サニー・クーペ 【1977,1978,1979,1980,1981】
軽快な走りで魅了したスタイリッシュモデル
サニー・クーペは1968年3月に登場した初代から一貫して軽快な走りとスタイリッシュな造形でユーザーを魅了してきた。1977年11月にモデルチェンジし、1979年10月にマイナーチェンジした4代目サニー・クーペも、初代以来の美点を見事に継承した人気モデルだった。
4代目サニー・クーペは、3代目が曲面基調とボリューム感重視のスタイリングを纏っていたのと対照的に、直線基調のシャープな造形でまとめたのが特徴だった。しかも3代目の美点だった上質さはそのままに、サニーというブランドに期待されるスポーティなイメージをうまく盛り込むことで、ユーザーの支持を獲得する。
最大のライバルだったカローラ&スプリンターと比較すると、大型リアゲートを採用することでスポーツワゴンに匹敵するユーティリティを実現していたのがセールスポイントだった。カローラ&スプリンターにもリアゲート付きのリフトバック・モデルはあったが、その造形はちょっぴり優雅さに欠けていた。一方スタイリッシュなカローラ&スプリンターのクーペやハードトップにはリアゲートがなかった。サニー・クーペはスポーティで躍動的なスタイリングと、高いユーティリティという要素を1台のなかにうまく融合していたのだ。ユーザーの多様なユーザーニーズにマッチするのはサニー・クーペだった。
しかしサニー・クーペが質感でカローラ&スプリンターに差を付けられていたのも事実。塗装の質感や、内外装の作りこみは明らかにカローラ&スプリンターが勝っていた。機能面では優位に立っていたサニーが、人気が高かったとはいえ販売面でカローラ&スプリンターに後塵を拝していたのは、もっぱら質感で差をつけられていたからだった。
1979年10月のマイナーチェンジでは、質感の向上がメインテーマとなった。具体的にはフロントマスクを中心としたエクステリアと、内装を一新することで大幅なグレードアップを目指していた。フロントマスクは、クーペを含めた全車をスラントノーズ化し、角型ヘッドランプを与えることで、モダンで精悍なイメージを演出した。とくにクーペではメッシュタイプの黒色ラジエターグリルの採用でアクティブな印象を一段と強めた。安全性を重視した前後の大型バンパーと、スラント&角型ヘッドランプの組み合わせは、4代目サニーのシャープなラインを一層際立たせることに成功する。とくにワインレッドのイメージカラーに塗られたモデルはスポーティさと上質なイメージをうまく表現した。
一新されたインスツルメントパネルも好印象だった。メーターレイアウトは上級モデルのバイオレットやオースターを彷彿させるクリーンな表現。助手席側のパッド形状を見直すことで開放感を一段と高めたのも朗報だった。機能面でも中級グレード以上に運転席ランバーサポートを採用したり、従来1速を左下に配置していた5速トランスミッションのシフトパターンを、使いやすい1速が左上のパターンに変更したのも光った。ちなみにベースグレードを除きタコメーターが標準装備となり、上級車の時計がクオーツ式になったのも1979年10月のマイナーチェンジからだった。
走りの面では、もともと評価が高かったため、1979年10月の改良では手を入れていない。しかし翌年の1980年10月に、それまで1171ccと、1367ccだったエンジンラインアップを、それぞれ1270ccと1487ccに拡大し、走りをリフレッシュした。トップグレードのクーペ1500SGX-EのA15E型エンジンは電子制御インジェクションとの組み合わせで92ps/6000rpm、12.3kg・m/3600rpmをマーク。最高出力こそそれまでのA14E型と同等だったものの、0.5kg・m太くなったトルクにより俊敏な走りを披露した。車両重量が僅か875kgと軽量設計だったこともあり、パフォーマンスは鮮烈で、高速道路はもちろんワインディングロードでも1.6リットルクラスのスポーティカーと同等の速さを見せつけた。
サニーは1981年10月のフルモデルチェンジで駆動方式をFFに変更し、合理的な設計に進化する。結果的にFRレイアウト最終モデルとなった4代目のサニー・クーペは初代以来の素直なフットワークを愛するマニアにとって、かけがえのない存在となった。