サンバー 【1973,1974,1975,1976,1977,1978,1979,1980,1981,1982】

トラックの実力を磨いた3代目

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イメージキャラクターは大関貴乃花!

 1973年2月に登場した3代目サンバーは、“剛力”をキャッチコピーにとくにトラックの実力を磨き込んでいた。イメージキャラクターには当時の角界で高い人気を誇った大関貴乃花を起用。小粒ながら強靱かつ俊敏なサンバーの美点を訴求した。

 SUBARU360のメカニカルコンポーネンツを利用した軽コマーシャルカーとして1961年に登場したサンバーは、生活に密着した“働き者”として高い人気を博した。その人気は1966年にモデルチェンジした2代目でも健在だった。しかしトラックとバンの2種のラインアップのうちトラックは、2代目になると販売がやや鈍っていた。リアエンジンのメリットを生かした走りや低床フロアーは評価されていたものの、ライバルに対して荷台スペースが狭いことが災いしたのだ。3代目はトラックのユーティリティアップがメインテーマとなった。

クラス最大の荷室スペースが自慢

 “剛力サンバー”のトラックはクラス最大の荷室を実現してデビューする。荷台長は1870mm、しかもバックドアに“えぐり”をつけるアイデアで実質荷室長1935mmを確保していた。荷台幅も1230mmと十分。ドラム缶なら6本、容量175Lの冷蔵庫だと3個、普通畳は16枚が積め、最大積載重量も350kgと余裕しゃくしゃくだった。卓越した広さとユーティリティはユーザーに多いにアピールする。エンジンも剛力だった。28ps/5500rpm、3.8kg・m/5000rpmを発揮する水冷の2サイクル2気筒ユニットは低回転域から十分なトルクを生みだし、荷物を満載しても加速は強力。先進の電動ファン式の冷却システム導入でパワーロスもなく、スバル独自のISV機構(アイドル・サイレンス・バルブ)の効果で静粛性もハイレベルだった。また3代目からエンジンが水冷となったため冬季のヒーター能力も強力になった。

 もともとライバルに差をつけていた足回りとトラクション能力は一段と磨かれていた。クラス唯一の前後セミトレーリングアーム式4輪独立システムは荒れた路面でもしなやかさを保ち、パッセンジャーはもちろん荷物にとっても優しい走りを保証した。さらにDOJ(等速ジョイント)の新採用で200mmの最低地上高を確保。悪路での安心感も高めていた。サンバーのリアエンジン・レイアウトは駆動輪である後輪に有効な荷重が掛かるためトラックに適していたが、3代目は剛力を名乗るだけに、さらに逞しさを増していたのだ。カタログでは乗鞍岳の急峻な山岳路で行ったテスト風景を掲載し、タフぶりをアピールする。また耐久性面でもよく煮詰められていた。ボディの約70%にサビに強い亜鉛メッキ鋼板を使用。フレーム剛性を見直すことで長期間の酷使に耐えるロングライフ性能を身に付けたのである。

豊富なバリエーションでユーザーを魅了

 バリエーションは豊かだった。トラックは後方のみの一方開きの標準仕様のほかに左右も開く三方開きと、荷室地上高440mm(標準仕様は655mm)の低床式を用意。さらにトラックのシャシーに荷室高1280mmの密閉キャビンを組み合わせたパネルバンも選べた。

 ライトバンは左右にリアスライドドアを配置した5ドアと、左側のみの4ドアをラインアップした。ちなみにもともと人気の高かったライトバンは上級グレードのカスタムLでは前席リクライニングシートを採用。オーディオやベンチレーション機能も充実させワゴンを名乗るに十分な快適性を実現していた。ライトバンの荷室長は1600mmで、375mmと抜群に低い荷室地上高によりユーティリティも抜群だった。
 サンバーはユーザーフレンドリーなスバルの思想を反映した存在だった。使い勝手が吟味されしかもまさに“剛力”を名乗るに相応しい逞しさは、多方面から大好評を博した。

サンバーベースのダンプカーの実力

 サンバーには多用な特装モデルが設定されていた。キュートなダンプカーもその1台だった。ダンプカーは「ミニフジマイティー」というネーミングで、最大積載量は通常のトラックと同じ350kg。土砂用と塵芥用があり、使用目的によってホッパー(荷台部分)の深さが異なっていた。ホッパーは塵芥用が深く、土砂用は浅めの設計だった。ミニフジマイティーの特徴はホッパーを上下させる油圧シリンダーの駆動にエンジンを使わず、車載バッテリーでモーターを駆動しコントロールしたことだった。このためホッパー上下時も音は静かで、住宅地や夜間での作業にも適していた。ちなみにRR方式のサンバーは、車両中央部にメカニズムパーツがないため、油圧シリンダーなどダンプトラック特有の機構を収めるのが楽だったという。価格は土砂用が78万円、塵芥用が80万5000円だった。