シビック・シャトル 【1983,1984,1985,1986,1987】

優れたパッケージングを持つ革新ワゴン

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シティのコンセプトを生かした新提案

 1983年9月、三代目となる「ホンダ・シビック」、通称「ワンダー シビック」がデビューしたとき、そのシャシーとパワートレーンを使った別のモデルも発表された。5ドアのシビック・シャトルである。

 シビック・シャトルは、1981年にデビューして人気を集めたトールボーイスタイルのシティのコンセプトをひと回り大きなボディとしたワゴンといえる。低く、長く、幅広くというデザインが優先されるあまりに、場合によっては実際に人が乗るには無理があるものさえ珍しくなかった小型車が多い中では、キャビン部分をひと際背高ノッポとしたシティのスタイリングは、斬新なものだった。それをさらに明確なものとしたのが、シビック・シャトルだったのである。今日大流行しているRVモデルの先取りだった。

高い実用性を備えた先進ワゴン

 シャシーやエンジンなど基本的なコンポーネンツは通常のシビックと共通するもので、全長、全幅、ホイールベースなどはほぼ共通しているが、全高だけは1480mmとなっており、3ドアハッチバックよりも150mmほど高くなっている。この伸びた分が室内スペースに反映され、シャトルの室内空間は2.0リッタークラスのセダンに匹敵するほど広かった。とくに後部座席のスペースはこのクラスでは考えられない広さになっている。後席は座面のクッションを前方に持ち上げ、シートバックを畳み込むことができる。これで正統ワゴンを凌ぐラゲッジスペースが出現するわけだ。

3タイプのパワーユニット搭載

 室内の広さと実用性の高さと引き換えに、シャトルのスタイリングはお世辞にもスタイリッシュとは言い難い。ホンダの小型車設計のポリシーであったMM思想(マンマキシマム・メカミニマム=人はゆったり、メカニズムは最小に)という考え方を、そのままストレートに造形化したようなものだ。

 エンジンは排気量の違いで1342cc、1488ccの2種。キャブレーションの違いで1342ccはキャブレター仕様のみ(出力80ps/6000rpm、トルク11.3kg-m/3500rpm)だが、1488ccにはキャブレター仕様(90ps/6000rpm、12.8kg-m/3500rpm)、および電子制御燃料噴射装置付き(100ps/5800rpm、13.2kg-m/4000rpm)がある。いずれも水冷直列4気筒SOHC12バルブでアルミシリンダーブロックを採用する。

ホンダ固定ファンの獲得に貢献

 シビック・シャトルは、長距離を移動するのに最適なファミリーワゴンだった。時代は核家族化が進み、都会に住む若い夫婦が子供連れで故郷に帰るなどというシチュエーションには好都合だった。自分のクルマとして、3ドアのシビックを購入した若者がやがて結婚し、子供ができたのだが、シビックのあの剽悍な走りが忘れられない……。そんなシビックのファンは当時結構いたものである。ホンダも、ようやく固定ファンを掴みつつあった。シビック・シャトルはそんな時代の傑作車だった。