レンジローバー・スポーツ 【2014~】

“ブランド史上最速”を謳った第2世代の高性能SUV

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第2世代の高級クロスオーバーSUVの開発

 ポルシェ・カイエンやBMW・X5、メルセデス・ベンツGLクラス、アウディQ7などとともに高級クロスオーバーSUVのカテゴリーを牽引したランドローバー社のレンジローバー・スポーツ(2004年デビュー)。強力なライバルが増えるなか、世界市場におけるシェアをさらに拡大させようと、ランドローバーの開発チームは次期型レンジローバー・スポーツの企画を精力的に推し進めていった。

 4代目レンジローバー(2012年デビュー)と同時期に並行して企画が進められた第2世代のレンジローバー・スポーツは、クラス最高峰のオールテレイン性能に加えて、ランドローバー史上最高のオンロードダイナミクスの実現を目指して開発が行われる。また、内外装の演出に関してはレンジローバーシリーズに共通するデザインDNAを受け継ぎながら、より上質でスポーティ、しかも洗練されたデザインに仕立てる旨を決定。安全や環境性能を高める新技術も積極的に盛り込むこととした。

「ランドローバー史上最速」の称号を掲げて市場デビュー

 第2世代のレンジローバー・スポーツは2013年3月開催のニューヨーク・ショーでワールドプレミアを飾り、市販に移される。キャッチコピーは「ランドローバー史上最速、最も俊敏、最もレスポンスに優れたモデル」。日本では2013年11月開催の東京モーターショーで初公開し、同月に発売された。

 新しいレンジローバー・スポーツの基本骨格には、プレス加工パネル、鋳造パーツ、押出成形および圧延アルミ材などを組み合わせ、同時に荷重がかかる箇所を強化したクラス初のオールアルミニウム製モノコックボディ構造を採用する。プラットフォーム自体は従来比で39%ほど軽量化。ホイールベースは従来比で178mmほど長い2923mm(日本仕様の表記は2920mm)に設定した。懸架機構は主に軽量アルミニウム部品で構成する前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンクに、クロスリンク電子制御の第5世代エアサスペンションを組み合わせる。先進機構として、絶えず走行状況をモニタリングして自動的に足回りなどのセッティングを最適化するテレインレスポンス2オート、油圧式のロール&ヨーモーメントコントロールにより操縦性や走行安定性を向上させるダイナミックレスポンスも設定した。一方で操舵機構には、新開発の電動パワーステリングを採用する。操舵フィールは低速域で従来よりも軽くレスポンスに優れた感触に、高速域では安定性を重視した硬質なフィールにセッティングした。

 搭載エンジンはガソリンユニットの306PS型2994cc・V型6気筒DOHCスーパーチャージャー(340ps)と508PS型4999cc・V型8気筒DOHCスーパーチャージャー(510ps)、ディーゼルユニットのTDV6・2993cc・V型6気筒DOHCターボ(258ps)とSDV6・2993cc・V型6気筒DOHCターボ(292ps)でスタートし、後にディーゼルユニットのSDV8・4367cc・V型8気筒DOHCターボ(339ps)やディーゼルハイブリッドのSDV6+モーター(システム合計出力340ps)を設定する。トランスミッションにはZF製8HP70の電子制御式8速ATをセット。駆動システムにはフルタイム・インテリジェント4WDシステムを採用した。

 4WDシステムには2種類を用意する。ひとつはローレンジオプション付きのツインスピードトランスファーボックスで、過酷なオフロード走行に対応するべく前後のトルク配分を50:50に初期設定し、状況に応じて前または後ろの100%ロックも可能とした。もうひとつのシステムはツインスピードトランスファーボックスよりも18kgほど軽いトルセンデファレンシャル付きシングルスピードトランスファーボックスで、最大グリップをもつアクスルにトルクを自動配分。その際、トラクションコントロールシステムも共に作動し、あらゆる状況下で優れた路面追従性を提供する。通常の前後のトルク配分は42:58で、これはドライビングダイナミクスを最適化するために後輪駆動寄りのトラクション設定とした結果だった。

ダイナミックでモダンな車両デザインを創出

 エクステリアについては、ダイナミックかつモダンなデザインで構成する。基本アレンジにはレンジローバーファミリーのシグネチャーであるクラムシェルボンネットにフローティングルーフ、サイドフェンダーベントを採用し、そのうえで大胆な造形のホイールアーチグラフィックやホリゾンタルボディフィーチャーライン、特徴的なロッカーモールディング、独自のグラフィックで仕立てたヘッドランプおよびテールランプ、プレミアムグロスブラック仕上げのピラーなどを採用した。

