アテンザ 【2008,2009,2010,2011,2012】

世界に照準。ダイナミックな快速ツアラー

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2代目はフランクフルトでデビューを飾る

 初代のアテンザ発表から5年後の2007年9月、ドイツのフランクフルトショーにマツダ6の新型が展示され、続いて東京モーターショーで新型アテンザとして発表された。バリエーションは4ドアセダン、5ドアハッチバックのスポーツ、さらにスポーツワゴンの3種であった。

 新型となった2代目アテンザは、マツダの中核を担う車種として発売に移された。直接的なライバルとなるのは、ホンダ・アコード、スバル・レガシィなどである。しかしながら、アテンザの日本国内でのシェアはわずか数パーセントであり、日本の路上ではほとんど見かけない種類のモデルであった。価格や性能、装備面など、どれを取ってもライバル達に引けは取らなかったのだが、マツダというブランドが、アッパーミドルクラスのセダンに馴染まなかったのかも知れない。

開発キーワードは“キープコンセプト&キープエボリューション”

 初代アテンザは世界3ヶ所の生産拠点から合計132万台もが送り出されたワールドカーだった。初代の好調を受け2代目の開発キーワードは“キープコンセプト&キープエボリューション”となった。すなわちアテンザ本来の良さを変えず、さらに磨き込むことを2代目の課題に据えたのだ。

 具体的には、一段とエモーショナルかつスポーティなスタイルと性能、より高い質感、そしてこれまで以上に便利なパッケージングの3点が開発目標となった。とはいえ単なる先代モデルの正常進化ではなく、新しさが即座に実感できるクルマを目指していた。開発の主人公となった車両開発推進部の松村肇氏は「ともかく乗って楽しいクルマに仕上がったと思います。アクセルにしてもステアリングにしても、正確でリニアな感覚を大切にしていますから、クルマがあたかも身体の一部になったかのような一体感が味わえると思います」と、新型の高い完成度を語った。

上級版は2.5リッターの新開発170psユニット搭載

 バリエーションは、4ドアセダン、5ドアハッチバックのスポーツ、そしてスポーツワゴンの3シリーズがある。3モデルともBピラーまでは共通したものとなっているが、それ以後は全く異なるデザインとなり、当然プレス型なども異なるものが使われている。

 搭載されるエンジンは3モデルとも水冷直列4気筒DOHCの自然吸気型となっており、ターボチャージャー仕様はない。排気量は1998ccと新開発となる2488ccの2種がある。2.0リッター仕様は150ps/6500rpm、2.5リッター仕様は170ps/6000rpmの最高出力を持つ。トランスミッションは電子制御5速オートマチックが基本だが、ハッチバック仕様とスポーツワゴン仕様では6速マニュアルも選択することができた。駆動方式は発表当初はフロント横置きエンジンによる前輪駆動のみであったが、2010年1月からは2.5リッターエンジン搭載のスポーツワゴン仕様に6速オートマチックトランスミッションを備える4輪駆動モデルも加えられている。やはり、このクラスでは4輪駆動モデルは欠かせないものとなる。

クリーンなスタイリングと扱いやすいサイズが融合

 サスペンションは前がダブルウイッシュボーン/コイルスプリング、後ろがマルチリンク/コイルスプリングの組み合わせ。ブレーキは前がベンチレーテッドディスク、後ろはソリッドのディスクである。標準装備のタイヤは2.0リッターモデルが195/65R16、2.5リッターモデルはスポーツが225/45R18、セダンとスポーツワゴン仕様が215/50R17だった。

 ボディスタイリングは 2&3代目のRX-7や2代目ロードスターなどを手掛けたベテランデザイナーの佐藤洋一氏が手掛けている。佐藤がアテンザで大切にしたテーマは「大胆かつ精妙」。「大胆かつ精妙とは日本の美意識や、日本の細やかな心そのものであり、手掛かりになったのは“幽玄”“凛”“精緻”という感覚だった」と佐藤は語る。ゆったりとしたフロントの張りは幽玄を表現したもの、サイドを流れる鋭くエッジを立てたキャラクターラインは凛を示し、精緻は先進的なヘッドランプ形状で表現したと言う。国際車のアテンザだけに海外のライバルとはきちんと差別化した、日本メーカーのマツダらしい造形を大切にしたというわけだ。もちろん空力特性面でも磨き込まれておりセダン&5ドアハッチバックで0.27、ワゴンで0.28というクラストップ級のCd値をマークした。

 ホイールベース2725mm、全長4735(スポーツワゴンは4765)mm、全幅1795mm、全高1440(ワゴンは1490)mmというボディサイズは、日本の決して広く無い道でもぎりぎり扱いやすいものだ。最小回転半径は5.4mで、とりわけ小回りが利くというわけではないが、実用上支障が出ることはない。

マツダの救世主、アテンザの価値と実力

 室内装備は、このセグメントのセダンとワゴンとして完璧なもので、インスツルメンツパネルやセンターコンソール周囲のデザインはどことなく同時代のアメリカ車を思わせるものとなっている。フォード傘下にあったマツダのデザインとしては当然のことである。それらが、きわめて上質感に溢れたものであることは、日本のクルマ造りの真髄を思わせる部分である。さらに、車種によってはステアリング背後にシフトダウン/シフトアップのためのパドルシフトさえ備えられる。上級車種に限って、エンジンのスタートは現代流にスタートボタン式となっていた。

 アテンザはマツダにとっては救世主であると言われる。世界的な経済不況の最中に在りながら、マツダというメーカーが存続するための牽引車の役割を果たしたからだ。2010年8月に、マツダの世界生産累計が2000万台を超えたのだが、アテンザというイメージリーダーが存在しなかったら、この数値達成もどうなったか判らない。
 マツダがアテンザのように完成度の高いモデルを開発出来た背景には、資本提携関係にあったアメリカ・フォードの存在があることは間違いない。他のメーカーがHV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)の開発を急いでいる時に、それらのことには目もくれず、ひたすら基本性能に優れたアッパーミドルクラスとなるアテンザの開発に集中していた。アテンザは後世に残る名車と言って良い。