スズキデザイン4 【1984,1985,1986,1987,1988】
豊かな造形で多彩なコンパクトカーを創造
1980年代前半から中盤にかけての鈴木自動車工業は、GMとの業務提携によって経営の安定化を図り、同時に海外での自動車生産も拡大展開させていた。その積極策は国内で販売するクルマにも波及し、新たなアプローチでデザインした新世代の軽自動車や小型乗用車を相次いで市場に放った。
1984年9月には、6代目となるフロンテおよび2代目のアルトをリリースする。フロンテは5ドアハッチバックのボディで構築され、ウィンドウ形状には6ライトタイプを採用。一方のアルトは3ドアハッチバックのボディを導入し、女性がスカート姿でも気を使わずに乗り降りできよう回転ドライバーズシートを新設した。2車ともにホイールベースは従来比+15mmの2175mmにまで延長され、同時にボディ高も引き上げて広い室内空間を確保。デザインは豊かな張りのあるボディ面で構成されていた。
男性ユーザーに向けた仕様をアルトにラインアップしたことも、この世代の特長だった。1986年7月には軽初の4バルブDOHCエンジンを搭載したアルトツインカム12RSを、翌1987年2月にはDOHCインタークーラーターボエンジンで武装したアルトワークスを発売。いずれのモデルもエアロパーツやバケットシートなどのスポーツアイテムを満載し、とくにワークスのRS-X/RS-Rはイエローハロゲンヘッドランプ+円形ホワイトフォグランプやバンパー一体式のフロントスポイラー&リアスカート、センターピラー/ドアサッシュブラック塗装などを採用してスペシャルなイメージを強調していた。
鈴木自工は軽自動車の刷新とともに、小型車のラインアップ拡充も積極的に行う。新しい小型車を企画するにあたり、開発陣は海外マーケットでの動向を念入りに検討する。対象となったのは、同社の主力車種であるジムニーの輸出モデル。結果的に開発陣は、ジムニーの1クラス上の4WD車、しかも都市部の走行も快適にこなせるSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)を製作する旨を決断した。
新ジャンルの4WD車は、ジムニーのノウハウを活かしたうえで全面的に新開発された。骨格となるフレームデザインは軽量・高剛性を高次元で両立するために3分割の閉断面サイドフレームと最適配置のクロスメンバーからなるハシゴ形を採用。サスペンションはフロントがマクファーソン式ストラット、リアがトレーリングリンクにセンターウィッシュボーンを組み合わせる。都会の風景に似合うスマートなルックスを持つボディには、徹底した防錆処理を施した。エンジンは新設計のG16A型1590cc直4OHCを搭載する。4WD機構には、トランスミッションとトランスファーを一体構造とするシンプルなセンタースルー方式を導入した。
1988年5月、最新の4WD車が「エスクード」の車名をつけて市場に放たれる。ボディタイプは3ドアのハードトップとコンバーチブルを用意し、廉価版として商用車登録のバン仕様も設定した。フラッシュサーフェス化したボディラインに前後のブリスターフェンダー、そして扱いやすいサイズを持つエスクードは、スタイリングや使い勝手のよさが支持され、たちまちヒットモデルに成長した。
1988年9月になると、小型乗用車のカルタスが2代目に切り替わる。初代と同様にGMと共同で開発を行ったが、2代目では鈴木自工の意見がより強く反映された。
ボディタイプは3ドアハッチバックと5ドアハッチバックの2種類が設定される。ホイールベースは従来比で20mm延長され、居住スペースが拡大。スタイリングは“有機系デザイン”の名のもと、徹底したフラッシュサーフェス処理や3次元曲面ガラスのクオーターウィンドウグラフィック、滑らかなシェイプのフロントビューなどで仕立てられた。インテリアについては、人間工学に基づいたリラックス空間を創出するようにアレンジ。具体的には、見える安心と触れる信頼を謳ったシンプルかつ機能性に優れたインパネ、ウレタン素材の見直しで乗り心地をいっそう向上させた大型フロントシート、きめ細かい調整が可能なフルエアミックス空調システムなどを導入する。
スポーツモデルとなる1300GT-iの大幅進化も、2代目のアピールポイントだった。搭載するG13B型1298cc直4DOHC16Vエンジンは、クロスフローレイアウトや油圧式ラッシュアジャスター、不等ピッチ・コイルスプリングなどを採用したうえで、アルミパイプ製インテークマニホールドとステンレス製エグゾーストマニホールドの装着やEPIおよびESAのチューニング変更などを実施する。得られたパワー&トルクは、115ps/11.2kg・mに達した。内外装ではハロゲンフォグランプやフロントエアダムバンパー、リアエンドスポイラー、サイドスカート、フルバケットシート、スポーツタイプ・3本スポークステアリング&シフトノブなどの専用アイテムを装備し、パフォーマンスに相応しいアグレッシブなイメージに演出していた。
1988年9月には3代目アルトが市場デビューを果たす。ホイールベースは2335mmにまで延長。スタイリングは直線と曲面が調和したスマートなフォルムに刷新された。乗降性に優れたスライド式ドアの採用も話題を呼んだ。