タント 【2003,2004,2005,2006,2007】

“しあわせ家族空間”をテーマにした軽トールワゴン

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


軽自動車のさらなるユーティリティの追求

 日本独自のミニカーのカテゴリーである軽自動車は、1998年10月になると衝突安全性の向上を図る目的の規格改定が実施される。660ccのエンジン排気量はそのままながら、ボディサイズが全長3300×全幅1400×全高2000mmから同3400×1480×2000mmに拡大されたのだ。小型乗用車との車格差が縮小し、同時に税金などのコスト面のメリットがより強調される形となった軽自動車。市場でのその人気は、後に“失われた20年”と呼ばれる経済低迷と相まって、いっそう高まることとなった。

 軽自動車の隆盛は、2000年代に入ってもまだまだ続く。そして市場でのシェアをさらに伸ばすためには、新ジャンルの軽乗用車を生み出す必要がある−−。そう考えた軽自動車メーカーの代表格であるダイハツ工業は、ムーヴが属する既存の軽ハイトワゴンを上回る広い室内空間を確保した、いわゆる新種の軽トールワゴンを企画する。開発コンセプトは“しあわせ家族空間”。若いファミリー層である“アクティブキッズファミリー”をメインターゲットに、独自のパッケージングでクラス最大級のキャビン&ラゲッジスペースを構築する新しい軽ワゴンの創出を目指した。

伊語で“とても広い”を意味する車名でデビュー

 ダイハツの新ジャンルの軽トールワゴンは、2003年11月に市場デビューを果たす。車名はイタリア語で“とても広い、たくさんの”を意味する「タント(Tanto)」を名乗った。
 パッケージングに関しては、軽最大の2440mmのホイールベースにコンパクトなノーズ、1770mm超のボディ高で基本フォルムを構築したうえで、2000mmの室内長と1330mmの室内高、フラットなフロアで広々とした室内空間を実現。同時に、左右分割でロングスライドできるリクライニング&格納機構付リアシートや約90度まで開くドア、大きな開口部を有するリアゲートなどを採用して利便性を引き上げる。さらに、ボディ骨格自体には進化版の衝突安全ボディとなる“TAF”を導入した。

 スタイリングについては、コンパクトノーズとビッグキャビンをバランスさせた斬新なプロポーションを基本に、大型バンパーで安定感を強調したフロントセクションや片側4ライトでバックドアウィンドウをサイドまで回り込ませたワイドなグラスエリア、全10色の豊富なカラーバリエーションなどで独特の個性を主張する。インテリアは、シンプル&プレーンなデザインでリビング感覚を演出。また、インパネシフトの採用によるサイドウォークスルーや運転席アッパーボックス/助手席下ユースフルトレイ/後席フロアアンダーボックスといった収納スペースの設置などによって使い勝手を向上させた。

 搭載エンジンはEF-VE型659cc直3DOHC12V+DVVT(58ps/6.5kg・m)とEF-DET型659cc直3DOHC12Vターボ(64ps/10.5kg・m)の2機種のTOPAZ(TOP from A to Z)ユニットを設定。また、全車に貴金属使用量を大幅に低減させるインテリジェント触媒を採用する。組み合わせるトランスミッションは2WD(FF)が4速AT、4WDが3速ATまたは4速ATで、EF-DETエンジン車には登坂変速制御を内蔵した。懸架機構はスプリングおよびダンパーに最適チューニングを施した前マクファーソンストラット、後トーションビーム(2WD)/3リンク(4WD)をセット。操舵機構には新開発の電動式パワーステアリングを組み込んだラック&ピニオン式を採用した。

上級志向の「タントカスタム」を追加

 EF-VEエンジン搭載のXリミテッド/X/L、EF-DETエンジン搭載のRS/Rに、2WDと4WDという計10グレード構成で展開したタントは、発売1カ月の受注が月販目標5000台の2倍以上となる約1万500台を記録するなど、好調なスタートを切る。この流れをさらに加速させようと、開発陣は積極的に車種ラインアップの拡大を図っていった。

 まず2004年6月には、Xリミテッド/Xをベースに専用内装色の採用と快適装備の充実化を図った特別仕様車の「スマイルセレクション」を発売。2005年6月には、専用フロントフェイスにディスチャージヘッドランプ、専用エアロパーツ、クリアクリスタルのリアコンビネーションランプ&大型バックドアガーニッシュ、ブラック基調インテリア、スエード調ファブリックシートなどを装備した上級スポーティ仕様の「タントカスタム」を設定する。また、既存のタントもセキュリティアラームを全車に標準装備するなど快適性・利便性の向上を図った。さらに同年12月には,Xグレードをベースに専用内装色やキーフリーシステムを導入した特別仕様車の「ハッピーセレクション」をリリース。2006年中には、9月に各種エアロパーツを装備したLグレードベースの特別仕様車「VS」を、11月に専用のメッキグリルや15インチアルミホイールなどを組み込んだカスタムRS/Xベースの特別仕様車「VSターボ」「VS」を発売した。

 新鮮味を維持する戦略の効果もあって、タントは月販平均約8000台を記録するほどの人気モデルに発展していく。軽トールワゴン造りに自信を深めた開発陣は、次世代モデルでさらなるパッケージングの革新を敢行。2007年12月に“ミラクルスペース”を有する2代目タントへとモデルチェンジしたのである。

広い室内を活かした福祉車両をリリース

 ダイハツはタントに福祉車両「フレンドシップシリーズ」を用意。2005年10月に「タント・フロントシートリフト」を、2006年8月に「タント・スローパー」を発売した。フロントシートリフトはスイッチ操作で助手席が回転し、車外へスライドしながら下降、着座位置が低くなって一段とスムーズに乗降できる仕組みを導入したモデル。助手席の回転・昇降操作が手元で可能なワイヤレスリモコンや着座姿勢をしっかりサポートする胸部固定用ベルトも設定した。

 一方のスローパーは、車両後部に引き出し式のスロープと大開口バックドアを設け、車いすに座ったままで楽に乗降できるカスタムモデルだ。また、乗用車としても快適に使うことができるリアシート付仕様、助手席が電動で回転・昇降する助手席シートリフトパックを設定し、ユーザーの多様な使用パターンに対応していた。