カペラ 【1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994】
先進機構を満載した走りの5代目
車両レイアウトをパッケージングに優れるFF方式に一新し、4年8カ月もの期間に渡ってリリースされ続けた4代目のGC型系カペラ。しかし、クルマのハイテク化が急速に進展した1980年代中盤になると、市場における同車の存在感は徐々に薄れつつあった。
次期型カペラには、先進メカニズムを積極的に採用する必要がある−−。そう判断したマツダの開発陣は、走行性能に磨きをかける先進技術を積極的に盛り込む決断を下す。さらに、内外装の演出にも工夫を凝らした。
走行関連のメカに関しては、量産車で世界初採用となる車速感応型4輪操舵システムの“4WS(4 Wheel Steering)”が最大のトピック。舵を切るフロントタイヤに対してリアタイヤを電子制御で同・逆位相に動かし、高速安定性(同位相)と小回り(逆位相)の両方を高める4WSは、当時としては画期的なシステムだった。また、工場出荷時に当たっては4WSの全数を検査する体制を整え、徹底した品質管理を行う。
搭載エンジンにも新機構を組み込んだ。GC型系に採用して好評を博していたRF型1998cc直4OHCディーゼルには、量産エンジン初のコンプレックス型スーパーチャージャー=PWS(プレッシャー・ウェーブ・スーパーチャージャー)の過給器を装着。82ps/18.5kg・mにまで出力アップすると同時に、従来のディーゼルエンジンにはなかった回転のスムーズさと力強いパワーの盛り上がりを実現する。ガソリンエンジンについても、可変慣性過給システムのVICS(バリアブル・イナーシャ・チャージング・システム)を採用したFE型1998cc直4DOHC16V(140ps)やチューニングを見直したF8型(EGI仕様97ps/キャブレター仕様82ps)/B6型(73ps)を設定した。
スタイリングについては、滑らかな曲線を基調にしたデザインでスタイリッシュさを強調。ボディタイプは5ドアハッチバックをメインに、4ドアセダンと2ドアクーペを用意。また、時期を遅らせて発売する予定の5ドアワゴン/バン(カペラ・カーゴ)の開発も着々と進めた。インテリアに関しては、外装と同様にラウンディッシュな造形を採用する。フロントシートの演出にも凝り、グレードごとにラグジュアリー/スポーティ/バケットといった仕様を設定した。
5代目となるカペラは、GDの型式を付けて1987年5月に市場デビューを果たす。ボディタイプは前述の3タイプで、市販時は5ドアハッチバックがCG(City Gearの略)、2ドアクーペがC2(Composite Coupeの略)のネーミングを冠した。注目の新メカである4WSは、CGのFE型およびF8型エンジンの搭載モデルに装着車が設定される。
GD型系カペラは「ベーシック&アドバンス」のキャッチコーピーの下、斬新なメカニズムやヨーロッパ調のスタイリッシュなルックスなどで好評を博す。4WSの走りに関しては、コーナリング中にややクセの強い動きが出たものの、その先進的な走りは大きな注目を集めた。
GD型系カペラは海外マーケットでも重要な役割を果たす。アメリカでは竣工したばかりのMMUC(マツダ・モーター・マニュファクチャリング・USA・コーポレーション。現AAI=オート・アライアンス・インターナショナル)でカペラC2(現地名MX-6)を生産し、市場での売れ行きも好調に推移。また欧州市場、とくに西ドイツ(現ドイツ)ではミディアムクラスの人気モデルに成長した。
好評価を獲得したGD型系カペラは、デビュー後も着々と進化の道程をたどる。
1987年7月にはフルタイム4WD車を追加。1988年2月にはC2やセダンにも4WS装着車をラインアップする。そして同年3月には、ステーションワゴン/バン仕様のGV型系カペラ・カーゴを追加設定した。
その後も内外装の一部変更やメカニズムの刷新、特別仕様車の∞(アンフィニ)やキャンバストップの発売などを敢行したGD型系カペラだったが、1991年10月になると車種ラインアップの大変更が実施される。マツダの販売網の拡大および同クラスの新型車の増強(クロノス/アンフィニMS-6/MX-6/ユーノス500)により、GD型系カペラのCG/C2/セダンがカタログから外れたのである。残ったのは、当時大ブームのワゴン人気に対応するカペラ・カーゴだけだった。
1994年8月になるとバブル景気崩壊後のマツダの車種戦略の見直しによってカペラのセダン(CG型系)が復活するものの、カーゴに関しては従来型を継続生産。1994年10月のマイナーチェンジではステーションワゴン仕様の車名を“カペラ・ワゴン”に改称した。そして、カペラ・シリーズ全体がフルモデルチェンジする1997年11月まで、細かな改良を加えながら販売が続けられたのである。