると言う欲張った車種であった。価格は上級車種で197万円と、このジャンルのモデルとしてはお買い得なものとなっていた。

パワーユニットはターボ仕様のみ

 スタイルは、バランスに優れた2ドアハッチバックで、グリルレスのフロントエンドには、当時流行していた電動モーターによるリトラクタブルヘッドライトを備えていた。シャシーやサスペンションなどは、2ドアスペシャルティとして人気の高かったシルビアと共用する。エンジンも基本的にシルビアのもので、搭載されたエンジンは排気量1809ccの直列4気筒DOHCにインタークーラー付きターボチャージャーを組み合わせ、175ps/6400rpmの出力と23.0kg-m/4000rpmのトルクを得る。車重は1170kgと多少重かったが、それでも本格的なスポーツカーに匹敵する高性能を発揮した。

クーペスタイルのため、後部座席のスペースはミニマムで、2+2ではあったが、大人は実質的には乗れなかった。モデルバリエーションは装備の違いにより、標準型のタイプⅠと豪華装備を持ったタイプⅡの2車種があった。注目すべきは、ビスカス・カップリングを用いたLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)を全車種標準で装備したことだ。

FRレイアウトが人気維持の理由

 当時すでに量産車の駆動方式はフロントエンジン、フロントドライブが主流となっており、スポーティカーといえども、走りの性能よりも居住性や快適性を重視する傾向が強まっていたのだが、シルビアやそれをベースとした180SXは、頑なにフロントエンジン、リアドライブ方式を堅持していた。無論、スポーティな走りの魅力はあったのだろうが、ローレルやスカイラインといった他の後輪駆動モデルとフロアユニットなどを共用していたから、手軽にレイアウトを変更できないという事情もあったのだ。

少なくとも、この時代にフロントドライブの新しいフロアユニットへの切り替えが遅れたことで、日産のその後の不振のきっかけとなったのは間違いない。しかし、数少ない本格的な後輪駆動車として、今もって根強いファンが少なからず存在している。言うなれば、瓢箪から駒と言えるクルマであった。

COLUMN
日産スポーティカーのロングセラーに
1991年1月、シルビアとともに180SXはマイナーチェンジを受ける。注目は、プリメーラにも採用のSR系ユニットの採用だった。排気量は2リッター(1998cc)となり、180SXでは、ターボ版のSR20DETユニットを搭載。CA18DETユニットと比較して30psアップの205psを実現した。1993年にシルビアが3ナンバーボディのS14型に移行した後も、180SXはRS13型のまま生産。 「DOHCターボ」、「5ナンバーボディ」、「FRレイアウト」という組み合わせは、クルマ好きを魅了し続ける。結果、180SXは1998年までの9年に渡り生産された。なお、排気量を2リッターに拡大したのちも、車名は180SXのままであった。