ローレル 【1972,1973,1974,1975,1976,1977】
豪華なスタイルに一新した2代目“月桂冠”
1960年代終盤に開拓された日本の“ハイオーナーカー”市場において、最大のライバルであるトヨタ自動車工業のコロナ・マークIIの後塵を拝したC30型系の初代ローレル。同車のフルモデルチェンジを企画するに当たり、日産のスタッフは徹底的な市場動向調査を敢行する。その結果、ハイオーナーカーのユーザー層はより豪華で見栄えがする内外装と、他人に自慢できる高性能を有するモデルを求めていることが分かった。
開発陣は早速、得られた調査結果を次期型ローレルの企画に盛り込んでいく。目指したのは「思い切ったイメージアップ」。具体的には「豪華さと高品質を誇るクルマ」の完成に主眼を置き、1)ダイナミックで優雅なスタイルを構築する㈪高級小型車にふさわしく、クルマの大きさを小型クラスと中型クラスの中間まで大きくする㈫高級車のシンボルである6気筒エンジン搭載車を新設定する 2)超豪華スポーティ車から6人乗りのファミリーユース車まで豊富な車種を設定する 3)さらに進んだ安全公害対策を実施する、などの開発目標を掲げた。
スタイリングは「優雅でダイナミックな彫刻美」をテーマに、3つのウエッジを中心に構成したサイドビューや個性的なフロントおよびリアボディのデザインを採用する。同時に2ドアハードトップと4ドアセダンの違いをより鮮明に打ち出すため、ハードトップには立体的なグリルやコンビネーションランプなどを、セダンには端正なデザインのフロントマスクや横長コンビネーションランプといった専用パーツを組み込んだ。ボディサイズも大型化し、全長はハードトップで170mm、セダンで195mm延長。さらに全幅は65〜75mm、全高は10〜25mm、ホイールベースは50mmほど拡大した。
インテリアは、安全性と居住性を徹底的に追求した上で、いっそう豪華で格調高い雰囲気に仕上げる。インパネは全面ソフトパッドで覆うとともに、外装と同イメージの彫刻美で各部をアレンジ。メーターには無反射タイプを組み込み、セダンは角型(GX-6グレードのみ丸型)、ハードトップはスポーティな丸型を採用した。シートについてはセパレートタイプの前席にセミバケット式を装着。後席にはヘッドレストが一体となったハイバックシートを設定した。また、換気装置にはフレッシュエア機構とヒーターファンを組み合わせた強制ベンチレーションシステムを、プロペラシャフトには3ジョイント式(セダン全車およびハードトップ5速MT車)を採用し、室内の快適性と静粛性の向上を図る。
搭載エンジンは、ツインキャブレターを組み合わせたL20型1998cc直6OHC(レギュラーガソリン仕様125ps/17.0kg・m、ハイオクガソリン仕様130ps/17.5kg・m)を筆頭に、シングルキャブレターのL20型1998cc直6OHC(115ps/16.5kg・m)、ツインキャブレターのG20型1990cc直4OHC(レギュラーガソリン仕様120ps/17.0kg・m、ハイオクガソリン仕様125ps/17.5kg・m)、シングルキャブレターのG20型1990cc直4OHC(110ps/16.5kg・m)、G18型1815cc直4OHC(105ps/15.3kg・m)という計5機種を設定する。また、全機種ともにクランクケース・ストレージ方式のエバポレーション防止機構を新たに組み込んだ。サスペンションに関しては、ハードトップが前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの四輪独立懸架を、セダンが前マクファーソンストラット/後半楕円リーフを採用する。ブレーキは全車にタンデム・マスターシリンダーおよびマスターバック、ブレーキ油面警告灯を装備し、スポーティグレードには急制動時の後輪ロックを防止するN-Pバルブも取り付けた。
2代目となるローレルは、C130の型式を付けて1972年4月にデビューする。キャッチフレーズは「ゆっくり走ろう」。車種展開は、2ドアハードトップがL20ツイン型エンジンを搭載するSGXを筆頭に、L20型を積むGL6とカスタム6、G20ツイン型を積むGX、G20型を積むカスタム、G18型を積むカスタムとDXという計7グレードを、4ドアセダンがL20ツイン型エンジンを積むGX-6、L20型を積むSGLとカスタム6、G20型を積むGLとカスタム、G18型を積むカスタムとDXという計7グレードを用意。さらに、ミッションなどの組み合わせによる基本車種は、計42タイプのワイドバリエーションを誇った。
全面改良されたローレルはハイオーナーカーという性格上、メーカー側としてはユーザー層をある程度高めの年齢に設定していた。しかし、当時の日産スタッフによると「走り好きの若者層の注目度が予想以上に高く、ドレスUP栄えするハードトップ仕様はケンメリのスカイラインに匹敵するほどの人気を博した」という。なかでもL20ツイン型エンジンに5速MT、アルミフィニッシャー付き一体成形ドアトリム、3本スポーク・ウッドステアリング、パワーウィンドウなどを装備する最上級仕様の“エスジーエックス=SGX”グレードは、当時の走り屋の憧れのマトとなったそうだ。
好評を持って市場に受け入れられたC130型系の2代目ローレル。その人気をさらに高めようと、開発陣は排出ガス対策に追われながらも懸命に車種の強化やメカニズムの改良を実施していく。
1973年10月には内外装や装備類などのマイナーチェンジを実施。同時にL26型2565cc直6OHCエンジンを搭載する3ナンバー車、2600SGXを追加した。1975年9月になると、L26型から昭和50年排出ガス規制に対応したL28型2753cc直6OHCエンジンへと換装。翌月には、燃料供給装置にEGIを組み込んだL20E型エンジン搭載車を設定したほか、旧プリンス自動車直系のG18型エンジンがL18型1770cc直4OHCに換装され、さらにG20型エンジンは廃止となった。
段階的に実施された厳しい排出ガス規制に対応しながら、その魅力度を維持し続けていった2代目ローレル。見栄えのいい大柄なボディに質感の高い内装、そして高性能な6気筒エンジンをイメージリーダーに据えた車種展開は、1977年1月にフルモデルチェンジを実施するまで、当時のハイオーナーカーのユーザー層を大いに魅了し続けた。
C130型系の成功によって高級小型車造りに自信を深めた日産の開発陣は、後に続くローレルでも2代目と同様のコンセプトを採用し、ハイオーナーカーとしての地位を高めていく。ローレルというクルマのベースとなる車両コンセプトとポジショニングを確立した記念碑−−。それがC130型系ローレルの真の価値だった。