マツダデザイン9 【1989,1990,1991】

傑作オープンの誕生とミディアムクラスの拡大展開

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ボディごとにキャラクターを鮮明化した7thファミリア

 ファミリアやカペラのヒットなどで上昇気流に乗っていた1980年代終盤のマツダは、国内第3位の地位を確かなものとし、さらには上位のトヨタと日産に迫るための大きな勝負に打って出る。販売網の大幅な拡大だ。そのため車種展開の増強を実施し、同時に斬新な車両デザインを創出によって市場にアピールする戦略を打ち出した。

 1989年2月には、BGの型式をつけた7代目ファミリアを市場に放つ。ボディタイプは安定感のある台形フォルムに力強いCピラーとブリスター形フェンダーを採用した3ドアハッチバックと4ドアセダン、そして低くて流麗なクーペ風のフォルムにリトラクタブルライトを組み込むスポーティなフロントマスクを導入した5ドアハッチバックのアスティナ(4月発売)をラインアップ。このなかでアスティナは、それまで実用車然としていた5ドアハッチバックのデザイン路線とは一線を画す革新的なモデルとして、とくに欧州市場(欧州版の車名は323F)で高く評価された。

正統派ライトウエイトスポーツの再現

 ファミリアの日本デビューと同月、マツダは米国シカゴ・オートショーで新世代FRライトウエイト・オープンスポーツのMX-5ミアータを発表する。日本では「ユーノス・ロードスター」の車名で同年7月に発表、9月より販売を開始した。

 ロードスターの車両デザインは、抑揚のあるロングノーズ&ショートデッキの流麗なプロポーションを基本に、リトラクタブル式のヘッドライトや後方にきれいに格納できるソフトトップ、楕円形のリアコンビネーションランプなどを組み込む。適度なタイト感を有し、かつスポーティなブラック基調でまとめた内装デザインも、スポーツカーにふさわしい出来栄えだった。

 組み合わせるオープンボディは、強度/剛性部材のストレート化や結合部剛性の強化、フロアトンネルの強度/剛性部材としての活用、サイドシルの大型断面化などを実施。同時に、ボンネットフードやオイルパン、デフケース、P.P.F.等にアルミ材を使用し、効果的な軽量化を果たす。前後重量配分は、2名乗車時で50:50の理想的な数値を実現した。基本骨格も本格スポーツに相応しい。駆動方式はFRで、トランスミッションとデフをリジッドに結合する新開発のP.P.F.(パワープラントフレーム)を採用する。サスペンションには路面に対するタイヤのジオメトリーをつねに適正に保つ4輪ダブルウィッシュボーンをセットした。

上級移行を果たした新世代ミディアム・シリーズ

 1991年10月になると、カペラの実質的な後継車となる新世代ミディアムセダンの「マツダ・クロノス」がデビューする。基本骨格には新開発のGEプラットフォームを採用。徹底した上級化を志向するために、ボディは3ナンバーサイズ(全幅1770mm)へと移行させた。

 エクステリアに関しては、“カーブコンシャスフォルム”を謳った曲面構成のスタイリングを特長とする。大胆に絞ったボディ前端から、ふくよかにうねりながら再び後端に絞り込まれていく独特の造形は、ひときわ流麗で艶やかな表情を見せた。一方、パッケージングについてもなかなか優秀で、ショートノーズ/ビッグキャパシティキャビン/ショートデッキ/ロングホイールベースのプロポーションを構築してクラス最大級の居住空間を確保する。室内のデザインにも工夫を凝らし、曲面で取り巻くラップラウンドインテリアをベースに、伸びやかで流れるような造形のインパネや高弾性パッドとSバネをミックスしたフロントバケットシート、パーソナル性を重視したリアシートなどを装着した。

多くの派生モデルの誕生

 クロノスに使用した新開発のGEプラットフォームは、多くの車種に展開することを企画当初から想定していた。1991年11月には、「アンフィニMS-6」が発売される。ボディタイプは5ドアハッチバックで、6ライトのサイドウィンドウ形状や傾斜を持たせたCピラー、広い荷室開口部などを特長とする。ちなみに、MS-6は3代目フォード・テルスター(1991年10月デビュー)のTX-5と基本ボディを共用していた。

 1992年1月になると、「マツダMX-6」と「ユーノス500」が市場デビューを果たす。MX-6はダイナミック&エレガントフォルムを謳った2ドアクーペボディを導入し、室内は小さめの後席を配した4名乗りキャビンで仕立てられる。ユーノス500はスタイリッシュかつ上質なオリジナリティあふれるセダンボディを採用。クロノスの派生車種で唯一、5ナンバーサイズ(全幅1695mm)に収められていた。

 GEプラットフォームの拡大展開は、まだまだ続く。1992年3月には「アンフィニMS-8」が登場。ボディはサッシュレス4ドアのピラードハードトップで仕立てられ、クーペのような流麗なフォルムと存在感あふれるフロントマスクを特長とする。さらに1992年5月に「オートザム・クレフ」がデビューする。グリルレスのフロントマスクにクリーンなボディラインを採用した4ドアセダンは、“新世代スポーツサルーン”というキャラクターを謳っていた。