 インテリアは、室内空間を広げて居住性を向上させるとともに、スポーティな演出を施して独自のキャビンスペースを構築する。キャビンにおける中心的な存在はインパネの水平要素とセンターコンソールの垂直ラインに挟まれたインターセクション部で、これによりドライビングへの期待を大いに盛り上げた。シート配列は乗車定員5名の2列式と同7名の3列式をラインアップ。表地には厳選したレザーなどを豊富に採用した。

充実した第2世代モデルの装備群

 エクイップメントの充実ぶりも訴求点だ。走行面ではドアミラーに配したセンサーが水深を検知してリアルタイムでビジュアル表示するウェイドセンシングやアンダーステアを抑制するトルクベクタリング、ACC(アダプティブクルーズコントロール)キューアシスト機能、ブラインドスポットモニター、縦列駐車支援システムのパークアシスト、リバーストラフィックディテクション、アダプティブキセノンオートヘッドランプといった先進機構を設定。

エンターテインメント面では12.3インチの液晶画面を組み込んだバーチャルインストルメントパネルや10種類のカラーが選べるLEDインテリアムードライティング、デュアルビューのタッチスクリーン、英国Meridian製の高級オーディオシステムなどを用意していた。

ハイパフォーマンスモデルの「SVR」を設定

 大きな進化を果たした渾身作の2代目レンジローバー・スポーツは市場でも高く評価され、年間の世界販売台数は従来の5万台レベルから一気に8万台超えにまで引き上がる。この人気をさらに高めようと、ランドローバーは積極的に車種設定の拡大や中身の改良を図っていった。

 2014年8月には、ドライビングダイナミクスにフォーカスしたハイパフォーマンスモデルの「SVR」を発表する。企画を担ったのは、スペシャルオーダーや最高級のラグジュアリーエディション、高性能を誇るパフォーマンスモデルなど各種のランドローバー特別モデルの開発や製造を手がけるスペシャルビークルオペレーションズ(SVO)部門。搭載エンジンは4999cc・V型8気筒DOHCスーパーチャージャーをベースにチューンアップを施した専用ユニットで、パワー&トルクは550ps/680Nm(69.3kg・m)を発生する。出力アップに即して、クロスボルト留めのメインベアリングキャップや専用鋳鉄製シリンダーライナーなどをセット。排気系には電子制御式2ステージアクティブエグゾーストシステムを装備した。

 組み合わせるトランスミッションは改良版の電子制御式8速ATで、シフトタイミングを最大で50%ほどクイック化。フルタイム4WDシステムの最適化も図る。足回りはサスペンションのセッティング変更およびブッシュ類の強化やコンチネンタル社製SportContact5タイヤ(295/40R22)+22インチアロイホイールのオプション設定、冷却機能を強化したブレンボ社製ブレーキシステムの装着などを実施した。

 エクステリアついては、エアインテークを組み込んだ新形状のフロントバンパーやベントを改良したクラムシェルボンネット、グロスブラックメッシュ仕様のグリル、高い位置に取り付けたリアスポイラー、クアッドエグゾーストパイプやグロスブラックのディフューザーと一体デザインとしたリアバンパーなどを装備。インテリアには、ホールド性の高いパフォーマンスレザーシートやターンドアルミニウムトリムなどを採用した。ランドローバー史上最速となるSVRは、0→100km/h加速が4.7秒、最高速度が電子リミッター制限で260km/hを発揮。また、ドイツのニュルブルクリンク北コースで実施したテストでは、8分14秒という当時の量産SUVの最速ラップを記録した。

積極的にアップデートを実施

 2015年モデルになると、オフロードの走破能力を高める新機構のATPC(オールテレイン・プログレス・コントロール)を設定。また、TDV6エンジンの過給器をツインターボチャージャーからボールベアリング式シングルターボチャージャーに変更して燃費性能の向上を成し遂げる。SDV6エンジンもキャリブレーションの細部変更などによって306psにまでパワーアップした。装備面ではヘッドアップディスプレイ(HUD)を新採用。カスタマイズの選択肢も拡大させた。

 2016年モデルでは、380psの最高出力を発生する改良型の2994cc・V型6気筒DOHCスーパーチャージャーエンジンを搭載したHSTグレードを新設定したことがトピックとなる。このHSTには、専用の内外装デザインも採用していた。一方、2016年モデルではSDV8エンジンへのスタート&ストップ技術の導入を実施。さらに、車両後部の下で足を左右に動かしてテールゲートをハンズフリーで操作できるジェスチャーテールゲートを装備した。

 着実なバージョンアップを果たしたレンジローバー・スポーツは、年間の世界販売台数も堅調に伸び、2015年と2016年は8万7000台規模に達する。ランドローバーの高級クロスオーバーSUVの道程は、第2世代に入ってさらなる進歩と広がりを見せたのだ。