スカイライン 【1985,1986,1987,1988,1989】

ハイソカー路線を突き進んだ7代目

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高級スポーティサルーンを目指して--

 イメージキャラクターにポール・ニューマンを起用し、またS20型エンジン以来のDOHC4バルブ・ユニットを復活させてスポーツイメージを全面に押し出した6代目のR30型系スカイライン。しかし、販売成績の面で見ると、5代目のC210型系“ジャパン”ほどの人気は獲得できなかった(販売台数はC210型系が53万9727台、R30型系が40万6432台)。市場調査によると、最大の敗因は高級感とファッション性の欠如。ライバルであるトヨタのマークIIシリーズに比べて、ミドルクラスらしい車格と優雅さが希薄だったという結論が導き出された。

 この状況に対し、開発陣は次期型スカイラインの方向性を「ソフィスティケートされた高級スポーティサルーン」とする。同時に、先進技術の導入も積極的に推し進めた。
 スタイリングに関しては、R30型系のシャープなボディラインを踏襲しつつ、各部の質感を大幅に高める。ボディ形状は従来の4ドアセダンのほかに、スカイライン初の4ドアハードトップを新開発した。また全長や全幅などの大型化も実施し、室内空間の拡大とともに見た目の高級感の創出を図る。

新世代6気筒エンジンを搭載

 エンジンについては、従来のL型系に代わる新世代6気筒ユニットのRB型系をメインに採用。新設計のDOHC24Vヘッドを備えたRB20DE型(165ps)とそのターボ版のRB20DET型(210ps)を筆頭に、OHCターボのRB20ET型(170ps)、自然吸気OHCのRB20E型(130ps)、廉価モデルに積む4気筒のCA18S型(100ps)、そしてディーゼル仕様のRD28型(100ps)という計6機種を設定する。またRB20DE型系には、世界初採用となる電子制御可変吸気コントロールシステム(NICS)やハイテンションコードを省いて常に安定した2次電圧を供給するダイレクトイグニッションシステム(NDIS)などの新機構を組み込んだ。

後輪もステアするHICASを新開発

 フロントがマクファーソンストラット式、リアがセミトレーリングアーム式(1800系は5リンク式)という足回りは基本的に従来モデルと同形式だが、ボディの大型化や高級サルーンへの路線変更により、セッティングを大幅に見直す。また新機構として、HICAS(High Capacity Actively Controlled Suspension)と呼ぶ電子制御4輪操舵システムを開発した。リアのセミトレーリングアームが取り付けられたクロスメンバーの左右支点(ラバーマウント部)に小型の油圧アクチュエータを設け、電子制御により後輪を同位相に微小角度変位させるこの新システムは、30km/h以上で車速及び車両横Gに応じて後輪を最大0.5度までアクティブにステアさせることによりスタビリティを向上させるシステム。とくに高速コーナリングでのセーフティマージン向上に大きく貢献するものだった。

4ドアHTと4ドアセダンでスタート

 高級路線へとシフトした7代目スカイラインは、R31の型式を付けて1985年8月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは「都市工学です。7th Skyline」、「からだの延長としての存在」。ボディタイプはイメージリーダーとなる4ドアハードトップと4ドアセダンのみの設定で、歴代スカイラインのスポーツモデルの象徴である2ドア仕様はラインアップされなかった。

 高級スポーティサルーン、当時の表現でいうと“ハイソカー”にキャラクターを一新した7代目スカイラインは、市場での評価が大きく分かれた。販売成績の面では、とくにハイソカー・ブームに乗った4ドアハードトップ車が好調をキープ。一方、昔からのスカイライン・ファンには不評で、「牙を抜かれた狼」などと揶揄された。
 賛否両論が渦巻くR31型系スカイライン。しかし、このような評判になることは、日産スタッフもある程度は予想していた。そして、スカイライン伝統の“走り”を極めたスポーツモデルの開発を、着々と進めたのである--。

2ドアクーペの追加

 市場デビューから9カ月ほどが経過した1986年5月、R31型系スカイラインに待望のスポーツモデルとなる“2ドアスポーツクーペGTS”シリーズが追加される。装備面での特徴は、車速70km/h以上で突出、50km/h以下になると格納するフロントの“GTオートスポイラー”や専用デザインの薄型ヘッドランプなど。エンジンに関しては、RB20DET型のタービンローターにファインセラミックを、ローター軸のオイルシールに滑りのよいシーリングタイプを採用する。また、HICASについては細部のチューニングを見直し、より自然な効きを実現した。同年9月になると、4ドアハードトップ車にもGTSシリーズを設定。さらに翌1986年2月には、スカイラインの誕生30周年を記念した“2ドアスポーツクーペGTSツインカム24VターボNISMO”が限定1000台で発売された。

 高級感に加えて、スポーツ性も強調したR31型系。しかし、4ドアハードトップ車を除くと、販売成績は目標を下回り続ける。この状況を少しでも打開しようと、1987年8月にはマイナーチェンジを実施。4ドア車のフロントマスクを2ドアクーペと同様の形状とし、さらにパワーユニットやミッションの改良なども敢行した。1988年8月になると、子会社のオーテックジャパンが手がけた“2ドアスポーツクーペGTSオーテックバージョン”が発表される。限定200台の販売となる特別仕様車は、RB20DET型ユニットのターボチャージャーをギャレットエアリサーチ社製T25/T3のハイブリッドタービンに変更するなどして、210psのパワーを実現した。