フェアレディZ 【1983,1984,1985,1986,1987,1988,1989】

欧州製スポーツカーと肩を並べた3代目

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ターゲットは欧州製スポーツカー

 2度のオイルショックと厳しい排出ガス規制を乗り切った日産自動車は、1980年代に入るとクルマのハイテク化を一気に推し進めるようになる。とくに同社のフラッグシップスポーツカーであり、重要な輸出モデルでもあるフェアレディZ、通称Z-CAR(ズイーカー)の開発に関しては、先進技術を目一杯に盛り込む決断を下した。
 3代目を企画するに当たり、開発陣は欧州の高性能スポーツカーをベンチマークに据える。具体的には、ボディやパワートレイン、シャシー、さらに仕様・装備といった項目で、欧州製スポーツを凌駕する性能を目指した。
 ボディに関してはロングノーズ+ファストデッキの伝統的なデザインを踏襲したうえで、エアロダイナミクスの向上を徹底的に追求する。世界初のパラレルライジングヘッドライトの装着、バンパーおよびエアダムスカート一体のフロントフェイシアの採用、ボディ全般のフラッシュサーフェス化、後端のダックテール化などを実施し、結果としてCd値(空気抵抗係数)は0.31と、当時の日本車の最高数値を実現した。
 パワートレインはフェアレディZとしては初めてV型レイアウトの6気筒エンジンを搭載し、さらに先進のターボチャージャー機構を組み合わせる。絞り出す最高出力は3L仕様で230ps。Cd値と同様、当時の日本車の最高数値を達成した。ちなみにターボチャージャー付きV6ユニットの量産化は、当時の日本車では初の試みだった。

 シャシーについてはS130型系のフロント・マクファーソンストラット/リア・セミトレーリングアームの形式を基本的に踏襲しながら、全面的な設計変更がなされる。最大の注目は世界初の機構となる3ウェイアジャスタブルショックアブソーバーの装着で、これを組み込んだ仕様を“スーパーキャパシティサスペンション”と名づけた。さらに制動性能も重視し、大容量の8インチタンデムブレーキブースターを採用する。

 装備面ではメーター脇に配したクラスタースイッチや雨滴感知式オートワイパー、世界初のマイコン制御上下独立自動調整オートエアコン、高級オーディオといった新機構が訴求ポイントで、新世代スポーツカーにふさわしい快適性と先進イメージを打ち出す。室内空間自体も広がり、さらにASCD(自動速度制御装置)などの採用で安全性も向上させた。

刺激的なキャッチコピーで登場

 3代目となるZ31型系フェアレディZは、1983年9月に市場デビューを果たす。ボディ形状は先代のS130型系と同様に2シーターと2by2を用意。エンジンはVG30ET型2960cc・V6OHCターボとVG20ET型1998cc・V6OHCターボを設定した。
 新しいフェアレディZの性能に関して、日産は相当に自信を持っていたのだろう。キャッチコピーには「較べることの無意味さを教えてあげよう」という刺激的な表現を掲げる。事実、VG30ET型エンジンの230ps/34.0kg・mのスペックは最大のライバルであるトヨタ・セリカXXの5M-GEU型2759cc・直6DOHCの170ps/24.0kg・mを圧倒し、実際の最高速や加速性能も群を抜いていた。さらに欧州仕様ではポルシェ911などの最高速に迫り、自動車マスコミはこぞって「日本車で初めて“250km/hクラブ”へ仲間入り」と囃し立てた。

矢継ぎ早の改良で鮮度をキープ

 大きな注目を集めてデビューしたZ31型系フェアレディZは、その新鮮味を失わないように矢継ぎ早に新グレードを追加していく。1984年8月には先代で好評だったTバールーフ仕様を設定。当時のプレスリリースによると、「新しいTバールーフは、標準ルーフと同等の剛性を確保した」と豪語する。1985年10月には「走りが大人しすぎる」と言われた2Lモデルの評判を覆すために、RB20DET型1998cc直6DOHC24V+セラミックターボを積む200ZRグレードを追加した。

 1986年10月になると、Z31型系は大掛かりなマイナーチェンジを受ける。最大のトピックはスタイリングの変更で、日産の米国デザインセンターであるNDIが手掛けた丸みを帯びたフォルムは、“エアログラマラスフォルム”と称された。さらに、VG30DE型2960cc・V6DOHC24Vエンジンを搭載する300ZRグレードも設定。同時にリアブレーキもベンチレーテッド化され、制動性能を引き上げた。
 最大のマーケットである北米市場を意識しながら進化を続けたZ31型系フェアレディZは、1989年7月になるとフルモデルチェンジを実施して4代目のZ32型系へと移行する。その4代目は、Z31型系に輪をかけて高性能を謳うモデルに進化するのであった。