スカイライン1800 【1969,1970,1971,1972】
名機G18型ユニットを搭載したハイバランスモデル
“愛のスカイライン”のキャッチコピーで、一世を風靡した3代目スカイライン。GT-Rによるモータースポーツでの大活躍や、ハイウエイクルーザーとして高い実力を持つ2000GTが人気を博し、月間販売台数が1万台を突破する日産の主力車種に成長する。多くのバリエーションを誇った3代目スカイラインのなかで、最もバランスに優れていたのが1969年8月に追加設定された1800シリーズだった。
スカイライン1800は、ローレル用と同じプリンス技術陣の自信作、G18型エンジンをコンパクトなボディに搭載したモデルだった。88psのG15型・1483ccエンジンでもクラストップ級のパフォーマンスを発揮していたのが、それより332cc/12psもパワフルなG18型(100ps/6000rpm、15kg・m・3600rpm)ユニットを搭載したのだから走りは鮮烈である。トップスピード165km/hを楽々とマークし加速は俊敏、とくに4速フロアシフトを組み合わせたスポーティDXは、ドライビングが楽しいスポーティセダンに仕上がっていた。
スカイライン1800の車重は1500と比較して僅か5kg増の965kg。ハンドリングは軽快で、ワインディングロードでも一級品の速さを見せつけた。1800は、スカイラインのネーミングから連想する、走りのよさを見事に具現化した存在だったのだ。しかもエンジンの吹き上がりや、エンジンサウンド、高速安定性など、走りを構成するひとつひとつの要素がドライバーのマインドを心地よく刺激した。スカイライン1800の100psパワーはぎりぎり絞りだした100psではなかった。見事に調律された100psだった。だからこそすべてに余裕が漲っていたのである。
それでも最高速などの絶対的なパフォーマンスは2000GTが上回っていた。しかし軽快な加速フィールや、シャープなハンドリングの面では1800のほうが優れていた。生粋のスカイライン・マニアのなかにはわざわざ2000GTから、1800に乗り替えるユーザーまで現れたという。
足回りはフロントがストラット式、リアがリーフリジッドの組み合わせで、スペック的には平凡だった(2000GTはリアがセミトレーリングアーム式の4輪独立)。だが巧みなチューニングによりロードホールディング能力は優秀で、限界時の特性も実にコントローラブルだった。マニュアル式のステアリングの操舵力が軽かったのも朗報だった。女性でも持て余す心配は無用。ステアリングの軽さという点で1800は、2000GTに対して大きなアドバンテージを持っていた。
しかし、走りの実力が高かったとはいえ、内外装の仕立てはファミリーカーの1500と基本的に共通。けっしてスポーティではなかった。インパネは横長の速度計を中心としたレイアウトで、タコメーターは組み込まれていない。パーキングブレーキもステッキ型だった。この点では英国製スポーツセダンのように木目パネルに多数の計器を配置した2000GTと大きな差がついた。メーカーではコンソールボックスなど多数のオプションを用意し、若々しいスカイラインイエローのボディをイメージカラーに据えたが、ファミリーカーの印象を払拭することは不可能だった。
2000GTが“羊の皮を被った狼”なら、1800は“羊の皮を被ったカモシカ”と言うべき存在だったのである。スカイライン1800は、東名高速道路が全線開通し本格的なハイウェイ時代が到来した1970年代を代表する走りの余裕が光った。もしエンジンをツインキャブでハイパワー化し、内外装を一段とスポーティに仕上げたグレードが設定されていたら、2000GTと並ぶ人気を博すシリーズへと発展したに違いない。