ウルトラセブン ポインター号ほか 【1967,1968,1969,1970,1971,1972,1973】

「地球を守る」隊員を支えたカスタム車

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少年の心を熱くしたポインター号

 1967年10月から放映を開始した『ウルトラセブン』には、ウルトラ警備隊が駆る特殊車両として「ポインター号」が使われた。ウルトラ警備隊は地球防衛軍の組織であるTDF(Terrestrial Defense Force)の精鋭が集まった極東基地の部隊で、その任務を遂行する水陸両用車としてポインター号が造られたのである。

 ポインター号の基本デザインは、宇宙人や怪獣の造形などを手がける成田亨氏が担当した。ベース車両は10年落ちの中古車だった1957年型のクライスラー・インペリアル・カスタム。これをベースに、主に前後ボディ-
を“切った貼った”し、独創的な近未来的なフォルムを構築する。主要装備はヘッドライド下に配置した2門のレーザー機関砲をはじめ、ナンバープレート下部に設けた格納式レーダー探知機、グリル内部に設置した煙幕噴射装置、フォグランプを機能変更した透視光線装置、リアウィンドウ下に内蔵する2基の3連装ウルトラミサイルなど、創意工夫が凝らされていた。

 想定エンジンも注目だ。当時の児童誌の解説によると、前部にロータリーエンジンとジェットエンジン、後部にジェットエンジンという3ユニットを搭載するという。おそらく通常はロータリーエンジンのみで走行し、いざというときにジェットエンジンが機能する仕組みなのだろう。もちろん、撮影時の走行はベース車のレシプロエンジンで行われた。
 ポインター号はセブンの収録終了後、全国の撮影会で活躍する。その後、東京都内の幼稚園に寄贈されたという。

レースメカが改良したMATコスモ

 セブンの放映終了から2年半あまりが経過した1971年4月、新たなウルトラシリーズとなる『帰ってきたウルトラマン』の放送が始まる。怪獣などから地球を守るために編成された組織は、MAT(Monster Attack Team)と呼ばれた。
 このMATの特捜車両として使われたのが、「MATビハイクル」である。ベース車はL10A型の初代コスモ・スポーツ。ポインター号とは異なり、ベース車をほぼそのまま使用して、改造箇所はMATのエンブレムや赤いストライプの装着などにとどめていた。

 このMATビハイクルで特徴的なのは、話の中でレーサーのメカニックがチューニングを手がけている点にある。ウルトラマンに変身する前の主人公の郷秀樹は、元々レーサー志望だった。彼が師事し、信頼を寄せていたのが元レーサーで、怪我によりチーム運営&メカニックに転進していた坂田健である。坂田はMATビハイクルの完成度を高めるために専用のリアウィング(劇中ではスタビライザーと表現)を考案し、コスモ・スポーツに装着したのだ。当時はモータリゼーション発展の絶頂期で、スポーツカーのチューニング方法も徐々に浸透し始めていた。現実味を帯びたMATビハイクルの改造方法は、現在の目で見るとかなりマニアックな演出だったのである。

目立度ではトップクラスのZATカー

 数あるウルトラシリーズのなかで最も派手で目立つ特殊車両は、1973年4月から放映された『ウルトラマンタロウ』で使われたZAT(Zariba of All Terrestrial)カーだろう。ZATは地球外からの脅威に立ち向かうために特別編成された部隊で、その特殊車両として使用されたのが「ウルフ777」と「ラビットパンダ」だった。

 当時は大改造を施した華美なトラック、通称“デコトラ”が流行の兆しを見せていた。その手法をいち早く取り入れ、とにかく派手で目立つ演出を施したのがウルフ777とラビットパンダの2台である。ウルフ777は角型2灯式ヘッドライトの50型系3代目クラウンがベース。2ドアハードトップのボディーには鋭角的なフロントノーズと大きなリアウィングが装着され、ルーフ部にもミサイル砲の巨大ユニットが置かれていた。

 一方のラビッドパンダは、初代バモス・ホンダの2人乗り仕様をベースにする。フロントにはピエロの鼻のようなノーズを装着。リアボディーは斜めにスラントしており、そこに巨大なリアウィングを組み込んだ。ルーフ部には大きなレーダーユニットを装備している。
 子供たちの注目度は満点だったZATカーの2台。ある意味、ベース車のカッコよさを生かしたMATビハイクルとは対極的な演出方法といえるだろう。