日産デザイン5 【1967,1968】

1960年代後半に展開されたオリジナルデザインへの回帰

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“スーパーソニックライン”を採用した510ブルーバード

 海外マーケットにおいてもシェア拡大を目指した日産自動車は、1960年代に入ると車両デザインに欧州デザイナーを積極的に起用した。2代目ブルーバードと2代目セドリックでは、イタリアの名カロッツェリアであるピニンファリーナに協力を仰ぎ、高級クーペのシルビアは、BMW507などを担当したドイツ人デザイナーのアルブレヒト・フォン・ゲルツから助言を受けた。この戦略は、海外市場で強いインパクトを与える。一方、国内市場ではシルビアを除いてあまり高い評価は得られなかった。欧州調のシンプルな外観やテール下がりのシルエットなどが、ユーザーから嫌われたのである。打開策として日産は、見栄えがよくてスポーティなオリジナルデザインの小型乗用車を、1960年代後半に向けて市場に送り出す。

 オリジナル造形の新世代乗用車は、1967年8月デビューの3代目「ブルーバード」(510型系)によって具現化される。三角窓を廃した直線基調のフォルムは、超音速機(スーパーソニックトランスポート)をイメージして“スーパーソニックライン”と呼称。カタログでも「ハイスピード時代の到来を告げるスーパーソニックライン!」と大々的に謳った。また、内装ではワイドなホリゾンタルラインを強調したインパネや朝顔型のステアリング、口径80mmの強力なベンチレーター、新形状のシートなどを装備し、高速時代に相応しい近代的かつ安全性に富む居住空間に仕立てる。さらに、ヘッド機構をOHC化した新設計のL型エンジン(L13型/L16型)や前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームという四輪独立懸架の足回りも注目を集めた。

気品とスポーティさが調和したハイオーナーカー

 新世代乗用車の車両デザインは、1968年3月に発表(発売は4月)された“ハイオーナーカー”の「ローレル」(C30型系)によってさらに洗練される。旧プリンス自工のエンジニアが開発を主導したC30型系ローレルのスタイリングは、「気品とスポーティさが調和した現代美」を基調とする。具体的には、大きく傾斜したフロントウィンドウに三角窓のないクリーンなサイドビュー、安定感のあるカーブドガラス、横長のテールランプが作り出す端正なリアビュー、国産初のフロントピラー設置型ラジオアンテナなどを採用した。ボディサイズやホイールベースについても、開発中の510型系ブルーバードよりひと回り大きく設定。また、見栄えのするメッキパーツをボディ各部に配備した。

 インテリアについては「余裕のある、上質で広い室内空間の確保」が主要テーマとなる。インパネを全面ソフトパッドで覆うとともに、シックなブラック基調で統一。同時に、シートやドアトリムなどをモダレートトーン(穏やかな輝きを持つ色調)のカラーリングで仕上げた。ほかにも、フルリクライニングのセパレートシートやサイドデミスター付きフレッシュエアシステムを設定し、乗員の快適性と居心地の良さを演出する。また、安全性向上のために可動式フェンダーミラーと前後席3点式シートベルト・アンカーレッジ、新しいドアロックシステム、衝突エネルギーを吸収するボディ構造を採用した。

 搭載エンジンは、旧プリンス製のG18型1815cc直4OHCユニットを使用する。サスペンションは前マクファーソンストラット/後セミトレーリングの四輪独立懸架を採用。また、ステアリング機構には応答性に優れるラック&ピニオン式を導入した。

“エアロダイナルック”を纏った3代目スカイライン

 旧プリンス自工が企画し、最終的に日産との共同開発車となった新世代モデルは、ローレルだけにとどまらなかった。1968年7月には“ニッサン”の単独ブランド名を冠する3代目「スカイライン」(C10型系)が発表(発売は8月)されたのだ。

 「幅広いユーザー層をターゲットとした、高速化時代に相応しいファミリーカー」をコンセプトに据えたC10型系スカイラインのスタイリングは、“エアロダイナルック”と称するダイナミックな空力フォルムをベースに、“サーフィンライン”と呼ぶリアサイドの特徴的なプレスラインや中央に稜線を配したボンネット、丸目4灯式ヘッドランプを組み込んだうえで左右両端を膨らませた強面のマスク、大きな起伏を持たせたトランクリッド、横長でまとめたリアコンビネーションランプなどを採用し、独創的で走行美あふれる造形に仕立てる。
 インテリアについては「初めて乗ったときからしっくり操作できる」をメインテーマにアレンジ。機能性を重視するとともにソフトパッドや木目調素材などを効果的に配し、スポーティかつ豪華な雰囲気を演出した。

 エンジンに関しては、4気筒系の1500にプリンス製のG15型(1483cc直4OHC)を採用する一方、ロングノーズのGT系(1968年9月に発表)には日産製のL20型(1998cc直6OHC)を使用し、同時にフロントセクションおよびホイールベースを延長する。シャシーについては4気筒系が前マクファーソンストラット/後リーフリジッドを、GT系には後セミトレーリングアームを組み込んだ。