2017 GT-R 【2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017,2018】

究極のドライビングプレジャーを追求。“深化”を続ける赤バッジ

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日産自動車は2007年に単独車種に移行した新世代の
“赤バッジ”モデル、R35型「GT-R」を市場に放つ。
専用のプラットフォームにVR38DETTエンジン+6速DCT、
独立型トランスアクスル4WDといった最新メカを豊富に
盛り込んだR35は世界屈指のスーパーパフォーマンスを実現。
さらにデビュー後も進化と深化の道程を歩み続け、
2017年モデルではR35発売以来最大の規模となる
エクステリア&インテリアのデザイン変更を実施した。
専用開発のVR38DETTエンジンを採用したR35型GT-R

 GT-R(R35型)は、2007年10月開催の第40回東京モーターショーで初公開され、同年12月より販売を開始した日産のフラッグシップスポーツモデルである。

心臓部には、モータースポーツ活動で培ったノウハウを存分に活かした新開発のVR38DETT型3799cc・V6DOHC24Vツインターボエンジン(480ps/60.0kg・m)が積み込まれる。シリンダーブロックはアルミ製で、剛性を高めるためにクローズドデッキを導入。また、プラズマ溶射で低炭素鋼をコーティングした“プラズマコーティングボア”によるシリンダーライナーレス構造を採用し、熱効率の向上と軽量化を同時に達成した。IHIと共同で開発したツインターボチャージャーは、タービンハウジングとエキゾーストマニホールドを一体化した超耐熱鋼インテグレーテッドシステムを採り入れる。走行条件に応じて電子制御で過給圧をコントロールする新機構も盛り込んだ。

 トランスミッションには、新開発のGR6型6速DCTをリアトランスアクスルでセット。駆動システムは、クラッチ/トランスミッション/トランスファーを車体後方に設置し、リアファイナルドライブと一体化した“独立型トランスアクスル4WD”を採用。4WDシステム自体には、旋回ライントレース性と加速性を高レベルで両立させた進化版のアテーサE-TSをセットした。

 基本骨格には専用設計のPMプラットフォームをベースに、既存車にはなかったカーボン/アルミダイキャスト/スチールという3種の素材を最適に組み合わせ、同時にスポット溶接やプレスリブの増強を図った超高性能ボディを採用した。懸架機構については、フロントにボディスタビライザー機能を持つパイプ一体構造の高剛性メンバーに支持されたダブルウィッシュボーンをセットし、一方でリア側には高剛性と高精度を追求した専用設計のマルチリンク式を導入した。

組み合わせるコイルスプリングには、レーシングカー並みの精度管理を行った高精度バネレート変化型スプリングを装備する。さらに、ダンパーにはセットアップスイッチによって減衰力を選択できるモード設定型電子制御式のビルシュタインダンプトロニックを採用した。

年次改良を採用して着実な進化と深化を図る

 スポーツカーは“進化”、さらには“深化”が大切−−。自動車業界で定説といわれるその言葉を実践するように、R35GT-Rは着実に年次改良の道程を歩んでいく。

 2008年9月には、日産のモータースポーツ部門であるNISMOがサーキットシーンをターゲットに据えた「NISMOクラブスポーツパッケージ」をリリース。同年12月には、エンジン本体およびコンピュータ制御の精度向上による性能アップ(最高出力485ps)や新構造ダンパーの採用およびフロントバネレートの引き上げ、フロントナンバープレート取付部の変更による全長の短縮(4655→4650mm)などの改良を実施する。2009年2月には、専用サスペンションやカーボンセラミックブレーキ、ハイギアードブースト、チタンエキゾーストシステム、レイズ製鍛造アルミホイール、レカロ製カーボンバケットシート、カーボン材フロントグリル/リアスポイラー/ブレーキダクトなどで武装した「Spec V」を設定。同年12月には、HDD方式カーナビゲーションシステムの採用やサスペンションの改良といった内容の一部仕様変更を行った。

