シルビア 【1988,1989,1990,1991,1992,1993】

美しさと走りで魅了した傑作スペシャルティ

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曲面を多用したスマートな造形を持つ5代目

 1988年5月にモデルチェンジした5代目シルビアのキャッチコピーは“ART FORCE”。エレガントストリームラインを名乗る流麗なスタイリングに相応しいメッセージだった。カタログでは「アートで自分を語れるクルマ。」と表現し、そのスタイリッシュぶりを語りかけた。

 シルビアはFRレイアウトならではのハンドリングや、パワフルなDOHCエンジンなど、メカニズム面でも多くのセールスポイントを持っていた。しかし、スペシャルティークーペの本懐である美しさが最大の魅力だった。デザイナーをはじめ開発陣が目指したのは“自分自身が欲しくなるクルマ”。フォルムだけでなくディテールにまで徹底的にこだわったのは、自分の欲しくなるクルマを目指したからだという。シルビアはライバルのプレリュードやセリカを凌ぎ、瞬く間にクラスリーダーカーに成長する。その原動力は、美しいスタイリングにあった。

自然吸気とターボの2種から選べたDOHC心臓

 搭載されるエンジンは2種。全車が水冷直列4気筒DOHC16バルブで、インタークーラー付ターボチャージャー仕様と自然吸気仕様が選べた。排気量は1809ccで自然吸気仕様は圧縮比9.5と電子制御燃料噴射装置により135ps/6400rpmを発揮。ターボチャージャー仕様は圧縮比8.5と電子制御燃料噴射装置により、175ps/6400rpmの最高出力を得ていた。

 トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックで、シフトは当然ながら全モデルフロアシフトとなる。サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイル・スプリング、後ろがマルチリンク/コイル・スプリングの組み合わせ。ブレーキは4輪ディスクで、前はベンチレーテッド型となり、サーボ機構を備える。タイヤサイズは185/70R14が標準だがターボチャージャー装備モデルには性能向上に備えて195/60R15サイズのタイヤが装備された。

 シルビアは新世代FRに相応しいリアサスペンションを採用していた。上部にダブルアッパーリンク、下部にスラント配置のAアームとラテラルリンクを配置したマルチリンク・システムである。さまざまな走行条件&路面状況に対応し、優れたロードホールディングを約束するサスペンションだ。基本的に6気筒エンジンを積む上級モデルと共通の贅沢な仕様で、前輪で操舵し、後輪で駆動するFRのメリットを存分に生かす足回りだった。しかもオプションでコーナリング中、ステアリングの切れ角に応じて後輪も同じ方向(同位相)に操舵。最大1度まで後輪に変位角を与える日産の4WSであるHICAS-IIを設定していた。HICAS-IIは、一段とシャープなハンドリングを求めるスポーツ派に応えた。

スマートな室内。シートはモノフォルム形状

 インテリアは、電子装置満載が当たり前であった当時としては比較的シンプルにまとめられていた。大型のクラスターに収められた計器は、大径の速度計とエンジン回転計を中心に、スポーティーカーとして必要最小限のものに抑えられていた。ダッシュパネルには角張った部分はどこにもなく、見た目にも柔らかい印象を持つ。ステアリングは変形の3スポーク型で、メーター類の視認性を妨げることはない。

 シートは独特だった。ヘッドレストを一体化し、表面を一枚のマテリアルで包み込んだモノフォルム形状。縫い目や分割された部分はなく、乗員の体を全体ですっぽりと包みこむ形となっていた。前席に比べると後部座席はかなり狭い。特にレッグスペースは最小限だった。とはいえなかなか実用的なことも確かで、大人でもちょっと我慢すれば充分に乗れた。子供や手回り品の置き場所と割り切ると使いやすかった。

バリューフォーマネーな価格設定。人気の中心はQ’s

 シルビアのグレードは3車種で、上位からK’s、Q’s、J’sとなる。グレード名はトランプの絵札に由来する。最上位のK’sは、最強のターボチャージャー付きCA18DETエンジンを搭載しVCU(ビスカスカップリング)を使ったLSD(リミテッドスリップデファレンシャル)などを装備して214万円。速度などをフロントウインドウ内側に透写表示するオーバーヘッド・ディスプレイ、電子制御アクティブ・スピーカーはオプションだった。

 販売の主力となったのは、電動可倒式ドアミラー、パワーウインドウ、セントラル・ドアロックなどを備えるQ’sで176万5千円。最もベーシックなJ’sが166万円と十分安価な設定だった。
 美しいスタイリングと素直なハンドリングを持つFRスペシャルティとして、シルビアは特に走りを楽しむファンからは歓迎され、一般道はもとよりショートサーキットでも大活躍する。名車の1台である。

爽快なフルオープンモデルを設定

 5代目シルビアのボディーバリエーションには、4人乗りのコンバーチブルが設定されていた。日産の子会社であるオーテックジャパンが開発を担当、電動式のソフトトップはアメリカのASC製を使う。トップを収納するスペースのため、後部座席は狭くなるが、当時のコンバーチブルとしては珍しく、ロールオーバーバーがなく、スッキリとしたスタイルとなっていた。車重は1250kg。重量増加による性能低下に対処するため、ターボチャージャー付きエンジンが装備されていた。