カローラ・スパシオ 【1997,1998,1999,2000,2001】
エポックメーキングな小さな3列シート車
初代カローラ(1966年)のデビューから、30年以上の歳月が経過した1997年。代で言えば、8代目にあたるモデルの時である。新たなボディタイプがカローラシリーズの一員に加わった。背の高い5ドアワゴンスタイルで、スパシオというサブネームの持ち主だった。
カローラシリーズには、セダンやワゴンのほか、2ドアのレビンをはじめ、ハッチバックのFX、4ドアハードトップのセレスなど、多くのボディラインアップが存在。カローラシリーズは、多様なバリエーションを持ち、多くのニーズに応えていた。RVブームが加熱していた時代に加わった新顔のスパシオは、ミニバンとしての魅力を備えたモデルであった。
スパシオは大きく分けて2つのシリーズを持っていた。ひとつがワゴンとしての個性を追求したモデルで2列シートの4人乗り。そして、もうひとつが、ミニバンとしての使い勝手を凝縮した3列シートの6人乗りである。小さなボディーに3列シートを詰め込んだ、この6人乗りがとくに話題を呼んだ。
ボディは、6人乗り、4人乗りともに共通である。全長4135×全幅1690×全高1620mmのスリーサイズは、セダンのカローラと比べて、150mm短い一方、235mmも背が高い(幅は共通)。ホイールベースは2465mmでセダンやセレスと共通だった。ドア形状は、フロントドア、リアサイドドアともにサッシュ付きドアの前ヒンジという一般的なもので、リアゲートもはね上げ式となっていた。スパシオのデビューから4カ月の1997年5月にデビューしたラウムはリアサイドにスライドドアを採用。リアゲートは横ヒンジ式。ラウムに比べ、オーソドックスなスタイルでドア回りを構築したスパシオだが、その独創的なシート配置が十分に個性を発揮していた。
6人乗りスパシオの室内を見ていこう。まず、フロントのドアを開けて、出現するフロントシートは、センターにシフトレバーを置いたセパレート式の一般的なもの。これは、6人乗りだけでなく、4人乗りともに共通する。次に、リアサイドドア開けてみると、2名掛けのセカンドシートが目の前に現れ、後方に目を移すともう1列の3列目が続く。
セダンに比べて150mmも短くしたボディにこれだけのシートを用意した点は誰もが目を見張ったものだ。実際に腰掛けてみるととくに2列目シートは小型のものであり、2列目、3列目ともにヒザまわりのスペースはミニマムだった。しかし、助手席の向きを後方に回して後席と対座ができたり、2列目シートバックを倒してテーブルにできたりと、6人での移動を可能にしていた以上にそのシート配置とアレンジは意義あるものとなっていた。
この2列目シートは、脱着が可能。取り外せば3列目に着座したパッセンジャーの足元のスペースは飛躍的に拡大。足を組むことも可能だった。しかも、脱着式のセカンドシートは、ドライブ先で取り外せば、オプションのシートアタッチメントを用いて、車外でベンチとして活用可能。アウトドアシーンなどで便利なシートとなっていた。
もういっぽうの4人乗りは、セカンドシートを最初から持たない仕様で、リアシートは、6人乗り同様、300mmの前後スライドが可能。荷物の量や好みに合わせて、任意に着座位置を調整できた。メーカーでは、1列目に2名、2列目に2名、3列目に2名の6人乗りを「2-2-2」と呼び、2列目を省略した4人乗りを「2-0-2」とした。
搭載エンジンは、1587ccのハイメカツインカム(直列4気筒DOHC16V)で、最高出力110ps/5800rpm、最大トルク15.2kg-m/4600rpmを発揮。トランスミッションは電子制御式4速ATのみを組み合わせた。駆動方式は、当初、FFのみをラインアップした。
4名乗りと6名乗りでスタートしたスパシオ。発売から6カ月の1997年7月に、5名乗りが登場した。3名掛けのリアシートを持つ2列シート仕様で呼称は「2-3」タイプ。後席のシート幅を拡大し、3名掛けを可能にしたのだ。その結果、前後スライド機構は省かれたが、リアシートの居住性を大幅に改善。ハイトワゴンとして見れば快適な乗り心地とラゲッジの積載性がバランスよく確保された魅力あるモデルに仕上がっていた。
シートアレンジは、他のタイプ同様のフルフラットシートのほか、左右分割でのダブルフォールディングが可能だった。5名乗り「2-3」タイプの追加のほか、同時に、4WDモデルも登場。こちらは1.8Lエンジン(120ps)を搭載した。