 2010年11月になると、マイナーチェンジ版の2011年モデルが登場する。VR38DETTエンジンはターボチャージャーのブースト圧やバルブタイミングの変更、吸排気抵抗の低減などによってパワー&トルクが530ps/62.5kg・mへとアップ。また、快適性および実用燃費の向上に貢献するSAVEモードの追加やアルミハニカム入りカーボンコンポジット製ストラットサポートバーの設定、前後サスペンションセッティングの見直し、内外装の一部仕様変更(Cd値0.27→0.26)などを実施する。

車種展開では、サーキット走行専用部品を装着する「Club Track edition」、20種類の組み合わせからインテリアの仕様が選択できる上級グレードの「EGOIST」を新規にラインアップした。

2012年モデルから最高出力を550psに向上

 2011年11月には2012年モデルがデビューする。VR38DETTエンジンは吸排気効率の向上や制御の変更によりパワー&トルクが550ps/64.5kg・mへとアップ。組み合わせるトランスミッションはシフトフォークのアーム設計とフライホイールハウジングのベアリング固定の見直しによって、変速フィールと静粛性の向上を図る。

また、ボディ剛性の引き上げや懸架機構への左右非対称セッティングの導入なども実施した。2012年11月には2013年モデルが登場する。VR38DETTエンジンは中回転域のレスポンスと高回転域での加速の伸びを向上。サスペンションのセッティングも見直し、走行安定性および整備性をいっそう引き上げる。インテリアの質感を高めたことも訴求点だった。

田村CPSのもとで一段と速く、上質なGT-Rに改良

 2013年になると、7月に特別塗装色のミッドナイトオパールを採用するなどした限定100台の特別仕様車「スペシャルエディション」を発売。12月にはシャシーおよびボディなどの改良を図って従来とは趣を異にする上質な乗り心地と洗練されたハンドリングを実現した2014年モデルをリリースする。2014年に入ると、2月にワークス直系スーパースポーツカーの「GT-R NISMO」を発売。11月には、乗り心地と操安性をより熟成させた2015年モデルを市場に放つ。また、2015年2月にはGT-Rのデビュー45周年を記念した特別仕様車の「45th Anniversary」を45台限定で発売した。

 ちなみに、2014年モデルからは水野和敏CPS(チーフ・プロダクト・スペシャリスト)に代わって田村宏志CPSがGT-Rの開発を主導する。基準モデルのGT-Rはパフォーマンスで妥協することなく新たな次元の上質さを目指し、GT-R NISMOでスポーツ性能を徹底追求する方針を打ち出した。

■2017年モデルで内外装デザインを大幅に刷新

 2016年7月には内外装とメカニズムを大幅刷新した2017年モデルが市場デビューを果たす。
 エクステリアは空気抵抗とダウンフォース、冷却性という3つの性能を高次元でバランスさせるとともに、GT-Rらしさをより深めたアグレッシブなデザインへと変更する。フロント部には新造形のVモーショングリル(メッシュパターンに一新すると同時に開口部を拡大)と形状を最適化したバンパー、高レベルのダウンフォースを維持するスポイラーなどを装着。

側面には空気の流れを改善した新形状のサイドシルを組み込む。リアセクションでは両下端に新造形のサイドアウトレットを装備するなどして空力性能を向上。また、伝統のリング型テールランプは高輝度LEDタイプで仕立て、同時に新デザインのシルバーフィニッシュ・ディフューザーおよびバンパー下部を採用してリアビューのワイド感やアグレッシブ感をいっそう引き上げた。

 インテリアについては、さらなる高質感と操作性のアップを目指した改良を実施する。インパネには高級本革として知られるナッパレザーを“1枚使い”で使用。アクティブノイズコントロール/アクティブサウンドコントロールといった制御音システムも新たに設定した。

