ウィンダム 【1991,1992,1993,1994,1995,1996】

レクサスESとしても人気を博した国際派プレミアム

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豊かな時代を象徴したトヨタの高級車戦略

 1980年代末の日本では、空前の大型高級車ブームが起こった。バブル景気の真っ最中ということもあり、各社挙って大型高級車の開発を手掛けることになった。先端技術の全てを注ぎ込み、高級モデルの開発に血道を上げていた。
 日産のシーマを皮切りに、ホンダがレジェンドを、三菱はディアマンテを、マツダはセンティアを売り出して、それなりの市場を確保していたのだから、この当時の日本社会のカネ余り現象の凄まじさを象徴していると言える。

 トヨタは、アメリカでレクサスLS400を名乗る大型高級モデルを日本国内向けにはセルシオと改名し、1989年10月に売り出した。ライバルとなるシーマの動向を見極めた上で、一歩遅れての市場投入である。「後出しジャンケン」は巨大企業の常套手段ではあったが、セルシオは瞬く間に独自のマーケットを築いてしまった。。
 このセルシオの一クラス下に位置するアッパー・ミドル・クラスの高級車として、1991年9月にデビューした中型高級車がウィンダムであった。

新プレミアムはカムリ・プロミネントをベースに開発

 車名のウィンダム(Windom)は、英語で勝利を意味するウィン(Win)に「その状態に在ること」を意味する設尾語(dom)を付けた造語であるという。ウィンダムもトヨタ的な手法で造られた派生モデルの一つであった。直接的なベースとなったのは、当時アメリカでも売られていたカムリ・プロミネントやステーションワゴンであったセプター。このフロアユニットをベースに、内外装を高級化したのである。ただし、ウィンダムにはセダンやステーションワゴン仕様は存在しない。

 高級車作りは徹底しており、主要なシャシーコンポーネンツはカムリ・プロミネントやセプターと共用しているが、ホイールベースを20mm、ボディは全長で110mm、全幅は85mm延長され、全長4780mm、全幅1780mm、全高1390mm、そしてホイールベース2620mmと日本では3ナンバーサイズとしている。3ナンバーは高級車のステイタスの大きな要素となっていた。販売店系列はトヨタ・カローラ店であり、同系列が扱うトップ・ブランドであった。

目指したのは“内に秘めた本当の豊かさ”

 ウィンダムは、セルシオとともにトヨタの新高級車チャネル“レクサス”の主力モデルとして開発したモデルだった。レクサスではウィンダムがES、セルシオがLSを名乗った。日本の5ナンバー枠にとらわれない伸びやかなボディサイズと、大排気量エンジンの組み合わせはレクサスで販売することを主眼にしていたからだった。

 レクサスはメインライバルとしてメルセデス・ベンツやBMWの欧州製プレミアムを意識していた。それだけにウィンダム(ES)の内外装は、セルシオ(LS)と同様に“本物指向”を貫いていた。きらびやかな装飾で高級感を演出するのではなく、それ自体のクオリティを高めることで高級感を表現する。

 当時のカタログには「目には映らない、内に秘めた本当の豊かさ。このクルマの本質を言い表すとしたらこんなワードでしょうか」という記述がある。ウィンダムはまさにその通りのクルマだった。国内では車格的にほぼクラウンとオーバーラップしたが、クラウンは旧来からの価値観に忠実に仕上げた高級車、ウィンダムは新たな価値観を持つパーソナルな高級車という違いがあった。

高水準の静粛性のための徹底した“源流対策”

 ウィンダムは静粛性を徹底的に追求した。クルマのノイズやバイブレーションの主要発生源はエンジン。そのためウィンダムではエンジン本体のリファインはもちろん、エンジンのボディへの搭載方法にも入念な工夫を施していた。

 エンジンが最も振動を発する部分を解析し、その部位3ヶ所にマウントを配置。エンジン&トランスミッションは専用設計の井型サブフレームで支持し、さらにそのサブフレームはゴムブッシュを介してボディにマウントする方法を採用したのだ。井型サブフレームと、ゴムブッシュの2重でノイズとバイブレーションを防ぐ防振支持システムである。ウィンダムの圧倒的な静粛性は、基本に立ち返り、問題を解決するトヨタ独自の“源流対策”が生みだした成果だった。

余裕のV6エンジンを積み先進装備を満載

 フロントに横置きされ、前輪を駆動するエンジンは、デビュー当初はV型6気筒DOHC24バルブの排気量2958cc(3VZ—FE型、出力200ps/5800rpm)一種のみの設定となっていた。1993年8月に排気量2496ccV型6気筒DOHC24バルブ(4VZ—FE型、175ps/6000rpm)を追加設定した。

 トランスミッションは電子制御4速オートマチック(ECT-S)でマニュアル・トランスミッションの設定は無い。サスペンションは前がストラット/コイル・スプリング、後ろがダブルトランスバースリンク式ストラット/コイル・スプリングの組み合わせ。上級グレードには上下方向G(重力)感応型TEMSを装備していた。ブレーキは4輪ディスク(前ベンチレーテッド型)でサーボ機構が付く。

 その他、安全装備では運転席側SRSエアバッグ、4輪ABS、トラクションコントロール・システムなどが標準装備されていた。変わったところでは、超音波振動を利用したドアミラーの鏡面雨滴除去装置なども標準装備となっていた。

ライバルに差をつけるプレミアムな快適装備。

 ウィンダムは充実した快適装備が自慢だった。なかでもメーターとエアコンは秀逸だった。メーターは、イグニッションキーがオフの状態ではブラックフェイスで、イグニッションキーをオンにすると、表示パネル内のLED指針および文字盤がシャープに浮かび上がるオプティトロン方式を採用する。ドライバーに適度な高揚感を与えると同時に見やすさにも配慮した先進メーターである。

 エアコンは、マイコン制御でつねに最適な室温を保つオート式。操作性&視認性に優れた大型液晶コントロールパネルを装備し、温度表示をデジタル、風量調節をバーグラフ、吹き出しモードの切り替えをイラストで表示した。エアコンユニットもセンター置きの高効率一体型とし、空調性能の向上を図っていた。ウィンダムの各装備は、単に機能を追求しただけでなく人の感性に訴えかける入念で緻密な作り込みを感じせるものだった。そこがウィンダムのプレミアムさの表現だった。