ランドクルーザー・プラド 【1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996】
最強オフローダーの快適ワゴン
世界最強のオフロード向けの4輪駆動車(4WD)として知られているトヨタ・ランドクルーザーに兄弟車と言うべきワゴンモデルが登場したのは、1990年4月のこと。その名をランドクルーザー・プラドと言う。車名のプラド(PRADO)とはポルトガル語で大平原を意味する。オフロード向け4輪駆動車にはふさわしいネーミングである。
プラドは、最強オフローダーの70シリーズをベースに開発されていた。ボディと車台(シャシー)が別体の、いわゆるセパレートフレーム構造とパートタイム4WDシステムを採用しており、その意味で、第二次世界大戦後に現れたBJ系ランドクルーザーの直系と言えるモデルでもある。取り回し性に優れたコンパクトかつ軽量なボディと実用的なスタイリング(無骨とも言える)で、マニアに好評を博した。マーケティング的には、当時高い人気を誇っていた三菱パジェロのライバル。パジェロと比較してプラドはオフロードメージが強かったものの、いままで商用車登録が中心だったランドクルーザーに、ワゴンモデルが誕生したことの意味は大きなものがあった。
プラドのモデル・バリエーションは、ホイールベース2730mmの4ドアワゴン(定員8名)と、ホイールベース2310mmの2ドア(定員5名)があり、トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックのどちらかを選ぶことが出来た。
1990年のデビュー当初は、市街地での使用を優先すると言うコンセプトから、エンジンはハイラックス・サーフにも使われていた排気量2446ccのターボチャージャー付きディーゼルの直列4気筒SOHC(97ps/ 24.5kg・m)のみの設定となっていたが、1993年5月以降のモデルではエンジンの排気量をアップした2982ccのディーゼルターボ(130ps/ 30kg・m)を搭載。
良好な燃費経済性はそのままに大幅なパワー増強が図られ、当時流行し始めた「シティ・オフローダー」にも、手軽なランドクルーザーとして高い人気を得ることとなった。
1991年8月には、ワイドタイヤの装着し、前後フェンダーを拡幅して3ナンバー枠としたSXワイドがシリーズに加わったこともニュースだった。ワイドタイヤはスタイリッシュではあるものの、通常の走行では燃費の悪化やハンドリングあるいはスタビリティの低下などを招くだけなのだが、ユーザーの多くは、迫力たっぷりの3ナンバー化を歓迎した。日本特有の不思議な現象であった。
この間、ラジエターグリル形状が変更され、ボディカラーも2トーンの色調を変えるなどの意匠変更が行われている。基本的なスタイリングは変わらないものの、見た目にはよりソフトな印象を演出することに成功していた。
ボディサイズや性能、装備などの点で大きく発展したランドクルーザーの実力を気軽に実感できるモデルとして、プラドの果たした役割は大きかった。国内販売台数よりも輸出台数が桁外れに大きかったこともその事実を裏付けている。
プラドの装備は多彩。数々の新機構を積極導入する。走破性を高めるアイテムの代表は「リア電動デフロック」。スイッチ操作により容易にデフロックを可能とし、ぬかるみ等からの脱出に威力を発揮した。また4WDの利便性を高める機構として「パワーロッキングハブ」も注目を集めた。運転席に座ったまま、フロントアクスルハブとドライブシャフトの切り離し&連結操作が出来るため2WD走行時の快適性&燃費を高めることが可能だった。
快適性面では「CDプレーヤー一体5スピーカーオーディオ」や「サスペンションシート」、「電動ムーンルーフ」、「エクセーヌインテリア」が好評を博す。当時の高級サルーンを凌ぐほどの充実ぶりが目を惹いた。とくにドライバーの体重に合わせて設定を調節できる上級グレードに標準のサスペンションシートの完成度は高かった。ライバルのパジェロにも導入されていたが、シート自体の出来がよかったこともあり快適性はプラドが勝っていた。