キャロル 【1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004】
アルトのOEM車へと切り替わったカジュアルKカー
米国フォードの出資比率を33.4%にまで引き上げ、子会社となることでバブル景気崩壊からの経営再建を図っていた1990年代後半のマツダは、1998年10月に軽自動車が新規格に移行するのに合わせて、さらなるコスト削減を実施する。それまではスズキから基幹部品の供給を受け、独自のボディを被せて軽乗用車の「キャロル」に仕立てていたが、新型ではスズキ・アルトのOEM車に姿を変えたのだ。
4代目となる新規格キャロルは、「軽自動車本来の機能を、これまで以上に高める」ことを商品コンセプトに掲げる。具体的には①日常ユースにおける扱いやすさや経済性など基本性能の向上②ひとクラス上の安全性の確保③質感を高めた内外装といった項目の実現を特長に据えた。
扱いやすさにおいては、ボディサイズを従来比で100mm長く、80mm幅広く、ホイールベースを25mm延長しながら、最小回転半径は20cm短縮の4.2mとして取り回し性を向上。同時に運転席のヒップポイントを高く設定して、良好な視界を確保した。また、新型は快適性や利便性にも配慮し、フロアとサイドシルの段差を縮小して乗降性を引き上げたり、抗菌タイプのエアコンを装備する。もちろん、ボディサイズの拡大によって室内空間自体もゆとりを増した。
経済性については、搭載エンジンの低燃費化がトピック。主力ユニットのF6A型657cc直3OHCは46ps/5.8kg・mという必要十分の出力を発生しながら、10・15モード走行燃費は18.4〜22.5km(2WD)という好燃費を達成する。一方、K6A型658cc直3DOHCユニット(55ps/6.2kg・m)はLEV(Low Emission Vehicle)化によって有害物質の排出量を大幅に抑えた。組み合わせるミッションはF6A型が4/5速MTと3速AT、K6A型が3速ATを設定。駆動機構には2WD(FF)と4WDを用意する。安全性の向上に関しては、衝撃吸収ボディや衝撃吸収パッド内蔵フロントドアの採用、ブレーキアシスト付き4輪ABS/運転席&助手席SRSエアバッグ/プリテンショナー機構およびロードリミッター機構付きフロントシートベルトといった安全装備の組み込みなどによって達成した。
マツダ版のアルト、すなわち4代目キャロルは、1998年10月に市場に放たれる。ボディタイプは3ドアハッチバックと5ドアハッチバックの2種類を設定。車種体系は2WD車がSG/ミレディ/ミレディ-Sの3グレード、4WD車がミレディ/ミレディ-Sの2グレードで構成した。グレード名に従来型と同様のネーミングを冠した点は、マツダのキャロルに対するこだわりといえるだろう。
OEM車に切り替わったキャロルは、デビュー後もベース車に合わせた改良を着実に行っていく。
1999年10月には最初のマイナーチェンジを実施し、シート地や内装デザインの変更、MT車へのクラッチスタートシステムの組み込み、K6A型リーンバーンエンジンを積み込んだ「ミレディ-L(5ドア)」(5速MT/CVT)の追加、ミレディ-SのK6A型VVTエンジン+NS制御4速ATへの換装、充実装備のお買い得車「ミレディエクストラ(5ドア)」の設定などを行う。
2000年12月になると再度のマイナーチェンジを敢行。マツダ車のアイデンティティである“ファイブポイントグリル”および大型マルチリフレクターヘッドランプを採用したほか、軽量衝撃吸収ボディの導入や搭載エンジンのK6A型系ユニットへの統一、平成12年基準排出ガス50%低減レベル“優−低排出ガス”の取得(リーンバーンエンジン車を除く)、MTの全車5速化、ベーシックグレードの変更(SG→SX)、アンサーバック付きキーレスエントリーの電波式化(従来は赤外線式)、ダイヤル式空調スイッチの導入などを実施した。ちなみに、当時のマツダスタッフは「ファイブポイントグリルの採用で、ようやくマツダ車に見えるようになった」と感想をもらしていた。