日産ECO02 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】

量産モデルに至るまでの日産のEVに対する取り組み

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コンセプトEVである「FEV」の進化

 地球規模での環境保護がクローズアップされるようになった1990年代、自動車業界でも環境対応車を本格的に開発する機運が急速に高まった。新しい環境対応車には、どのような動力源がふさわしいのか−−。そのひとつの回答として、日産自動車は動力源にモーターを用いる、いわゆるEV(Electric Vehicle)の開発に力を入れる。そして東京モーターショー(TMS)で「FEV」(Future Electric Vehicle)として披露した。

 最初にFEVがTMSの雛壇に上がったのは1991年で、前輪左右に配置したモーター(20kW×2)に23個のニッケルカドミウム電池、そしてCd値(空気抵抗係数)0.19のエアロボディを採用する。1充電当たりの航続距離は10モード走行で100km、40km/h定速走行で250kmと公表された。

 1995年開催のTMSでは、現実味を増したFEV-IIを披露する。モーターは電磁気解析シミュレーションを駆使して得た最適磁気回路を組み込む小型・高回転タイプ。バッテリーにはソニーと共同で開発したリチウムイオン電池を採用した。スタイリングはQuiet/Clean/Simple/Smoothを表現したデザインとし、車体上部と下部をウエストラインで明確に分けた独創性あふれるルックスに仕立てる。さらに、新開発のポータブル充電器やタイマーおよびリモコンでの操作が可能なプリセットエアコンなどの先進アイテムも装備した。

市販モデルをベースとした2台のハイトワゴン型EV

 日産は1990年代後半に入ると、市販ハイトワゴンをベースとするEVの販売を手がけるようになる。1997年には、市販EVで初めてリチウムイオン電池を搭載した「プレーリージョイEV」をリース形式で発売。インダクティブ(電磁誘導)充電システムや永久磁石同期モーターも組み込んだ先進EVは、1充電当たりの航続距離で200km以上(10・15モード走行時)を実現した。

 1998年になると、MAV(マルチ・アメニティ・ビークル)と称するルネッサのEV仕様「ルネッサEV」がリリースされる。搭載するリチウムイオン電池と永久磁石同期モーターは、ともにプレーリージョイEV用よりも進化。コントローラーには32ビットの新型高速プロセッサーを組み込む。1充電当たりの航続距離は、10・15モード走行で230kmを達成した。また、ルネッサEVは「アルトラEV」の車名で米国にも輸出。エネルギー関係各社やロサンゼルス市の水道・電気局、サンタモニカの警察などに納車された。

都市型コンパクトEVの開発

 ハイトワゴン型EVを生み出す一方、日産の開発陣は都市型のコンパクトEVにも注力する。開発テーマは“人と街と一緒に暮らすパートナー”。当時の電池は充電効率がまだまだ低く、1充電で数百kmの長距離ドライブを行うのは困難だった。しかも充電施設を整えるには大きなコストがかかることが予想された。そのために日産は、都市部での使用を想定したコンパクトEVの開発を目指したのである。

 都市型EVの基本骨格には、小型・軽量で高い剛性も確保したアルミ押し出し材のスペースフレーム構造、“HYPER BODY”を採用する。また、バンパーやフェンダーなどの樹脂部品にはリサイクル材を取り入れた。肝心の動力源には、33ps(24kW)/13.3kg・m(130Nm)のパワー&トルクを発生する新開発のネオジム磁石同期モーターを積み込む。モーターとインバータは一体化して軽量・コンパクト化を達成。その上で理想的な重量配分となる前49:後51のリアミッドシップレイアウトを採用した。電池は、エネルギー密度90Wh/kg、パワー密度300W/kg、サイクル寿命1000サイクル超のリチウムイオンバッテリーを車両中心付近のフロア下に搭載する。充電システムにはインダクティブ充電を導入した。

横浜みなとみらい地区で実証実験スタート

 日産が提案する都市型EVは、1997年開催のTMSでプロトタイプが公開される。車名は“従来のクルマの概念を超越した超小型電気自動車”の意味を込めて、「Hypermini」(ハイパーミニ)を名乗った。ハイパーミニはショーデビュー後、前述した新機構の完成度を高めていく。そして1999年9月に量産モデルの発表にこぎつけ、2000年2月から限定的な販売を開始した。車両規格は軽自動車で、乗車定員は2名。最高速度は100km/hに達し、1充電当たりの航続距離も最高115kmを実現した。

 新しい都市型コンパクトEVとして登場したハイパーミニは、横浜みなとみらい21地区での「都心レンタカーシステム」や海老名市(神奈川県)での「海老名プロジェクト」、京都市での「京都パブリックカーシステム」などの共同利用システムの実験が行われ、その際にはICカードのキーシステムを使った先進の車両管理も実施された。