セドリック・ワゴン 【1965,1966,1967,1968,1969,1970,1971】

ピニンファリーナ・デザインの高級8シーターワゴン

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美しいピニンファリーナ・スタイリング

 日産のフラッグシップとして1960年3月に誕生したセドリックは、1965年10月にフルモデルチェンジを受け2代目に進化した。2代目の話題はなんといってもスタイリングだった。初代がサイドまで回り込んだフロントウィンドーなど、各部にアメリカ車のテーストを盛り込んでいたのと対称的に、欧州車のシックなイメージでまとめていたからだ。“フローイングライン”と名付けられた流麗な造形は、カーデザイン界の巨匠であるイタリアのカロッツェリア・ピニンファリーナが手掛けたものだった。当時の国産中型車のなかで最も長い4690mmの全長を持つロー&ワイドなシルエットは非常に美しかった。

 斬新なスタイリングは、ワゴンも同様だった。むしろロングルーフのワゴンのほうがセダン以上に伸びやかな印象を受けた。印象的な4灯式ヘッドランプからはじまる微妙な曲線で構成したボディラインに対して、大型のクロームメッキバンパー、そしてウィンドー部のクロームモールが絶妙なアクセントを演出するワゴンの造形は、高級車らしい風格と華やかな印象を醸し出した。ビジネスライクな印象は微塵もなく、広いグラスエリアが開放的なイメージを演出した。

ワゴンは3列シートの採用で定員8名を実現

 セドリック・ワゴンの個性はリアエンドにあった。リアウィンドーを3分割構造としたのだ。両サイドは固定式だったが、中央部のウィンドーは電動パワー機構によりリアゲート内に格納することが可能で、リアゲートは中央部のウィンドーを格納すると開閉することができた。軽快な印象を与える前傾したピラー角度とともに3枚のガラスを持つセドリック・ワゴンのリアビューは上品だった。控えめな小型形状のリアランプと相まってピニンファリーナ・デザインの繊細さが味わえる部分と言えた。ちなみに中央部のウィンドーはインパネとリアゲート、そしてサードシート部に配置したスイッチで開閉することができた。

 セドリック・ワゴンはセダン以上に優れたユーティリティも自慢だった。乗車定員は前席3名、後席3名に加え、荷室内に配置したサードシートの2名を加えた合計8名。サードシートと後席は別々に折り畳むことが可能で、畳むと広大なフラットスペースが出現した。高級車のセドリックだけに室内は贅沢なトリムが施され、サードシートのパセンジャー専用の灰皿(2個)とアシストグリップ、室内灯も装備されていた。カタログでは「レジャーに、ご商売に、報道関係の取材車に最適です」とその優れたユーティリティを紹介していた。

6気筒モデルのトップスピードは150km/h

 メカニズムはセダンと共通である。ボディは堅牢さと軽量さを両立したモノコック構造で、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式、リアが半楕円リーフ式のリジッド。エンジンは1973ccの直列6気筒OHVのJ20型(100ps/5200rpm、15.5kg・m/3600rpm)と、1982ccの直列4気筒OHVのH20型(92ps/4800rpm、16kg・m/3200rpm)から選べた。トランスミッションは3速タイプのコラムシフトが標準だったが、4速をオーバードライブレシオとした4速タイプと、ボルグワーナー社製の3速オートマチックも設定していた。

 セドリック・ワゴンは6気筒エンジンのJ20型を搭載した仕様ではトップスピード150km/hを誇り、パフォーマンスは一級品だった。車重が1355kgと重かったため加速はさほど目覚ましくなかったが、スピードの伸びと高速走行時の安定性はハイレベルだったという。とくにしっかりとした足回りを持ち、前後の重量配分がセダン以上に優れていたワゴンのフットワークは秀逸だった。ボール循環式ステアリングには、まだパワーアシストはなかったがリンケージの工夫により軽い操舵力を実現していたのもドライバーに好評を博した。

ライバルのワゴンの完成度を比較すると?

 セドリック・ワゴンのライバルはトヨタのクラウン・カスタムと、プリンスのグロリア6エステートだった。このうち3列シート仕様で定員8名を実現していたのはセドリックのみ。クラウンとグロリアは2列シートで定員6名にとどまっていた。後方に向いて座るサードシートはいわば補助席だったが、同じボディを用いる商業車登録のバンとの違いを明確に示すポイントだった。それだけに2列シートのクラウンとグロリアに対する大きなアドバンテージだった。

 主力パワーユニットは3車ともに直列6気筒の2.0リッター。当初クラウンは4気筒エンジンだったが、その後OHCレイアウトの新世代ユニット(105ps)に積み替えて商品力をアップした。グロリア用のエンジンもOHCレイアウトで出力は105ps。このエンジンは初代S54型スカイライン2000GT用と同型だった。エンジンの点では信頼性に優れていたもののOHVレイアウトで最高出力も100psだったセドリックは見劣りした。装備面は3車ともにほぼ同一。価格はセドリックが96万円、グロリアは99万円、クラウンは103万円だった。