前席は上半身を点ではなく面で支える上質な座り心地のシート構造を導入し、上級グレードにはシートヒーターを標準装備する。2名掛けのリアシートは左右を明確に分割するとともに、センターコンソールからの連続感を持たせることで高い剛性感を演出した。パドルシフトはステアリングホイール固定タイプに変更し、操作力やストローク量も最適化した。

 VR38DETTエンジンは気筒別点火時期制御やブーストアップを採用するなどしてパワー&トルクが570ps/65.0kg・mへと向上。新設計のチタン合金製マフラーとエキゾーストサウンドコントロールの採用によって、排気ノートもクリアで心地いい音色に変化する。組み合わせる6速DCTの制御も変更し、従来より変速のスムーズさがアップ。さらにボディ剛性の引き上げやサスペンションの最適セッティングなどにより、タイヤの接地性とハンドリング性能が一段と向上した。

純粋にパフォーマンスを極めた2017年モデルの「GT-R NISMO」

 2017年モデルのGT-Rがリリースされてから1カ月ほどが経過した2016年8月、日産はワークスチューンの究極GT-Rとなる「GT-R NISMO」2017年モデルを発売する。

NISMOチューンの内容は多岐に渡る。まずエクステリアでは、空力性能や機構面の冷却性の向上などを踏まえた専用デザインのカーボン製フロントバンパー/カーボン製リアバンパー/カーボン製リアスポイラー/カーボン製サイドシルプロテクター/アウトレットダクト付拡幅フロントフェンダー/拡幅フェンダープロテクター/3分割式フロントアンダーカバー/ドライカーボン製トランクリッドなどを採用。

インテリアでは専用レカロ製カーボンバケットシートを筆頭に、専用アレンジのダッシュボード上層部/アルカンタラ巻きステアリングホイール/カーボン調コンビメーター/nismoエンブレム付フロアマット/NissanConnect NISMO Plus(テレメトリーサービス for NISSAN GT-R NISMO)などを装備する。

搭載するVR38DETTエンジンは、NISMO専用GT3タービン(IHI製大容量インテグレーテッドターボ)や専用チューニングコンピュータ(ECM)、専用エンジンカバー、専用加圧式リザーバータンク、専用燃料ポンプなどを採用してチューンアップを敢行。パワー&トルクは600ps/66.5kg・mにまで引き上がる。また、サスペンションおよびビルシュタインダンプトロニックには専用セッティングを施し、シューズには専用のレイズ製鍛造アルミホイール+ダンロップSP SPORT MAXX GT600 DSST CTTタイヤを装着した。

 世界屈指のマルチパフォーマンススポーツカーとして、そして日産のブランドイメージを象徴する孤高のモデルとして、絶えまない進化と深化を続けるR35GT-R。間違いなく名車となることが確約された1台である。

COLUMN
GT-Rは新世代スーパーカーならではの安全性と環境性能を実現
 R35型GT-Rは安全装備も充実していた。外装面では、万が一歩行者と衝突した際に衝撃を緩和するためにフェンダーやカウル周辺部のエネルギー吸収性を向上。フロントバンパーには脚部への衝撃をやわらげる吸収材を組み込む。 また、歩行者の頭部がエンジンフードに衝突したときの衝撃を緩和するポップアップエンジンフードも採用した。内装面では、運転席・助手席SRSエアバッグシステム/SRSカーテンエアバッグシステム/運転席・助手席SRSサイドエアバッグシステムを設定。さらに、前席テンションリデューサーELR付3点式シートベルト/前席ロードリミッター付シートベルト/後席ELR付3点式シートベルトなども装備した。環境対策にも抜かりはない。 排気2次エアシステムの採用により、左右合わせて4つの触媒を早期に活性化。また、全域での空燃比フィードバック制御を行うことで燃費の向上と排出ガスのクリーン化を達成する。リサイクル性の引き上げも実施し、構造や材料の検討などを行った結果、リサイクル可能率95%以上を成し遂げる。さらに、車室内VOC(Volatile Organic Compounds=揮発性有機化合物)の低減も図っていた。