ジムニー 【1998〜2018】

機能を突き詰めた万能コンパクト4WD

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圧倒的な走破性を誇る実力派

 ジムニーは日本が世界に誇る本格コンパクト4WDである。究極の実用車、という呼び方が相応しい名車だ。とくに軽自動車の規格改定に合わせて1998年10月に誕生した3代目の完成度は高い。
ジムニーの特徴は、圧倒的な走破性にある。3代目も1970年4月デビューの初代、1981年5月に登場した2代目と同様に頑丈なラダーフレームと、前後リジッド構成の足回りを採用。駆動方式はパートタイム式4WDで、副変速機付きのトランスミッションを備える。

ジムニーのメカニズムはクロスカントリー4WDの王道。最低地上高200mm。アプローチアングル49度、デパーチャーアングル50度というスペックは伊達ではない。ジムニーは道なき道でも平然と走り抜ける実力を持っている。軽自動車ならではのコンパクトなサイズ(全長×全幅×全高3395×1475×1715mm・XC)も大きな武器だ。狭い林道でも持て余すことなく、自然のふところに飛び込める。雪道での適性も高く、歩くのが困難な泥濘地もしたたかにこなす。ジムニーの走りには心底驚く。大型4WDと比較して、ボディ重量が大幅に軽いため、足場の悪いオフロードでも沈み込みにくく。それが優れた走破力を生んでいるのだ。その気になればジムニーに走れない道はない。それほどの実力派である。

オンロードを含め走りはハイレベル

 優れた悪路走破性と、オンロードでの快適性を高次元で融合したのもポイントだ。前後ともにコイルばねを用いたサスペンションは、十分なショック吸収能力を持ち、市街地走行をスムーズにこなす。乗用車と比較すると相応の固さを感じるが、不快ではない。それどころか軽快な印象をもたらす要因になっている。高いアイポイントからの視界も良好で、ジムニーで走ると走り慣れた道でもなぜか新鮮に感じる。新しい発見がある。散歩気分で市街地を走り回るのは実に楽しい。

その楽しさをサポートするのがエンジンである。パワーユニットは直列3気筒DOHC12 Vターボ。658ccの排気量から64ps/6500rpm、10.8kg・m/3500rpmの十分なパワー/トルクを発揮する。このエンジンは小排気量エンジンらしくレスポンスよく軽快に吹き上がり、ターボ効果が低回転から実感できる名機だ。5速MTはもちろん、4速ATを選んでも、パフォーマンスは十分。右足を深く踏み込むと胸のすく加速を披露する。さすがに高速道路でのクルージングでは少し騒々しいが、パワー面での不満はさほど感じない。

機能が凝縮した愛すべき“道具”

 室内パッケージングもよく考えられている。リアに横開き式ゲートを持つワゴンボディは、室内長×幅×高1565×1220×1210mmの十分な居住スペースを確保。後席は足元スペースこそミニマムだが、短時間なら大人が十分に座れる。ラゲッジスペースも分割可倒式の後席を畳むとミニワゴン並み。しかも前席をフルリクライニングさせて後席とつなぐと、フィールドでの仮眠スペースが生まれる。ジムニー1台あれば、日常のほとんどの用途は快適にこなせる。「セカンドカーとして購入したが、いつのまにかファーストカーはガレージに眠りっぱなし。ジムニーがファーストカーの座に就いている」という話を周囲からよく聞くが、確かにこの走りの実力と、優れた使い勝手ならうなずける。

機能が凝縮し、作り手の意思が感じられる道具は、長く愛される。ジムニーはその典型である。軽自動車のコンパクトな規格のなかに、無限の可能性を封じ込めた大物。スズキのユーザーニーズを真摯に捉え、一歩先の未来を実現する企業イズムが見事に結実した名品だ。ジムニーが世界で愛されているのは、機能の裏付けが存在するからである。