クラウン 【1999,2000,2001,2002,2003】

伝統の価値を提唱した国産高級車の代表

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キャッチは“21世紀へ、このクラウンで行く”

 1999年9月に登場した11代目のクラウン(S170系)のキャッチコピーは「21世紀へ、このクラウンで行く」。スタイリングこそ歴代クラウンのイメージを踏襲したオーソドックスな印象だったが、メカニズムをはじめとする内容は21世紀を迎えるに相応しい斬新さで溢れていた。

 まずシャシーが新しかった。エンジン&燃料タンクを車両中心に寄せ車両のヨー慣性モーメントを減少させるとともにキャビンパッケージを拡大し、リアサスペンションには新開発ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用。走りの資質を全面的に刷新したのだ。エンジンも新設計のガソリン直噴システム(D-4)を主力とし、高出力と同時にローエミッション&低燃費を実現した。

ラインアップは2シリーズ構成

 ラインアップは2シリーズ。11代目から従来のイメージを大切にしたロイヤルシリーズとともに、アクティブな走りを求めるユーザー向けのアスリートシリーズを設定した。アスリートの誕生は基本ポテンシャルの大幅アップが生み出したものだった。ちなみにアスリートシリーズの最強モデルは280psを誇る3.0リッターターボを搭載していた。

安全志向がもたらしたセダンボディ

 ボディ面の大きな変更は、それまでのピラード・ハードトップが消滅し、全モデルがオーソドックスなセダンボディとなったことだった。これは、主にサイドインパクト(側面衝突)に対する安全性確保のために、ボディ剛性を向上させる必要から採用された。11代目は、スタイリングのイメージこそおとなしい印象だったが、安全面や剛性面などの考え方が全面的に新しくなっていた。全体のスタイリングは、ボディ表面のサーフェス化が徹底され、フロント及びリア・ウィンドウの傾斜はさらに強くなって、空力的な効果を向上させた。

 クラウンの伝統芸ともいえる静粛性にもさらに磨きが掛かった。少なくとも日本の法定上限速度の100km/h前後までであれば、クラウンは世界で最も静かなクルマと言えた。また、トランスミッションは全モデルが5速/4速のオートマチック・トランスミッションのみの設定となった。

マイルドハイブリッドの誕生

 1999年12月には、シリーズに取って久々のワゴンを追加。ワゴンは“エステート”を名乗り、国産最上級ワゴンとして独自のポジショニングを守った。2001年8月にはシリーズ全体にマイナーチェンジが施され、インテリアを中心に質感を向上させる。省エネルギー対策はレベルアップの一途をたどり、ロイヤルシリーズの一部グレードにはマイルドハイブリッド(THS-M)と呼ばれる、トヨタの独自開発による省エネルギーシステム“マイルドハイブリッド”を設定した。

 マイルドハイブリッドは3.0リッター、直列6気筒DOHCのD4エンジンと36ボルト・バッテリー/モーター/ジェネレーターを組み合わせたシステムで、エンジンが回っていなくてもエアーコンデショナーを動かし、ブレーキング時に電力を回生することが出来た。10・15モード走行で15%、都市部の渋滞時では30%の燃費向上を実現していた。カタログ上の10・15モード燃費は13km/Lだった。マイルドハイブリッドのシステム価格は同一グレード比較で15万円高の設定であった。

 特殊なところでは、ヤマハ発動機がエンジンチューニングを行い、300馬力のパワーを持つエンジンとスープラ用のサスペンションを組み込んだアスリートVXが少数限定で販売された。
 50年近い歴史を刻んだクラウンもこの11代目で進化の限界に近くなっており、全く新しい展開が必須となっていた。そして、2003年12月にクラウンは「ゼロ・クラウン」をキャッチフレーズに大変革を成し遂げ、イメージを一新する。